単管パイプによる太陽光発電所【書評】

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太陽光発電を単管パイプで自作するなら必読か


最近、「単管パイプによる太陽光発電所」を購入しサラッと一通り読んだので、読後感や書評を記しておくことにする。

本ブログ読者の”農民”さんから何日か前にコメントを頂いたが、筆者もその後にアマゾンで購入し一読した訳である。

B5判、120ページあまりの本で写真や図が多く分かり易く、すぐに読めてしまう(なので2000円はちょっと高い気もしないでもない)が、この本は単管パイプで太陽光発電の架台を作ろうと考えている方、太陽光発電で少しでもDIY的なことを行おうと思っている方にはバイブル的な参考書となりそうで、買って損は無い。

もちろん、土木建築を生業としている方やDIYで既に単管パイプの使い方を知っている方にはあまり得る所が無いかもしれないが、筆者のようにこの辺の知識や経験が無い方には入門書として最適だ。

著者の大友哲氏は、山梨県在住で「山梨自然エネルギー発電」というご自身の会社も経営されており、この分野ではプロと呼べる方とお見受けした。

以前、筆者は山梨県のNEDO実証サイトと浅川太陽光発電所を見学に行ったことがあったのだが、その時に浅川さんが太陽光発電所を自身で作ったと聞き「へ~、凄いな。これ全部自分で作り上げたのかー」と素直に驚いていた。

その浅川さんの太陽光発電所も、正に単管パイプを使って組み上げていたのだが、今回この「単管パイプによる太陽光発電所」を手に入れて、どうすれば単管パイプ架台で太陽光発電所を作れるのかのイロハをやっと理解する事が出来た感じである。

とは言え、大友氏の主張に100%賛成できるかと言うと、必ずしもそうではない所もある。

若干の異論はあるが、ソーラー自作派にお奨め

例えば、大友氏は太陽光パネルに関して

ほとんど性能や耐久性に差は無く、価格によって選ばれているのが現状・・・ (p.41)

と書いている。

確かに、価格を最優先にソーラーパネルの選択をする方も多いと思うが、筆者は性能や耐久性に差が無いという主張には賛成できない。

kW単価が5万円の中国製ソーラーパネルと国産やドイツのブランドでkW単価がその倍以上のソーラーパネルでは発電性能や10年後の耐久性や発電量が同じとは考えられないからである。

また、

発送電分離は自然エネルギーの普及を妨げる。自然エネルギーの普及には現在の電力会社による地域独占が必要・・・(p.10)

という主張にも筆者は賛成しかねる。

大友氏がそう主張する根拠には、「なるほど、そういった考え方もあるのか」と目から鱗が落ちる面もあったが、経済合理性を考えるとやはり電力の地域独占には消費者や低圧連系の太陽光発電を営む零細事業者から見て弊害の方が多いように感じるからだ。

(時期的な失敗ももちろんあったが、筆者の発電所でソーラーパネルが設置されたまま未だに系統連係の予定すら教えてもらえないのも、結果的に地域独占の弊害の結果だと考えている。)【追記 2015/06/22:幸い、この記事を書いてほどなく中国電力より連系工事の連絡があり、2014年4月に無事系統連系が完了、現在売電を行っている。】

また、我々のような中小や個人の発電事業者が電力会社の株主になり、経営に影響力を行使するという考えも現実的ではないと思う。資金力にモノを言わせた生保や大手銀行、外資系ファンドなど機関投資化が相当な電力株を持っていて、我々が束になって株を買っても叶わないのが残念ながら現状だろう。

と、若干の反対意見は述べたものの、上述のように大友氏がこの本で公開してくれた単管パイプによる太陽光発電所設置のノウハウは、単管パイプ以外の場合の自作も含めて色々と役に立ちそうで応用が効くものも多いことに疑いは無い。

今後、32円/kWh(税込み34.56円/kWh)や27円/kWh(同29.16円/kWh)になっても利益を出せるようにするには、何らかの方法で施工費を削減しなければならず、その意味で単管パイプによる太陽光発電所の設置は筆者としても有力な手段と見ているので、その方向性を検討している方には一読を強くお勧めしたい。

誰でも作れる 単管パイプによる太陽光発電所

コメント

  1. 蛇野 より:

    この人は時々新聞などで出る歯医者さんです。
    農地に勝手に単管でソーラー設置することをしています。
    お家法違反なので農業委員会とトラブルになっています。
    ソーラーやるなら法律守らないといけないと思いますがコンプライアンスをどう考えているのでしょうか?
    ソーラーのコンサルタントもしていますが、以前1KW=1万円だといわれました。

  2. bigfield より:

    蛇野さま、

    コメントありがとうございます。
    農業委員会との闘い?については、確かにこの本でも書かれていました。 

    法を守る必要は確かにありますが、「悪法も法なり」とも言います。

    私がこの本を読んだ限りでは、農地の法面や水路の上とか、作物を植えない部分を活用してのパネル設置が中心であり、農業は継続されているように認識しました。

    ですので、このようなやり方であれば、単に農地法が云々と文句を付けるほどのことでは無い様に感じました。 

    もちろん、実際に現場を見てみない限り、無責任なことをいうつもりはありませんが。

    kW当たり1万円というのは、どういうパネルやシステムなのか判断できませんが、これも実際にモノを見てみたいですね。

  3. 蛇野 より:

    農地法に関しての認識がコンプライアンス面で余りないと思います。
    法面の場合は、一時転用で出来ますが、更新は不可という扱いです。従って、3年で撤去をしないといけません。
    耕作地のソーラーシェアリングは更新可能なのでそこが違います。
    大友氏は設置業も行っております。設置したものが違法で撤去ということになった場合、どう責任を取るのでしょうか?
    こういう本が出てきて、俺もと思いsッ治した結果が斯うなった場合でも自己責任でしょうか?
    農地での発電はハードルが高いのでなかなか進まないのが現状です。一般の人からすれば大したことではないと思いますが、実際にはややこしい問題です。
    農業をやっていても、発電が出来る場合とできない場合があります。大友氏やその周辺の人は地元農業委員会から指導を受けても聞かないので農業委員会では困っているとのことです。決して認めているというわけではないとのことです。

  4. 大西信二 より:

    太陽光パネルに関して「ほとんど性能や耐久性に差は無く、価格によって選ばれているのが現状」と言う正しいのでは無いでしょうか。
    保障期間なども日本のメーカーより外国ノメーカーの方が長い様に思います。

    GTMリサーチと言う所が出した

    「2015年までに生き残る上位9つの太陽光モジュール製造メーカー」に日本のメーカーは入っていません。
    日本のメーカーが来年までに潰れるとは思いませんが。

    •Canadian Solar, a Guelph, Ontario-based manufacturer of PV cells and modules, with the majority of its operations headquartered in China;
    •First Solar, the leading (CdTe) thin film PV manufacturer and the first worldwide to reduce its manufacturing cost to $1 per watt, with headquarters in Tempe, Arizona;
    •Hanwha Group, a manufacturer of PV cells and panels based in Qidong, China (and as of August, the new owner of Q.Cells);
    •JA Solar, a producer of monocrystalline solar cells with headquarters in Shanghai;
    •Jinko Solar, of Haining, China, a manufacturer of solar PV cells and wafers;
    •SunPower, with headquarters in San Jose, California, a producer of manufactures PV roof tiles and solar panels based on a silicon all-back-contact solar cell invented at Stanford University;
    •Talesun, a premium quality solar PV manufacturer with production facilities in China and headquarters in San Francisco;
    •Trina Solar, based in Changzhou, China, and a manufacturer of monocrystalline and multicrystalline PV modules; and
    •Yingli Solar, a monocrystalline and multicrystalline PV module producer with headquarters in Baoding, China.

    GTMリサーチ

    http://www.pv-magazine.com/news/details/beitrag/dead-manufacturers-walking–study-predicts-solar-firms-survival_100008863/#axzz29RkVDXIK

  5. 蛇野 より:

    法面や畦には一時転用での設置が認められています。
    ただし、ソーラーシェアリングのような更新が認められておりません。従って、3年で撤去しないといけません。
    浅川氏のように撤去費用がないなどとのらりくらりで撤去に応じない人もいるそうで、山梨県北杜市の農業委員会のM氏が困り果てています。

  6. bigfield より:

    大西さま、

    コメントありがとうございます。 

    確かに、設置~数年程度のスパンで考えると、メーカーごとの差というのはあまり無いように思います。

    ただ、10年、20年という長期で考えると、やはりソーラーパネルの耐久性や信頼性はある程度価格に比例しているのではないかと思います。

    GTMリサーチの予測もソーラーパネル製造メーカーの事業の成否が関心事であり、単にパネルの物理的な耐久性、信頼性だけを議論している訳では無いでしょう。

    つまり、耐久性、信頼性に最も優れるパネルのメーカーが事業で生き残るとは必ずしも言えないということで、そういう可能性は私ももちろんあると思います。

  7. bigfield より:

    蛇野さま、

    確かに、法律を守ることは大切だと思います。

    一方で、既に私の個人的な意見として述べましたように、すべての法律や制度が合理的か、時代に遭っているかというと、現実問題として必ずしもそうでは無いと思います。

    その意味では、私は大友氏や浅川氏を一方的に非難する気にはなれません。

    私自身、ソーラーシェアリングを手掛けてみたいと思いつつ、農地法の雁字搦めの規制は時代遅れで合理的ではないように感じています。

    もちろん、私自身が率先して法を犯す勇気は無いのですが、各自が自己責任で行うことに対しては、他の人が迷惑を蒙るのではない限り、それほど非難するほどのことでもないように思います。

    山梨県北杜市の農業委員会のM氏がどうしてそのように困り果てているのか私には分かりませんが、違法でそれほど大きな問題なのであれば、警察なり農林水産省なりが法を犯した人を処分することになるのではないでしょうか?

  8. 姉崎 より:

    BFさんこんにちは。
    遅くなりましたが、私も読みました。

    豊富な写真で基礎知識がさくっと得られるので、
    自作するにしても分譲業者とやりあっていくにしても必読の教科書だと思います。

    にわか業者や理論だけの人ではなく、
    日本の第一人者である大友氏が著者というところも、
    バイブルと呼んでも過言ではない理由の一つだと思います。

    悔やまれるのはこの本が出た事が買取り価格32円になってからだったという事です。
    もしFITが始まった頃にこの本が出ていれば、
    自作発電所で人生変わった人は多かったんではないでしょうか。

  9. bigfield より:

    姉崎さま、こんにちは。

    コメントありがとうございます。

    ご指摘通り、32円/kWhになってからというのは、タイミングとしては遅かったですね。

    ただ、FITが始まるまで、本当に日本の産業用太陽光発電が成長するのか、不確実な面もありましたので、商業出版の世界でも確実さを取るとなると、タイミング的には仕方が無かったのかと思います。

    あとは、32円/kWhで単管パイプの太陽光発電を行って成功するケースが沢山出るかどうか・・・

    人によっては、まだ十分に収益を出せるという方もいるのではとも感じます。

    私もまだまだ頑張らないと…