太陽光発電を無理くり抑え込みにかかった反動が、産業用だけでなく住宅用の市場でもいよいよ顕在化してきた。
住宅用ソーラーパネルで市場シェアトップのパナソニックが、二色の浜工場(大阪府貝塚市)の稼働を2月末で休止するというニュースが共同通信や日経など主要メディアで報じられているのである。
二色浜工場は稼働停止で作業員の契約打ち切り、景気にも悪影響
パナソニックは二色浜工場の稼働停止によって、契約社員や派遣社員などの現場の作業員の契約を打ち切るという。
この人数が何人かというのは分からないのだが、地元の経済にマイナスとなることは間違いない。
パナソニックの太陽電池やソーラーパネルに十分な価格競争力があれば、国内で需要が落ち込んだ分を輸出に振り向けてカバーすることも出来たかもしれない。
残念ながら、産業用より高い単価で売れる住宅用ですら、この有り様。
中国勢や米ファーストソーラーらが圧倒的なコスト競争力を持つ国外の産業用太陽光では、やはりほとんど太刀打ちできないようだ。
国内トップのパナソニックがこれでは、国内大手で例外的に海外市場の産業用でも健闘しているソーラーフロンティアを除くと、市場シェアで2番手以下の京セラやシャープも恐らく同様に苦戦していることが容易に想像できる(シャープはそもそも経営危機…)。
電気代が高くなるからと太陽光を悪者にして抑え込むことで派遣切りや雇い止めによって仕事にあぶれる人が出てくるのと、少し電気代が上がったとしても工場の作業者の雇用が維持されるのとでは、前者の方が景気に悪い影響が出るのではないかと個人的には思う。
電力小売り全面自由化によってこの4月から多くの地域で電力会社を選べるようになり、電力大手各社も電気代を渋々引き下げざるをえない状況にあることを考えれば、なおさらだろう。
28年度の買取価格、住宅用は30円台、産業用も25円程度で妥結か
ただ、ここまで影響が大きくなってくると、さすがに政府・経済産業省も固定価格買取制度の調達価格等算定委員会で現在審議を行っている来年度の価格をあまり下落させることは諦める可能性も出て来たかもしれない。
少なくとも、国内のソーラーパネル・メーカーの大半が収益源としている住宅用太陽光発電の買い取り価格は下げてもkWhあたり30円台に留まるのではないだろうか。
産業用の買取価格も、一部で報じられている通りにkWhあたり25円程度で留めて、これ以上太陽光パネルの市場の冷え込みが厳しくなるのを緩和するといった配慮を示すのではないかと期待される。
それでも、このレベルの買取価格では相当にコストダウンしなければ売電で利益が出せない。
なので、40円時代にコストをそれ程絞らなくても美味しい思いをできた企業で、コストを削れない(または削る努力をするつもりのない)所は、もう国内で太陽光発電を増やすことはない。
一方で、大手でもオリックスのように部材や工事費をコストダウンできる自信のあるところは、まだまだ太陽光で稼ぐということのようだ。
住宅用太陽光、リースやマイクロファイナンスが日本でも必要に?
ところで、日頃の行いが分かるかも…等と呑気なことを書いていたUAE出張だが、お陰さまで何とか無事にドバイでホテルにチェックインし、昨日から取材を行っている。(チェックインするまで、どこのホテルにチェックインするか結局分からなかったがw…)
2日目の昨日、バングラデシュにおいてマイクロファイナンスで再生可能エネルギー事業を展開している社会起業家であるグラミン銀行の創設者・ムハマド・ユヌス氏にも取材をすることができ、非常に感銘を受けた。
住宅用ソーラーパネルをあまねく普及させようと思ったら、やはり米ソーラーシティのようにリース形式のビジネスモデルで初期費用の負担をなくすとか、グラミン銀行のようなマイクロファイナンス手法を活用しておカネの無い人でもソーラーパネルを導入できるようにする、といったやり方も必要と感じる。
余剰電力の売電も効果的だが、政策によって簡単に影響を受ける昨今の状況を見ても、固定価格買取制度だけに頼っていては太陽光など再エネの推進や普及に限界があることは明らかだ。
今後、経済格差がさらに拡大するような状況になれば、英国などで問題となっている「エネルギー貧困」、つまり食費か光熱費のどちらかを我慢しなければならない、と言った状況が日本でも発生する懸念が十分にある。
そういった状況になれば、冗談ではなく日本でも上述のようなマイクロファイナンスによって太陽光パネルや太陽熱温水器を困窮した世帯に設置するような社会事業が必要となるのではないだろうか。
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