西高野ソーラーシェアリング発電所を見学

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つくば市内の「西高野ソーラーシェアリング発電所」を見学

(「つくばサイエンスツアー」からの続き)

大阪から乗った夜行バスで、1/26(日)の午前6時半近くに新宿に到着した。

その足で日暮里と北千住を経由し、「つくばエクスプレス」にて終点のつくば駅へと向かった。

実際、新宿に着くまで、見学ツアーの集合時間に間に合うとは予想していなかったので、つくばまで行くのに間に合う時間に新宿に着いたのは嬉しい誤算だったのである。

つくばには8時過ぎに到着、待ち合わせ場所でスタッフの方に名前を告げバスに乗り込む。

太陽光発電ムラのツアーの時にもドタキャンが一人いたが、今回も時間になっても現れない人が一人いたようで、筆者も含み時間までに集合した人はバスでしばらく待たされた。
(自分も間に合わなくなりそうだったので、あまり偉そうな事は言えないのだが…)

結局8時半を過ぎても姿を現さないようだったので、見切って出発となったようだ。

つくばの駅から、最初の目的地である西高野ソーラーシェアリング発電所まで向かう。
車中では、つくばサイエンスツアーオフィスのスタッフであるTさんがバスガイドよろしく、色々と説明をして下さる。

彼女の話を聞いている限り、相当に場数を踏んで手慣れた感じである。

つくばには国と民間あわせて300以上の研究所があること、つくばが研究都市になったのは、筑波山がある以外には平地が広く、研究のために使う水が霞ヶ浦から直ぐに取れ、しかも東京から50kmあまりと比較的近いことが決め手になったこと、筑波大学は日本で一番広いキャンパスを持っていること、等々、道すがら説明をして下さった。

西高野ソーラーシェアリング発電所そうこうする内に、西高野ソーラーシェアリング発電所に到着。

ここの所長であり、ソーラーカルチャー株式会社代表取締役の松岡顕氏がお出迎え下さり、いよいよ松岡氏が運営中であるソーラーシェアリングのご説明を頂けることとなった。

ワイもソーラーシェアリングをやりたいが…

西高野ソーラーシェアリング発電所と所長・松岡氏以前の記事で、松岡さんのソーラーシェアリングを是非拝見したいと勝手に書いていた所、松岡さんご本人から「是非見に来て下さい」との親切なコメントを頂いていた。

だが、つくばの方面まで行く機会や時間をなかなか取れずにいた。

そんな中、今回つくばサイエンスツアーオフィスの方で彼のソーラーシェアリングも行程に含めた見学ツアーを企画してくれたので「これは行くっきゃない!」と、このツアーに参加することにしたのである。

筆者がソーラーシェアリング(営農型太陽光発電とも呼ぶ)を見学するのは今回が初めてであるが、発案者であるCHO技術研究所の長島彬氏の講演を聞くなどして、その存在については1年程前から知っていた。

当初、率直に言ってそれ程高い関心があった訳ではなかった。

だが、日本の農業の現状や食糧とエネルギーの安全保障などを考えた時、その二つを両立させることが可能となる技術だということで、自分でも手掛けてみたいと思うようになったのである。

ただ、宮仕えの身分でソーラーシェアリングを始めるのは、敷居が高すぎるのだ。

なぜかというと、農林水産省から通達が出され、農地の一部転用によって産業用太陽光発電が可能になったとはいえ、各自治体の農業委員会ごとに方針がマチマチで、ソーラーシェアリングの許可がなかなか出なかったりと、とにかく手続きが面倒で手が掛かるからだ。

野立ての一般的な産業用太陽光発電ですら、施工業者との折衝やら、系統連係協議やら、資金調達やらと何かと手が掛かり、サラリーマンには相当に大変である。

ましてや、農業委員会に分厚い資料を用意して提出やら、根回しやらな~んてことを考えると、とても今の筆者が現実的に取り組める代物ではないのは明らか。

それでも、今回お話を聞いた松岡さんによると、日本には現在でも既に20ヶ所ほどのソーラーシェアリング発電所があるそうだ。先達の皆さんには頭が下がるばかり。

また、このブログの常連の読者の方、または太陽光発電ムラをご存じの方であれば、太陽王子も地元・新潟でソーラーシェアリングの発電所を設置する準備をしていることはご存じだろう。

筆者としては、できれば3基目くらいにソーラーシェアリングによる太陽光発電所を西日本のどこかで立ち上げたいと目論んでいる。

ソーラーパネルはLOOOPの単結晶57.9kW、架台の高さは3.5m

前置きが長くなったが、松岡さんのソーラーシェアリング発電所について記す。

まず、ソーラーパネルはLOOOP社製の単結晶100Wを579枚使用で、合計57.9kW。
(注:LOOOP社ではソーラーシェアリング用のキットを販売しているが、これとは異なるようで、松岡さんの発電所ではパネルのみをLOOOP社から調達したそうだ。)

パワコンは新電元製、契約容量49.9kW。
売電価格は42円/kWhということで、年間の売電収入は約255万円ほどとのこと。

設置面積=約1500㎡、パネル高さ=3.5m。

実際に現地で見たが、ソーラーパネルの高さ3.5mというのは、相当に高い。
これだけの高さがあれば、よほど車高が高くない限りトラクターなどを使った作業も確かに可能なのではないかと思った。(トラクター等の高さって、良く知らないのだが…)

見学の当日に頂いた資料にも、ソーラーシェアリング設計のポイントとして、農業の現場を第一に考えて設計する、とある:

  1. 十分な農作業空間
  2. 適切な遮光率
  3. 均一な日照量
  4. 個別の土地や農業に合わせた設計
  5. 農業に役立てられる

 
それにしても、松岡さんが凄いなと思ったのは、このソーラーシェアリング発電所を彼はほぼ一人で設計、資材調達、施工をこなして作り上げたということだ。

時に他の方にも手伝ってもらったりしたようではあるが、ほぼ一人でほとんどの工程をこなしてしまったというのはやはり凄い。

「ソラカルシステム」でパネルの角度を変更し発電電力量をアップ

ソーラーシェアリングの太陽光パネル

もう一つ、このソーラーシェアリング発電所のユニークな特徴は、手動でソーラーパネルの角度を変えられる仕組みにしてあることだ。

ソラカルシステム(TM)

これは手動ではあるものの簡易的な追尾式または設置角度可変の太陽光発電システムと言ってよいものである。

見学のときに松岡氏が実際にハンドルを手で回してデモンストレーションをして見せてくれたが、松岡氏が「ソラカルシステム」という登録商標を取得したこの仕組み、確かに良く考えられている。

この仕組みを使えば、まず夏場や冬場の太陽光の入射角度に応じてソーラーパネルの角度を自由に変える事で、発電量をより増やすことができる。

ソラカルシステムによるソーラーパネルの角度調整をデモする松岡氏松岡さんの説明では年平均で5%は発電量を増加させることができるそうだ。

手動によってソーラーパネルを可変とすることの直接のメリットは、この発電量の増加だと思うが、これ以外にも例えば雪国のソーラーシェアリング(太陽王子のソーラーシェアリングを思い出すね…)であれば、傾斜角を大きくすることで冬場の降雪時に雪を効率よく落としたり、または雪面の反射光を捕捉して発電量を増やしたり、といったことも可能かもしれない。

逆に、宮崎や高知といった南国の場合、日射量は多いが台風も気になるところだが、この仕組みでソーラーパネルの角度を水平にすれば、風荷重をほぼゼロとすることで台風への対策ができるという。

ソーラーシェアリングでは台風などへの対策をどうするのかという懸念があったのだが、これなら確かに大丈夫かもしれないと思った。

またソーラーパネルを垂直に立てると、地上から高圧洗浄やブラシ洗浄で掃除が可能というのも良いポイントだ。

なお、ソーラーシェアリングということで、太陽光発電と同時に行う営農の方だが、これについては、現時点では試験的な栽培に留まっているようだが、これまでにスイカ、トマト、ナス、大豆などの作物を栽培可能であることを確認済みとのことである。

うーん、筆者もソーラーシェアリングを早くやってみたくなってきた。。。

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