東電と提携、インドで太陽光発電に参入するソフトバンク・孫社長の胸算用

産業界におけるソフトバンク・グループの動きが激しい。

ここでいう産業とは、通信だけでなく、もちろんエネルギー分野も含んでいる。日本国内での太陽光発電事業には見切りを付け、どうやら太陽光でもっと儲かる新天地を国外に見極めたようだ:

東日本大震災を契機にエネルギー事業に参入

ソフトバンクのエネルギー事業への参入は、忘れもしない2011年3月の東日本大震災とその直後の東京電力福島第一原発の過酷事故がきっかけだった。それ以降、孫正義社長はめまぐるしく動き、再エネ普及促進のために私財を投じて「自然エネルギー財団」を設立した。

田中正造の言葉を引用し熱っぽく脱原発を訴えた孫正義社長(2011年6月)

田中正造の言葉を引用し熱っぽく脱原発や自然エネルギー推進を訴えた孫正義社長(2011年6月)

民主党政権・菅直人首相(当時)にも強く働きかけて、現在我々もその恩恵に与っている再生可能エネルギーの固定価格買取制度(フィードインタリフ:FIT)が成立に漕ぎ着けたと言う経緯がある。

ソフトバンク・孫正義社長(2011年6月)

ソフトバンク・孫正義社長(2011年6月)

菅直人首相(当時)らと共に撮影に応じる孫社長(2011年6月)

菅直人首相(当時)らと共に撮影に応じる孫社長(2011年6月)

その意味では、孫社長が残した功績はメガソーラーを稼働させた大企業だけでなく筆者を含めた中小規模の太陽光発電事業者からしても大変大きかったと思うし、彼が脱原発を主張して東電を批判すると共に原発事故の被災者を救済しようと奔走したことも素晴らしかったと思う。

ただ、FITが2012年夏から施行され、買取価格が40円/kWhに決まるやいなやソフトバンク・グループも日本全国の津々浦々にメガソーラーを建築したものの、その後買取価格が下落するや、太陽光発電への事業投資はピタッと止めてしまった。

エネルギー事業の軸足を太陽光から新電力へ、そして…

その後、商機が太陽光発電から電力自由化に伴う電力小売りにシフトしたと見るや、SBエナジーの電力取引部門であったSBパワーを独立させ、新電力としての事業に注力する。

インターネットや携帯電話事業により、顧客との接点を持つソフトバンクが、電力小売りで通信サービスとのセット販売を行えば、確実に既存の一般電気事業者から市場シェアを切り崩せるだろうが、ここへ来て、よりによってモラルハザードの王様、東京電力とタッグを組む方針であることを発表するに至った:

FITが成立した経緯から孫社長の言動を見ていた筆者は、率直に言ってこれには大変失望している。

「太陽光発電はカネのためなんかじゃない!」と言いつつ、買取価格40円/kWhの時代が終わると太陽光にはもう一切おカネを突っ込まないのは百歩譲って良しとしよう。だが、わずか4年ほど前にあれだけ非難していた、原発事故の責任をロクに取りもしない反社会的な企業に寝返るというのは、一体何なのか。

もちろん、そこは機を見るに敏な孫社長のこと。筆者のような私的な感情など一切排して冷徹なビジネスの論理に徹して意思決定を行った結果としての東電との提携なのかもしれないが、あまりに無節操と言うほかない。

彼には彼なりの必然性や「大人の事情」もあるのかもしれないが、やはり「あなたはおカネ儲けがすべての行動の価値基準なんですね」と思うと、彼と同様に脱原発に賛同して太陽光発電事業者の端くれとなった者としては、少し淋しい気がするのである。

スポンサーリンク