太陽光発電は火力発電を、電気自動車はガソリン車をそれぞれ駆逐
先の投稿で、日本の閉鎖的で時代遅れな電力業界と対比して自由化が進み消費者がどこの会社から電気を買うかを選ぶことが出来る米国の状況について触れた。
その米国には、グリッドパリティの行く末を大胆に予想する人もいる。
トニー・セバ(Tony Seba、英語だと多分、セバというよりシーバという読みに近いと思うが)氏はそんな予想をし、太陽光エネルギーの明るい未来ビジョンを語る論客の一人だ。
彼の事はネットで色々と探していて、つい最近知ったのだが、太陽光発電のそんな未来について彼が著した本 “Solar Trillions” は、ネット上で日本語版がなんと無料で公開されている:
ネット上で電子ファイルを読むのが好きでない方は、書店で買うなり、図書館にあれば借りるなりしても良いが、いずれにしてもこの本は太陽光発電ファンであれば是非読んでおきたいところだ。
筆者もまだ全部は読んでいないのだが、要するに「グリッドパリティが実現すると、既存の電力事業者、特に高価な化石燃料を燃やして電気を作る発電所はすべて淘汰されてしまう」という。
もう一つ、太陽光発電を含めた安価な再生可能エネルギー発電が普及することで、電気自動車(EV)の時代が来ると。
これによって、化石燃料と内燃機関ベースの自動車産業も淘汰されるとセバ氏は予測する。
現時点では、やや荒唐無稽な感があるし、大方の人が「このガイジン、何を言ってるんだろう?」と思うかもしれない。
だが、誕生後100年経って変革の時を迎えた電力業界と自動車業界が現在置かれている状況を考えると、あと10年後には彼の言っていることがいずれも実現していないとは必ずしも言えないのではないか。
カメラやレコード、携帯電話で起きたことを見れば…
太陽光発電が従来の電力会社による発電や送電を駆逐し、電気自動車が内燃機関と化石燃料で走る自動車を駆逐する。
現時点では、まだ想像し難いこの二つの変化が仮に起きるとしたら、これまでに起きた変化を考えてみれば、その可能性を判断するうえで役に立つかもしれない。
例えば、カメラや写真で起こったこと、あるいはアナログのレコードで起こったこと、さらに、電話の業界で起こったことを少し考えてみれば、筆者の言うことが多少は分かって頂けるのではないか。
今や、写真用の銀塩フィルムを買う人など、(一部のマニアやプロを除くと)ほとんどいない。
米国で写真フィルム大手として業界で知らない人のいなかったイーストマン・コダック社は破産して過去の存在になってしまった(チャプター11の手続きを終え、現在は商業印刷の大手企業として存在)。
電話、さらに言えば携帯電話の世界でも第2世代のデジタル携帯電話までは世界シェアトップで無敵の強大さを誇っていたフィンランドのノキアがスマートフォンという時代の波に乗り損なった挙句にマイクロソフト社にその携帯電話事業自体を身売りしてしまったりと、今やどんな変化が起きても不思議ではないと思う。
日本の場合、電力業界でそういった変化が起きるためには法規制の緩和や改正が必要だが、電力業界の監督官庁である経済産業省もさすがに時代遅れな地域独占は見直しを検討しているし、早晩、電力自由化や発送電分離は実現させざるを得ないだろう。
総括原価方式などという、一般的なビジネスではあり得ないような非常識なコストの算定方法が廃止されるのも時間の問題だ。
コンピュータの世界では、巨大なメインフレームしか無くそれを使うことがあまり一般的でなかった時代から、今日のインターネット時代ではパソコンやスマートフォン、タブレットなど一人一台かそれ以上のコンピュータを湯水のように使うことが当たり前になった。
それと同じように、電力も巨大な発電所からの電気を他に選択肢も無く一つの会社から買わざるを得ない現在が、携帯電話のように嫌になったら他の電力会社に乗り換えたり、「マイ太陽光発電」を使って電力をすべて自分で賄ったりといった時代が、あと数年か遅くとも10年か15年後には必ず来ると筆者は確信している。
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