米ファーストソーラー、チリで商用アンシラリーサービスを提供
米国の大手太陽光パネルメーカーであるファーストソーラー(First Solar)は8月20日、同社がチリで建設したメガソーラー(大規模太陽光発電所)が、世界で初めて商用アンシラリーサービスを提供する許認可を得たと発表した。
ファーストソーラーが今回発表したメガソーラー「Luz del Norte」は、同社がチリ北部のアタカマ州コピアポ(Copiapo)で2016年に竣工し運用している。同メガソーラーの設備容量は141MWで、チリの平均的な家庭なら5万世帯の消費する電力に相当する。
Luz del Norteは、現地の独立系統運用機関(ISO)であるCoordinador Electrico Nacionalが既に電力網の周波数制御に活用しており、クリーンな再生可能エネルギーを供給するとともに、電力網の信頼性や安定性の確保に役立てているという。
水力発電や火力発電が一般的な系統安定化を太陽光で実現
同メガソーラーの稼働に先立ち、Coordinador Electrico NacionalはLaborelec(仏Engie系の電力会社)、ファーストソーラーと念入りな監査を実施し、発電所としての実力を評価した。
アンシラリーサービスとは、電力網を通じて供給される電力の品質を維持する業務であり、電力の需給の管理や調整、電圧や周波数の制御といった一連の操作を含むものである。
これまでアンシラリーサービスは、時々刻々と変化する電力需要に即応するため、発電を柔軟に制御しやすい火力発電や水力発電で行うことが一般的だった。
チリのエネルギー省で森林・規制分析・環境・気候変動部門の責任者を務めるカルロス・バリア氏は、「今回の成果には満足している。これにより電力システムの安全かつ高信頼性の運用を維持するために必要なアンシラリーサービスや技術を拡充することができた」と述べている。
チリでは電力系統に接続する再生可能エネルギー電源を増加させており、2040年までに石炭火力発電所を段階的に廃止、2050年までにカーボンニュートラル(正味の温室効果ガス排出量をゼロにすること)を達成するという目標を策定している。
メガソーラーでの系統安定化、2016年に米国で証明済み
ファーストソーラーによると、メガソーラーによる系統制御の実力は、2016年に米国のカリフォルニア州でカリフォルニア独立系統運用機関(CAISO)が米エネルギー省傘下の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)および同社と実施した実証プロジェクトによって証明されているという。
同実証プロジェクトでは、同社のメガソーラー(設備容量:300MW)自動発電制御(AGC)で周波数制御や電圧制御などの試験を行い(図1、図2)、系統運用事業者が通常使用する高速なガスタービン技術よりも太陽光発電所が優れた特性を示したとしている。
また、メガソーラーによるアンシラリーサービスは、1年あたり30t近くの温室効果ガス排出量を抑制するポテンシャルもあり、「ミッション・イノベーション」プログラムで採択されたソリューションの一つとなっていた。
同プログラムはクリーンエネルギーのイノベーションを加速するために世界の主要24カ国および欧州連合(EU)が取り組むグローバルなイニシアチブであり、日本も参加している。
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