テスラ社がEVのビットコイン決済を見送ったワケ
ビットコインなどの仮想通貨やその基盤技術であるブロックチェーンで、温室効果ガス排出量の削減を求める気運が高まっている。
最近、もっとも耳目を集めたと思われるのが、米テスラ社(とSpaceX社)のイーロン・マスクCEOによる次の発表である:
Energy usage trend over past few months is insane https://t.co/E6o9s87trw pic.twitter.com/bmv9wotwKe
— Elon Musk (@elonmusk) May 13, 2021
既に既報の通りだが要約すると、電気自動車(EV)の購入でビットコインによる支払い(決済)を受け付ける意向を米テスラ社が表明していたのを、ビットコインのマイニングが温室効果ガス排出量の増大に加担しており環境負荷が高いため、ビットコインによる決済を当面見合わせることにしたというものだ。
マスクCEOやテスラ社としては、「仮想通貨(暗号通貨)は様々なレベルにおいて良い考えであり将来は有望だが、環境に対する大きなコストを看過できない」としている。
なぜビットコインは環境負荷が高いのか
ちなみに、ビットコインの温室効果ガス排出量が大きい理由は、ビットコインのマイニングにはコンピューターで消費電力の大きな計算が必要とされること、現在ビットコインのマイニングファームの多くが中国に立地し、その電力の大半が温室効果ガス排出量の多い石炭火力発電によって賄われていること、などである。
石炭は天然ガスや石油より安価だが、温室効果ガスの排出量が化石燃料では最も多い。
米テスラ社とマスク氏による今回の発表は、ここ数か月右上がりで推移していた仮想通貨に冷や水を浴びせた格好となり、最高値を更新していたビットコインを始めとする主要な仮想通貨や関連トークンの相場が急落、仮想通貨の市場全体に動揺が広がった。
ここぞとばかりにマスクCEOのツイートには、「我々のブロックチェーンなら、環境負荷が低い」、「我々のマイニング機器を是非」といった反応が数多く寄せられており、今後の仮想通貨産業やブロックチェーン技術での低炭素化・脱炭素化の必要性がクローズアップされることとなっている。
このような議論が巻き起こったことで、では最もグリーンな仮想通貨はどれか、といった分析もなされており、当ブログでも先にご紹介していた「Solarcoin」(ソーラーコイン)が最も環境に優しい仮想通貨だとの指摘もあった。
ただ、ソーラーコインが環境に良いからといって、これまでにビットコイン投資を行ってきたテスラ社を始めとした投資家たち(個人投資家と機関投資家の両方)が、直ちにビットコインを捨ててソーラーコインに乗り換える、ということは出来ないだろう。
また、中国のマイニングファームがすぐに再生可能エネルギーでビットコインをマイニングするように切り替えるといった動きも考え難い。
中長期的にはより環境に優しい仮想通貨にシフトするのか
それでも、中長期的に、上述のソーラーコインのように、ビットコインよりも消費電力が低いコンセンサス・アルゴリズムを採用した仮想通貨とブロックチェーンに徐々に移行していく可能性は高いかもしれない。
仮想通貨業界からも、ブロックチェーンの環境負荷が持続可能ではないとして、再生可能エネルギーだけでブロックチェーンの運用や維持に必要な電力を賄うという目標を、期限を定めて達成しようとする企業も出始めた。
米国のマイニング産業でも、風力発電が増加しつつあり比較的クリーンでコストも低い電力が得られるテキサス州などにマイニングファームを設ける企業が出始めている。
筆者としても、現時点では固定価格買取制度で電力会社に売電しているだけなのだが、中長期的には仮想通貨やブロックチェーンに対して、太陽光などのクリーンな電力を供給していければといったことも考えている。
コメント