巨額の赤字にあえぐシャープ、危機を脱するのはいつか?
シャープの2015年第2四半期(4~6月期)の営業赤字が300億円台になるとの見通しが明らかになった。
「中国のスマホ向け液晶パネルの需要が低迷」したのが直接の原因という。シャープの主力事業は、以下の5分野(カンパニー)である:
- ディスプレイデバイス
- 電子デバイス
- エネルギーソリューション
- コンシューマーエレクトロニクス
- ビジネスソリューション
スマホ向け液晶パネルは、ディスプレイデバイス社の事業と思われるが、液晶パネルやそれを使った液晶テレビの事業は中国や台湾の企業との競争が激しい。
太陽電池や太陽光発電モジュールも赤字が慢性化
エネルギーソリューション社の太陽電池や太陽光発電モジュールも同様である。
シャープや三洋電機(現パナソニック)など日の丸メーカーが世界の太陽光発電パネル市場の上位を独占していた頃と、トリナソーラーやジンコソーラーといった中国メーカーが上位を席巻する現在では市場環境が一変、シャープが太陽光発電関連で黒字化を達成するのは容易ではない。
シャープ関連のニュース記事によると、近年液晶テレビや太陽電池では赤字が続き、その赤字を液晶事業の黒字が補てんすると言う状態だったという。
欧米的な資本の論理から言えば、もはやコアの競争力となり得ない赤字事業は、どこかの時点で見切りを付けて売却するなどの経営判断を行うことになるのだが、日本ではこういった英断がなかなか行われず、傷口が広がることが往々にして良くある。
シャープが太陽光関連事業から撤退するのか、太陽電池事業がどうなるのかについては、まだ不透明な部分が多い。
そうなると、住宅用にしろ産業用にしろ太陽光パネルの購入を検討中の見込み顧客が手を出し辛いことは確かだ。筆者が国産のソーラーパネルを導入するとしても、やはり選択肢からは外れる可能性が高い。
日本の企業社会は柵(シガラミ)が多く、権限の少ないサラリーマン社長・経営者が大ナタをバサバサ振ってという訳には中々行かないのだろうが、シャープの株価の推移を見ても、市場がここ数か月のシャープの経営再建をプラスに評価していないことは明らかだ。
太陽電池・太陽光パネル事業を切り離す方が得策だが…
今後、再建でき市場で競争力を持ち得そうな事業だけを残して他の事業は売却によって身軽になれれば、シャープ株価も上がりそうなものなのだが、現状では難しいのだろうか。
先月初旬にも中高年齢層の社員3500人を対象にシャープはリストラ(人員削減)の計画を発表したばかりだが、それだけではやはり経営再建はまだまだ難しいように思う。
太陽電池・太陽光パネル事業の立場から考えても、シャープという会社が経営状況に不安を抱え続ける限り、筆者のように見込み顧客の多くが敬遠してしまうので厳しいだろう。
仮に、太陽光発電パネルを手掛ける国内メーカー(望ましいオプション…)なり中国メーカーなりに太陽電池・太陽光モジュール事業を売却する方が、客としては安心してシャープのソーラーパネルを購入することが出来るようになるのではないだろうか。
具体的には、例えば「京セラ・シャープ」とか「パナソニック・シャープ」、あるいは「トリナ・シャープ」のような形である。
ドイツのQセルズや中国サンテックも一度は破綻したが、他社に買収される形でブランドが存続し現在に至っている。
もちろん、売却先を現在太陽光発電システムの事業を行っている企業や団体に限定する必要は必ずしもなく、企業ファンドや投資銀行などでももちろん構わない。
(といっても、米国など外資系のハゲタカファンドに叩き売れ!と言っているのではもちろんなく、日本の国益を損なわない対象に対して売却せよということである。)
片山幹雄氏(シャープの元社長)を副会長として迎え入れた、日本電産が買収するといった観測や期待もあるようで、それもありだろう(もちろん日本電産にその気があればだが…)。
住宅用太陽光の市場では、まだまだシャープのブランド力が相当にあるとは思う。
しかし、シャープの経営危機や経営再建といった話を聞けば、「アクオス命!」とか「吉永小百合のファンなんです~♡」(誰がww?)といったごく一部のファン顧客を除いて、やはり二の足を踏む消費者の方が多いはずだ。
しかも、先にも書いたように、今年を境にあまり儲からなくなった産業用から住宅用へと注力分野をシフトする太陽光モジュールメーカーが一気に増加する事を考えると、シャープに残された時間はほとんど無い:
現在、シャープには経営再建の一環として政府系の日本政策投資銀行が出資するジャパンインダストリーソリューションズがみずほ銀行や三菱東京UFJ銀行と共に2250億円の資本支援を行っている。
このため、すぐにシャープが倒産するといった可能性は相当に低いものの、時間や市場は待ってくれないのである。
シャープ・太陽光パネル事業の最新状況(追記:2022年11月)
その後、台湾・鴻海精密工業(Foxconn)がシャープを買収、同社傘下の子会社となった。
鴻海から資金と経営者を受け入れることにより、シャープは赤字から黒字に復活し経営の立て直しに成功した。
太陽光パネル事業も2017年3月期で黒字化し、それ以降シャープが太陽光関連事業から撤退するといった状況ではないようだ。
シャープの太陽電池と太陽光パネルは、堺工場(大阪府堺市)と奈良工場(奈良県大和郡山市)で製造していると見られ、子会社のシャープエネルギーソリューション(SESJ)が製品開発や海外営業などを担っているとみられる。
産業用の固定価格買取制度(FIT)が終了したことから、シャープの太陽光パネル事業は主に住宅用・家庭用向けが主力とみられ、蓄電池やHEMS(家庭用エネルギー管理システム)などと組み合わせた高付加価値型のソリューションで売り上げを増やす方向のようだ。
コメント
シャープは、正直家庭用、屋根用に拘りすぎた部分が多々みうけられます。
屋根についてにはすごくID研修も厳しい(すべての屋根のケースについて、「受講者全員が」「実際に」「施工してみる」という形です)ので、安心安全なんですが、
流行の野建については、薄膜型で対応しようとしたみたいで、その場合は効率で負けて
薄膜型から撤退というはめになりました。
海外メーカーは非常に合理的で、屋根上に付けるような高効率パネルを生産、検査ではじかれた不良品ではないが、出力不足品を集めて公称出力を下げて出荷という形で
同一品の大量生産によるコスト低減を実現してます。
三角パネルやハーフパネルなど見栄えはいいのですが、少量多種生産は現在の価格競争に飲み込まれた感があります。
パナソニックも産業用は、多結晶パネルを用意していたのですが、本年よりALLHITになるようです。
匿名希望さま、
コメントおよび情報、どうもありがとうございます。
シャープの事業戦略、国内の住宅用を重視しすぎたのが誤りだったということなのかもしれませんね。少なくとも、国外への展開をもっと重視していれば、薄膜型に分散したり、または家庭向け屋根用で細かすぎる製品展開をするということは無かったかもしれず、海外への事業でもう少し成果を出せたかもしれません。
実際には、海外から撤退、太陽光事業子会社をまず精算する羽目になり、シャープの太陽光事業はいよいよ縮小均衡に陥った感があります。
他のニュース記事を読むと、シャープはまだ太陽光事業を継続するつもりのようですが、ハゲタカが高利貸しで当面の事業資金を出していたりと、切り売りされるのは時間の問題という気もします。他のメーカーと比べてコストパフォーマンスでも勝てるか微妙ですし。
出来れば、国内のメーカーが買収してくれればまだ御の字ですが、中国や韓国に買収されると、太陽電池で日本がシェアを国際的に回復させることは絶望的になりそうです。
家庭用のソーラーパネルで至れり尽くせりというのは、どこかのニッチメーカーに任せて、国際市場で主要な競合他社と渡り合っていればと大変残念です。
今となっては、せめて京セラやパナソニック、ソーラーフロンティアがシャープの二の轍を踏まないよう、頑張って欲しいです。
わが身の勝手さに、お国企業たたきをするような国に国策もなにも頭にはないのでは、お国企業よりも東電優先お先真っ暗で何もない!こんなお国に住みたくもない。
山宗さま、
お返事が大変遅れ失礼しました。
ご指摘のような状況は、残念ながらあるように思います。
貴殿や私を含め、もし可能であればこの国に三下り半を叩きつけたい向きはそれなりの数いることでしょう。
そういったことを実行に移せないのが、歯痒いばかりです。