時代に逆行する「事業用発電パネル税」、美作市で再度審議入り

発電用パネル税を考えるシンポジウム in 美作市でも示された問題点エネルギー政策
「発電用パネル税を考えるシンポジウム in 美作市」でも示された問題点
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美作市の「事業用発電パネル税」は「三重課税」となる悪税

岡山県の美作市で、いったん廃案となった「事業用発電パネル税」がまたしても市議会で条例案として審議入りしたという。

事業用発電パネル税は、太陽光発電事業者を対象とした法定外目的税であり、パネル1平方メートルあたり50円を5年間課税するとしている。例えば、筆者の3号基であれば、1.6㎡のソーラーパネルが300枚あるので、1.6×300×50=24,000円/年となる。

しかし、この税には大きな問題点が3つある。

まず、事業用発電パネル税は太陽光発電事業者にとって「三重課税」となり得ることだ。
太陽光発電の事業者は、まず発電所の用地を取得している場合に、所管の自治体に固定資産税を毎年支払うことになる。

さらに、太陽光発電システムを設置すると今度は、償却資産税の申告と納税義務が発生する。美作市の事業用発電パネル税が条例として成立した場合、この苛烈な「トリプル課税」が太陽光発電事業者に対して課せられることになる。

さらに、「美作市で課税できるのなら、わが市町村も!」とばかりに全国の自治体が産業用太陽光発電の事業者に課税を始めることだろう。だから、この事業用発電パネル税は、美作市だけの「対岸の火事」ではけっしてなく、日本全国の太陽光発電事業者の問題と捉えて対処する必要がある。

「後出しジャンケン」で収支計画や事業採算に狂いが生じる可能性も

次に、この発電パネル税が成立した際に、当初の事業計画では想定していなかった費用が上乗せされることで、収支計画や採算が狂い、最悪の場合には融資の返済に支障をきたしたり、赤字に陥ったりする事業者が出てくる可能性もある。

この税を条例案として主導している美作市の萩原誠司市長の姿勢を見る限り、彼が税金を「手っ取り早く、取りやすい(取り易そうな)ところから取る」ことを目指しているように筆者には感じられるのだ。

このブログの読者の方々なら、個人や中小企業の太陽光発電事業者は皆それぞれ、色々な苦労や失敗をしながら、日々頑張ったり工夫したりしながら太陽光発電事業を営んでいることをご理解されていると思う。

しかし、美作市でこのパネル税を推進しようとしている人たちは、そういった苦労や経験も恐らくないだろうし、「太陽光発電で楽して儲けてる奴らから、税収を取れるだけ取り立ててやろう」位に考えているのではないか。冗談ではない。

買取価格が40円と大変高かった頃から太陽光発電事業を営む大企業ならともかく、個人や中小企業で、買取価格が20円以下といった場合では、今回のパネル税が成立した場合にかなり深刻な影響が収支計画や採算性に及ぼされる可能性があるだろう。

RE100やSDGsが隆盛する現在、時代の流れに逆行する愚策の極みに

最後に、この発電パネル税は、時代に逆行する極めて筋の悪い税制となる可能性が高い。

国際社会や日本政府が温室効果ガス排出量を抑制し気候変動を回避するために欠かせない再生可能エネルギーの導入拡大に取り組むうえで、その足かせとなるからだ。

グローバルな動向を見ると、再生可能エネルギー100%で事業を経営することを目指す企業の集まりである「RE100」の隆盛が顕著になっている。国際連合の「持続可能な開発目標(SDGs)」でも、再エネの導入や拡大は重要な目標の一つだ。

そういった世界の趨勢を鑑みると、再生可能エネルギーとして代表的な太陽光発電に対して三重もの税を課すというのは、いかに時代錯誤恥ずかしい愚策かと言わざるを得ない。

萩原市長は東京大学を卒業後、米プリンストン大の大学院を修了しているとWikipediaに記述されているが、留学して得たはずの国際感覚があれば、この発電パネル税というものがいかに愚策か分からない訳はないと思うのだが、やはり楽して確実な税収を上げたいとのお考えなのだろうか。

政権与党・自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(会長・柴山昌彦衆議院議員)でも、「再エネ比率30%はスタートライン」、「現実的に原発の再稼働が難しいのであれば、再エネで補っていくしかなく、2030年に再エネで44%を目指す」との中長期的な方針を示している。太陽光パネルに課税などしている場合ではないのだ。

ちなみに、発電パネル税は、昨年11月にも話題となり、その後美作市で萩原市長が辞職した時点で一度廃案となっていたのだが、その後の市長選で同市長が再選されると同時に復活したという、ある意味で「ゾンビ」のような条例・税制案なのであるw。

太陽光発電事業者連盟(ASPEn)が昨年11月に美作市で実施した「発電用パネル税を考えるシンポジウム」には、筆者も参加していた。

ASPEnが美作市で開催したシンポジウムの模様

ASPEnが美作市で開催した「発電用パネル税を考えるシンポジウム」の模様

発電用パネル税を考えるシンポジウム in 美作市でも示された問題点

「発電用パネル税を考えるシンポジウム in 美作市」でも示された問題点

その後、いったん廃案となったのを知った時にはホッとしたのだが、それも束の間、今回のような経緯となっている。

太陽光発電事業者としては、このような安易で取り易い所から取るという魂胆が透けて見える税には絶対に反対であり、同じ考えの事業者の方々と是非一致団結してこの悪税を今一度、廃案・撤回に追い込みたいと考えている。

最後に、筆者が昨年の秋に美作市の公式ホームページを通じて提出した苦情の全文を以下に提示しておく(一部を修正したが、ほぼ原文のまま)。ここまでに記してきたことと重複する箇所も多いが、必要に応じてご参照頂ければ幸いである。

付録:美作市・事業用発電パネル税への苦情(2019年に提出)

太陽光発電事業者から徴収する「事業用発電パネル税」を美作市の条例として策定されるとの計画を新聞報道により知りました。

この法定外目的税の目的は、自然環境の保全や防災対策などとのことですが、そうであれば、なぜ太陽光発電事業者だけに課せられるのでしょうか。非常に不公平な税になると懸念します。

当方は現在美作市内に発電所を保有・運営しておりませんが、隣の備前市ほか県内外の数か所で低圧の太陽光発電所を保有、運用しています。

貴市でもしこのような不公平な課税が認められることになれば、それが悪しき前例となり他の市町村、都道府県にも波及する可能性がある事を考え、反対の意向を表明させて頂くものです。

自然環境の保全や防災対策を目的とするのであれば、太陽光発電事業者に限らず、他の事業者や住民からも公平に負担して頂くのが合理的と考えます。太陽光発電事業者だけを狙い撃ちにするのは、まったく不公平で非合理的であり、容認できません。

太陽光発電事業者は、既に土地の固定資産税、発電施設の償却資産税も負担しています。

これに加えて「後だしジャンケン」のような形で貴市が現在検討中のような事業用発電パネル税も課せられると、二重課税どころか「三重課税」となり、当初の収益計画が大きく狂います。

低圧を1基だけといった個人や中小の発電事業者によっては、融資の返済計画が破たんし、赤字になる事業者も出てくるかもしれません。

そうなりますと、美作市内でメガソーラーを保有・運用するパシフィコエナジー一社だけではなく、多数の中小零細事業者にも大幅な影響が及ぼされるため、貴市に対する損害賠償訴訟や集団訴訟などが提起される可能性もあると思われます。(知人の発電事業者からは、そのような話も聞いております。)

この「事業用発電パネル税」により市内約180カ所の発電所から年間9,400万円の税収を見込むとのことですが、このような不公平な税が導入されれば、貴市で太陽光を始めとした再生可能エネルギー事業を営もうとする企業は今後激減する懸念もあると考えます。

一方、この税の施行を撤回し逆に太陽光発電やその他の再エネ発電設備の設置を奨励する何らかの政策を推進した場合、上述のように固定資産税や償却資産税によってそれ以上の税収が上げられる可能性もあります。

例えば、岡山県内ではバイオマス資源を活用し、産業活性化に繋げている真庭市の例もあります。美作市は太陽光と、例えば、小水力発電や地熱発電(美作三湯など地熱資源が豊富なため)の導入を推進するといった方向性もあるのではないでしょうか。

※ 当方も湯郷温泉には時々訪れ、発電所での作業で疲れた身体を癒し、英気を養わせて頂いております。

安易に太陽光発電事業者から毟り取るのではなく、太陽光をはじめとした再エネ事業を誘致、推進することにより、産業活性化を図ることが、貴市の中長期的な発展や経済活性化のためにはより有効であると考えます。

美作市が「事業用発電パネル税」導入を強行されるようであれば、今後は湯郷温泉を始めとした貴市の観光地で一切の利用を差し控え、他の事業者・企業にも推奨しません。一方、同税を撤回して頂けるのであれば、今後もどしどし利用させて頂き、知り合いの太陽光事業者にも推奨したいと存じます。

どうか、中長期的かつ大局的な視点でご判断を頂きたく、お願い申し上げます。

BFエナジー 代表
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