既にお伝えしていたが電力自由化に関する講演を先の土曜日に国分寺で聴いてきた。
太陽光発電事業者としても売電先という点で関連の深い内容だったので、思うところを記しておきたい。
この講演会、タイトルは「脱原発の明日をめざす~ かしこい電気の選び方」というものだった。主催はNPO法人こだいらソーラー/電力改革プロジェクトで、講師の方は以下の三名:
- 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 常任顧問・辰巳菊子氏
- FoE Japanスタッフ、パワーシフト・キャンペーン事務局・吉田明子氏
- エナジーグリーン副社長、EGパワー社長・竹村英明氏
このイベントの立てつけは、消費アドバイザー(辰巳氏)、新電力(竹村氏)、環境NGO(吉田氏)に聞いてみよう、というもので、それぞれの立場より力点を置く場所や主張が少しずつ異なっていたが、いずれの方も脱原発・再エネに転換という点では共通だった。
なお、辰巳氏は政府の関連委員会などでも有識者として委員を務めており、脱原発派や消費者側の論客としてかなり著名な方である。
電気と何かとのセット販売は本当に安くなるか?
まず辰巳氏の講演は、来年4月以降の電力自由化でどうなるか、何が変わるのかといった辺りでまだ何も知らない方が聞く分には最も適切だったであろうという、電力自由化の初心者向けの内容。
この講演会を聴きに来ていた人の大半は、筆者を含め再エネや省エネ、電力自由化について相当に知識を持っているので、辰巳氏の講演の内容の大半を知っていたのではないかと思う。
それでも消費者視点ではどのようなことが分かり難いのか、どんな訴え方をすべきか、といったことを考えるうえでは個人的に参考になった。
あと、おそらく新規参入組からウジャウジャと出てくると思われる電気と何かのセット販売(抱き合わせ販売?)も分かり辛くなるので注意という視点は、消費者側の意見を代弁する方らしい主張だった。
ん、どんな組み合わせがあるかって?
登録小売電気事業者の顔ぶれから分かっているだけでも、例えば次のようなパターンが出てくるだろうことが巷では想定されている:
- 電気+ガス(東京ガスや大阪ガスなど、都市ガス大手がこれ)
- 電気+LPG(アストモスガスなどLPG大手がこれ)
- 電気+ガソリン(ENEOSなど石油系…うーん、本当にやるか?)
- 電気+携帯電話(ソフトバンクやKDDI/AUなど通信系がこれ)
- 電気+ネット接続(エフビット、KDDIなど?)
電気ともう一つの何かを別々に買うより安くなるという触れ込みだが、本当に安いかは辰巳さんのご指摘通りに良く確かめてからでないと高くつく可能性もある。Tポイントだの、ポンタだののポイントが付くって話も同様。
また、資料中で「電気を熱エネルギーにするには大きな消費電力が必要」というスライドがあったが、この出典元の資源エネルギー庁の資料は、熱を電気から作るのはムダという主張をする際に筆者も活用したいと思った次第。
「パワーシフト・キャンペーン」で再エネ電力会社を応援
この後、こだいらソーラーの都甲氏の挨拶と同NPOの紹介に続いて、環境NGO・FoE Japanの吉田氏の講演。特に、「パワーシフト」キャンペーンについてのご紹介がメインだったが、要するに再エネを売る新電力に切り替えてそれらの企業を応援しようというもの。
FoE Japanも主要なメンバーであるパワーシフト・キャンペーンでは、以下の再エネ中心の登録小売電気事業者9社を推薦している:
- エヌパワー(愛知県清須市)
- エナジーグリーン(東京都新宿区)
- うなかみの大地(千葉県旭市)
- 生活クラブエナジー(東京都新宿区)
- 中之条電力(群馬県吾妻郡)
- みやまスマートエネルギー(福岡県みやま市)
- みんな電力(東京都世田谷区)
- 湘南電力(神奈川県)
- Looop(ループ、東京都文京区)
この中では、太陽光発電キットを手掛けているLooopをご存知の方も本ブログの読者の方には多いはず。
この「パワーシフト・キャンペーン」には、太陽光発電ムラまたはその関係者としても何らかの協力関係なり提携関係なりを持つのが良いのではないかと個人的には思った。
「オフグリッドは、選挙での棄権や白票に等しい」
最後に、筆者として最も期待していた、竹村英明氏の講演。
といっても、この日のメインの講演は一番最初にあった辰巳氏の部分で、竹村氏のお話はパネルディスカッションの一部という立てつけで短かったのだが、それでもやはりわざわざ電車賃と資料代(500円)を払ってでも来た甲斐があったと感じた。
既に彼のブログで電力システム改革の最新状況は把握していた訳だが、改めて記す。
FIT再エネの買い取り義務者変更(小売事業者→送電網運用者)という政策修正後、消費者にとって再エネを選ぶことがほぼ不可能かと思われていたところ、最新のWGでは「売り先の明確なFIT再エネは『小売会社』に引き渡されるという一筋の光明が見えたということである。
もう一つ、残念な点と同時に感心させられた点は、竹村氏の「再エネの電気は高くなるが、それでも選びましょう」という主張とその裏返しの「最近、オフグリッドは、関東でももてはやされているが、選挙で棄権するか白票を投じるのと同じ」という主張である。
この辺、筆者としてどうしたいのか、また迷うことになりそうだが、オフグリッドは確かにある意味で系統網に対する鎖国みたいなものだ。なので、その数が支配的になりえない限り、この国のエネルギー政策に大きなインパクトを与える可能性は低いという竹村氏の主張には説得力があると感じた。
オフグリッドを主張する田中優氏と竹村英明氏の討論みたいな企画がもしあれば、是非とも拝聴してみたいところ。
まとめ:消費者の大半は電気代を1円でも安くしたい…
ただ、だからと言ってクリーンだし脱原発のために必要だからといって割高な電気を消費者がみな買うかと言えば、これはやや疑問である。
これまでに電力自由化が先行している欧米などでも、自由化後に電気代が安いか高いかが多くの消費者にとって最も切実な点であり、再エネや脱原発はその次に来る傾向があるからだ。(その点、ドイツは凄いと思う。)
裕福で東電や関電など既存の電力大手が大嫌い、再エネが良いという方々には、是非パワーシフトの推薦する再エネ新電力のいずれかに切り替えて頂きたいと思うが…
その意味では、既存の電力からは卒業しなさい、でもオフグリッドはダメ、高いけど再エネの新電力にしましょう、という、やや押しつけがましいメッセージにどれだけの人がなびくのか、いささか心もとなく感じる。
恐らく、大多数の消費者で既存電力大手にもサヨナラ~という向きは、新電力で低コストを打ち出したところ、多分東京ガスとか石油系や通信系の新電力(実際には東電と組むソフトバンクなどを含む)に流れるのではないだろうか。
首都圏でいえば、東電が覚悟している顧客流出の10%は上振れする可能性も多分にあるのではと思うが、それらの流れ着く先が東電と組んでいる会社という部分がそれなりに多いという結果に終わるような気もしている。
筆者のウチではどうするか。筆者自身では上振れが少々で済むなら、再エネ新電力に切り替えても良いと思う。だが、家人が黙ってはいなさそうだ。毎月の電気代が下がる限り何も言われないだろうと思うが、電力小売会社の選択を新たな軋轢の原因には出来ればしたくないところである(汗)。 (´・ω・`)
タイトル生成:Thanks to HotEntry Maker. / Thumbnail photo credit: Visualhunt
コメント
ご無沙汰しております。
記事ありがとうございます。
新電力業界は厳しそうですね。しばらくは差別化に苦しむのではないかと思います。
私はオフグリッドには否定的な立場です。せっかく電気が作れる環境になるのであれば、近隣くらいには影響を与えていこうという趣旨ですね。
関係ないのですが、バナーがTEPCOでした。
その後の行動は理解していただければと。
松浦さま、
コメントありがとうございます。お返事が大変遅れ、恐縮です。
新電力、ご指摘の通り、出だしから厳しいと思います。資エネ庁の制度改悪がすべてです。
原発の再稼働が重要だと考える霞が関(+永田町)が、再エネを本当に真剣にやる気があるのか、極めて疑問です。
オフグリッドに対する考え方、それぞれあるかと思います。
私自身、まだ確固たる考えが決まっている訳ではありません。
ただ、これまでの経緯から、FITは活用していますし、当分の間の生活の糧となる訳で、すぐに全面的にオフグリッド生活になる訳ではないので、その意味では貴殿と共に日本のエネルギー産業を少しでも良い方向に向ける方向で共闘できればと思います。
バナーの件、私からはどうこう言えませんので、どうぞご随意にw…