この高崎の太陽光発電所は、49kW+39kWで合計88kWとなるが、一箇所で88kWではなく、50kW未満の二箇所として分割し、それぞれ低圧で系統連系を行う。
これは中小規模の発電所では定跡と言っても良い手法である。
50kWを超えると高圧での系統連系となり、キュービクルという高価な受変電設備が必要となるからだ。下の写真で右側(奥)と左側(手前)のパネルの間が空いているのは、そこが49kWと39kWの区切りとなっているからである。
話が少し逸れるが、この50kWというの閾値は日本の電力産業に関係する話では実は良く出てくるのである。
筆者に馴染みの深い電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV/PHV)関連の分野でも、50kWの壁が存在する。
それはEV関係者なら恐らく知っていると思うが、「CHAdeMO(チャデモ)」規格に準拠した急速充電器の出力である。
EVが市場に出始めた3~4年程前に、東京電力や三菱自動車、日産自動車などが共同で開発、標準化したのがチャデモ規格の急速充電器で、その出力が50kWなのである。
とすれば、50kWを超えると高圧契約が必要になるため、設置すると基本料金が月に数万円と跳ね上がり、しかも上述のようにキュービクルという受変電設備の設置(本体と工事費で数百万円!)が必要になる。
当初、急速充電器の設置がなかなか進まなかった理由は、この充電器本体の価格が高かった(250~300万円)こともさることながら、高圧契約による付随的な初期費用と運用費用の大幅な増加が足枷となったからだ。
チャデモ規格の急速充電器のこれらの問題に気が付いた充電器メーカーのいくつかは、対策として出力を下げて高圧契約にせず、より一般的な低圧契約のままでも設置が可能な中容量(20~30kW)の急速充電器を開発して販売した。
その結果、これらの中容量型の機種はある程度設置される動きが出て、場所によってはこの種のチャデモ充電器を見かけるようになった。
EVの動力源であるリチウムイオン電池の特性上、出力が半分になっても充電時間が単純に倍にはならないのが中容量タイプの急速充電器のメリットである。
例えば、50kWの高出力型の急速充電器では30分で80%というケースが多いが、20kWでは同じ80%充電するのに2.5倍の1時間以上かかるかと言えば、恐らくそこまでは掛からないのだ。大雑把には1時間弱くらいだろう。
実際には、EVの電池をカラになるまで運転することは恐らく少なく、たいてい20%とか30%まだ残っている状態から継ぎ足し充電する場合が多いので、充電時間はもっと短くなるのだ。
と、かなり話が逸れた。ともかく、50kWが閾値になる話が日本の電力業界では良く出てくるということである。
(続く)
コメント