アンゲラ・メルケル独首相が、今週月曜から2日間の来日、安倍首相と会談を行う。今晩から欧州へ発つ筆者とは、すれ違う格好となるのだが、非常に興味深い訪日である。
直接の目的は、6月にドイツ南部で開催されるG7サミットへの協力要請とのことだが、国際政治や経済、環境・エネルギー問題など様々な話題に対して意見を交換する見通しである。
ドイツは経済面では欧州で独り勝ちと言われている。
日本とは対照的に国家財政も良好で、G7の中では債務の対GDP比が最も低い。
環境・エネルギー面でも東電の原発事故後にいち早く脱原発の方針に舵を切り、風力や太陽光など再生可能エネルギーの導入にも非常に積極的。原発政策でモラルハザードを起こしている、どこかの国とは大違いで、羨ましい限りである。
時に、東洋経済オンラインの記事の中に、興味深い指摘があった:
加えて高村氏は、再エネ拡大先進国のドイツにおいて近年、再エネ賦課金(電気料金への上乗せ費用)の上昇が止まる傾向が見られることを指摘した。
実際、ドイツでは15年から再エネ賦課金が初めて減少に転じる見込みだ。<中略>再エネの普及、毎年の買い取り価格引き下げが進むにつれ、賦課金の上昇ペースは鈍化し、初期契約の買い取り期間が終わる10~20年後には賦課金は減少に転じる。再エネの費用は”将来世代のための貯金”との見方もある。
出典:東洋経済オンライン「脱原発依存が焦点、電源構成の論議始まる “新電源”としての省エネも重要に」
ドイツでは、固定価格買取制度(FIT)が2000年に始まった。
電気代の高騰などの問題も指摘され、紆余曲折はあったものの現在まで継続している。2014年7月の太陽光発電の買取価格は、住宅用がキロワットあたり12.88ユーロセント(約16.7円)、非住宅用(産業用)が同8.92ユーロセント(約11.6円)と、日本と比べると相当に低い。(出典:Feed-in tariffs in Germany/Wikipedia)
日本ではFITが開始されて3年間も経たないうちに、当初から懸念されていた制度の「抜け穴」を正に利用する形で電力会社が太陽光の受け入れを制限するという事態に陥ったことは本ブログの読者の方ならご存知の通りだが、ドイツと我が国の状況は雲泥の差と言う所だろうか。
原発をどう扱うか、放射性廃棄物をどう処理するかも、未だに決められない我が国の原発行政と政策に対して、メルケルは苦言を呈するのだろうか。
メルケル首相が環境・エネルギー関連で安倍首相に対してどのような発言や示唆をされるか、注目したい。
<関連記事>
- 「独首相 日本にエネルギー政策転換促す考え」NHKニュース
- 「独メルケル首相:9日から訪日 「なぜ今」の理由」琉球新報
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