「ウィズコロナ」時代の太陽光発電:O&MのBCPを中心に考える

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ウィズコロナ、3密、ソーシャルディスタンス、ニューノーマル、GoToトラベル、コロナ禍、新型コロナ倒産、…

今年の春先に中国の武漢を起点として世界中に拡大した新型コロナウィルス感染症は、台湾など一部の国が抑え込みに成功している一方、日本では政府が実効的な対策をしっかりと遂行していないこともあり、いまだに収束への道筋が見えない。

そこで本稿では、コロナ禍の先行きが不透明な現在の日本で産業用太陽光発電事業を営む上で、注意すべきことや留意事項、運用・維持管理(O&M)を支障なく続けていくための方針等を再認識・確認すると共に、自身へのチェックリストないし備忘録として残しておきたい。

なお、本稿を認めるにあたっては、京都大学の安田陽特任教授が「SOLAR EXPO ONLINE」にて発表したオンライン講演「コロナウィルスの再エネ事業への影響~リスクマネジメントの観点から~」を閲覧し、参考とさせて頂いたことを明記しておく。

人の移動や物流で新型コロナ由来のボトルネックにどう対応するか

新型コロナによる再エネ産業への影響の一点目は、人の移動や物流で発生するボトルネックである。

現在、太陽光発電所や風力発電所を正に建設中の事業者や企業の方は、現実問題として資材や重機の調達、人材の確保などで影響を受けている方もいらっしゃるかもしれない。

筆者の場合も実際に、中国から輸入する架台の納品が新型コロナの影響で約1カ月遅れてしまい、結果的にその1カ月分の逸失利益が発生してしまった。

金額にして十数万円は、FIT期間が20年ということで長い目で見れば大したことがないとも言えるかもしれないが、当座の投資費用回収という点では痛かったことも事実だ。

代替品の調達や代替サプライチェーンの確保、資金計画の見直しなど、既に可能な対策を取っている向きも多いとは思うが、今後建設する方はこの辺でしっかり注意し十分な対策を講じておかれることをお薦めしたい。

また、新型コロナは発電所の建設だけでなく、当然ながらO&Mにも課題を突き付けてくる。

安田教授は、

万一、本社や現場で感染者が出た場合でもO&M体制が維持継続できるリスク管理が必要。新型コロナ感染拡大の中でも、いかにO&Mの質を下げないかが課題

と指摘されていた。

これは、企業で複数の関係者がチームや部署の中で発電所のO&M作業を担当する場合の体制や管理ではもちろん、現在、事実上ほぼ一人でO&Mを担っている筆者のような個人事業者にとっては、極めて重要なことだ。

もし筆者が新型コロナに感染してしまったら、どうなるか。

あまり考えたくはないことだが、その最悪の事態を想定し、O&Mが破綻しないよう、大きな企業と同様に何らかの事業継続計画(BCP)を考えて事前に手を打っていくしかない。

家族や身内、SNS経由のリソースも活用し、O&MのBCPを考える

筆者の場合であれば、まず家内をO&Mに巻き込むことも考えておかなければならない。

幸い、春~秋の期間に定期的な草刈りが必要となる発電所は、7基中でほぼ3箇所だけ、残り4箇所には防草シートが敷設してある(6号基のように追加の作業が発生した例もあったが…)。もちろん、残り3基も防草シートかそれに準ずる半永久的な雑草対策を講じていくつもりだ。

遠隔監視もまだ万全ではないのだが、年内をめどに全7基の発電状況をリアルタイムで監視、確認できる体制を構築しておきたい。

ちなみに、新型コロナがあろうと無かろうと、筆者は何かあった時のために、発電所の概要や各基の特徴などをまとめた「O&Mマニュアル」を作成して家内と共有しようと元々考えていた。

今回のコロナ禍によって、その必要性が高まったことは確かだが、それを粛々と遂行しなければならないことは何も変わっていないのである。

もう一点、家内だけではリソース的にカバー仕切れない可能性もあるので、そこは例えば先にご紹介させて頂いた「太陽光事業者をつなぐSNS」によるネットワークの活用を検討している。

これなら、日帰りでも比較的簡単に行ける茨城の2ヵ所だけでなく、首都圏からは遠距離の広島の3基と岡山の2基の巡回や作業もこなすことが可能となりそうだ。

もちろん、ネット上で繋がっているだけでは、互いに信頼できるかといった問題は残る。

しかし、3密を回避しつつ事前にリアルで会う機会を作る、あるいはオンラインで情報交換や発電所の場所情報の共有、作業を依頼する場合の報酬や条件の確認・決定などを行っておけば、いざという時に困らずに済むだろう。

各発電所に対して、最低でも1人、可能であれば2人か3人位とこういった取り決めをしておくことが出来れば、O&Mで困ることはないのではないか。

これらすべてが、コロナ禍を乗り切り、FIT期間中、場合によってはそれ以降も見据えて再生可能エネルギー事業を継続するために重要なことだと考えている。

展望:O&Mにデジタルツインも統合、イノベーションに繋げたい

さて、ほとんど妄想というか、希望的観測に過ぎないかもしれないということも承知だが、上述の防草シートや遠隔監視の体制までをほぼ完全に構築できた、さらにその後の展望なども「有言実行」という意味で以下に記しておくことにする。

安田先生のオンライン講演では、まとめとして仰っていた、

コロナ禍というリスクに対して、新しい行動をとることによってイノベーションを起こすという姿勢が大事

ということである。

技術的にもいろいろと浅学非才な筆者としては、他の方々の知見やスキルもお借りしなければならないと思うが、太陽光O&Mのデジタルツイン的な展開にも挑戦してみたい。

具体的には、まずIoT(モノのインターネット)。

遠隔監視システムを導入すれば、IoTはある程度実現できていると言えるが、その次元をさらに高めたい。最近知ったのだが、オランダで活発化している「The Things Network」(TTN)というオープンなIoTがある。

2020年8月現在、日本には43のTTNコミュニティと103ヵ所のゲートウェイがある。これのゲートウェイを筆者の各発電所にも設置、導入していきたいと考えている。

これの何が良いのか?どんなメリットがあるのか?等、筆者自身でもまだ良く分かっていない部分も多いのだが、わが日本のIoT化に貢献しつつ、コミュニティを拡大することで、事業やイノベーションに繋がるような展開を期待できるのではと考えている。

もう一つがAI技術、特に機械学習(ML)や深層学習(ディープラーニング)の導入だ。

これも、オープンソースのソフトウェアやライブラリ等がネット上で公開されていたりするが、筆者の漠然としたイメージとしては、遠隔監視システムにAI技術を統合することで、発電状況に異常がある発電所の発見を自動化したり、その異常状態の分析や取り得る対策や選択肢の検討といったことの容易化や自動化が可能となったりするのでは、という感じだ。

恐らく、大企業ではこういったことも既に相当実現できているのではないかと思うが、それらを個人事業者や中小・零細企業でも今度は導入可能となっていくのではないかと思う。そういったイノベーションの波に乗り遅れず、使いこなして行きたいものである。

ウィズコロナ時代の太陽光発電:まとめ

  1. BCPを策定
      代替リソース

    • 家族・身内
    • SNS経由リソース(Tier-1, Tier-2, Tier-3…)
  2. O&Mマニュアル作成
  3. 将来への展望
    1. The Things Network
    2. AI統合化O&M

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