九州で太陽光発電はもう無理? 経産省の公開データで検証

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1週間ほど前に書いた記事「九州・熊本で太陽光の土地探し」に対して、vaceba様より以下のようなコメントを頂いていた:

九州でこれから太陽光というのはどうでしょうか。すでに設備認定量が約1700万kWと、九州電力のピーク電力を超えており、九州電力管内で消費できないことは明白です。

これに対して回答のコメントをお返ししていた通り、経済産業省・資源エネルギー庁が公開している統計データ(6/18発表の2014年3月時点)で簡単に検証を行ってみたのでご報告したい。

元のExcelファイルには全都道府県の設備認定容量と稼働分の容量がすべて掲載されているが、ここでは九州電力管内の7県分のデータのみを引用する。

10kW以上の産業用太陽光発電所(10kW未満の住宅用太陽光、および風力など他の発電を除外)の各県別の設備認定容量および稼働分の容量を抽出、稼働分の設備認定容量に対する割合を算出し%で示した(下表)。

  認定容量 [kW] 実稼働容量 [kW] 実稼働比率 [%]
福岡県 2,180,047 372,832 17.1
佐賀県 585,963 119,660 20.4
長崎県 1,414,340 147,688 10.4
熊本県 2,920,318 199,103 6.8
大分県 2,583,719 252,079 9.8
宮崎県 2,847,744 182,755 6.4
鹿児島県 3,988,948 284,758 7.1
合計 16,521,078 1,558,875 9.4
平均 2,360,154 222,696 11.2

ご覧の通り、1700万kWもの設備認定容量に対して、実際に稼働している太陽光発電所は実はまだ1割にも満たない。最も実稼働比率の高い佐賀県でも設備認定容量の20%、経済力が最も強い福岡県で17%である。

熊本や宮崎にいたっては、設備認定容量のわずか7%未満という低調さで、これでは確かに経産省が悪質な業者の設備認定を取り消すのも頷ける。

したがって、確かに設備認定された太陽光発電がすべて稼働していたら確かにもう九州では太陽光の新設はしばらく無理かと思うが、小規模な50kW未満であればまだ十分に設置可能な場所があるはずだと筆者は考えている。

ただ、実稼働の割合が低いとはいえ、現時点の系統網に対して負担の大きい「不安定」な太陽光発電がこの過去2年間で大幅に増加したことは確かで、九州電力は「発電機連系制約マップ」というのを発表していた(太陽王子が彼のブログで既報)。

九州電力の連係制約

この地図を見ると、鹿児島、宮崎、熊本、大分などでは確かに系統連系の可能量がゼロもしくは少なくなっている地域というのがかなり増加している。

しかも、系統連系が制約を受ける場合、変圧器や送電線の増強工事費用は再エネ事業者負担でよろしく、と忘れずに釘を刺す念の入れよう。

玄海や川内の原発を再稼働したいので、まだ増殖中の太陽光発電は九電(再エネを嫌ってるのは九電だけじゃなく他の大手電力全部だが)にとってよほど邪魔者なんだろうね…と勘繰りたくなる訳である。

コメント

  1. vaceba より:

    エントリーありがとうございます。九州の太陽光は25年度だけで160万kW増えており、26年度も月20万kWペースで増えています。この調子だと26年度末には400万kW、27年度末で650万kWに達し、風力も含め九州電力が上限と思ってる700万kWを超えてしまいます。おそらくその頃からは全量は買い取ってもらえない事態になるかと予想します。九州においては20年の全量買取りを前提とすることは大変危険だと思います。

  2. bigfield より:

    vaceba殿、

    追加のコメントありがとうございます。

    ご指摘の通り、現時点の発電量だけでなく、Δ、つまり増加のペースも考慮することは確かに必要ですね。

    薄々感じつつ、この記事では言及しておりませんでした。

    ただ、結語の部分については、私の考えは異なります。

    少なくとも、2年前に成立した固定価格買取制度は、制度なり法律が政権の妥当な手続きに則って変更なり修正されない限り、20年の買取期間には何ら例外や変更が許されるべきではありません。

    そんな事がまかり通れば、何のためのFIT制度なのかということになります。

    我々が太陽王子の提唱に賛同し、「太陽光発電ムラ」として団結するのも、そういった制度面での担保や電力会社の横暴と闘うためという側面があります。

    さらに太陽光なり再エネの合計容量や比率を検証すべきですが、私の感覚ではドイツなど欧州の事例を見てみても、原発に依存したい日本の電力会社が再エネ導入に消極的なだけで、技術的には再エネのための容量増加はもっと可能だと見ています。

    再エネ側が譲歩させられるのではなく、電事連に代表される電力利権を譲歩させることを今こそ考えてみませんか?