【ソーラーインパルス】トイレや睡眠はどうする? リスクは?

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(「オフグリッド・スマートハウスとSolar Impulseの共通点とは」の続き)

太陽光発電システムやオフグリッドに絡めて「ソーラー・インパルス2(Solar Impulse: Si2)」のことを書いたら、少々硬い記事が続いてしまったかもしれない。

ということで、この記事では少し柔らかめに書いてみようと思う。
週明けでまた今週も頑張って仕事しなきゃ…という方は、是非休憩とか一服する時などにでも気楽に読んでみて頂ければ幸いである。

ソーラーインパルスで飛行中、トイレに行きたくなったら?

まず、この一連の記事の最初の方でもちょっと触れた、何日間も連続する飛行中に「トイレに行きたくなったらどうするか」。

これは、ソーラーインパルス見学会の当日、マリーさんにバッチリ聞いてみた。
彼女の答は、「座席の所に排便用の穴があり、そこから用を足す」とのことだった。

筆者は、宇宙飛行士の宇宙服のように大人用のオムツみたいな仕組みが装備された服でも着るのかと思っていたのだが、それは無いようだ。

その方がコストも掛かりそうだし、操縦士の快適性の点でも劣るのだろう(以前NASAで男女関係のもつれから、女性の宇宙飛行士が、そのような宇宙服を着たまま事件を起こし話題となったことを思い出したw)。

ソーラーインパルスで飛行中、眠たくなったら?

睡眠については、ソーラーインパルスは夜間も飛行を続けながら、操縦者が仮眠を取れるという。同機には自動操縦機能が付いているお陰だ。

当然、その自動操縦機能には、他の飛行機などをレーダーで探知しながら飛ぶ機能が付いているので、万が一ニアミスのような事態となったら、警報が鳴り仮眠中の操縦士を起こすとともに、危険回避もある程度は自動で出来るような仕組みになっているのだろう。

この辺り、1人乗りの冒険専用機とは言え、人命に配慮し万全の対策を取っているはずである。

このプロジェクトに協賛しているパートナー/スポンサーの顔ぶれをみても、ソーラーインパルスのプロジェクトが無事に完遂されると考えて安心して参加しているように思われるのだ。

ソーラーインパルス2・コックピット部のカバー(@名古屋・小牧空港)

ソーラーインパルス2・コックピット部のカバー。Solvay、Schindler、ABBといったスポンサー企業のロゴが見える

ということで、太陽王子のブログ最新記事への反論となるのだが、Si2に乗って飛ぶ危険性、リスクに関してである。まずは、彼の記事の関連する行を以下に引用する:

1人でジャンボジェットの1/10のスピードしか出ない飛行機で飛ぶなんて想像すらできません。
<中略>
もちろん操縦士はベテランのパイロットの資格を持った2人です。命の危険は私達が容易に想像できるくらいにあります。お2人とももう地位も名声も確立された方ですし、資産的にも恵まれた方でしょう。

そんな男たちが次世代へ夢と希望がつまったメッセージを届けるために命をかけて飛んでるんです。

筆者としても、ソーラーインパルスでの飛行が一般的な旅客機に乗るのとはワケが違う冒険であることくらいは分かる。ただ、命を懸けているかと聞かれると「それはちょっと違うのでは」と思う。

ソーラーインパルス

名古屋・小牧飛行場で一般公開中の「ソーラーインパルス2」

ソーラーインパルスのリスクは高いのか?

今回の現地取材と前後して、ソーラー・インパルスのサイトやスタッフのマリーさんから頂いた情報なども色々と調べている訳だが、本プロジェクトには相当な額の費用(総額1億5千万ドル(約178億円)!)を費やしていることもあり、操縦士の生命の安全にも十二分に配慮されていると考えているからだ。

例えば、今回なぜ中国からハワイへの太平洋横断を途中で断念し、立ち寄る予定のなかった日本・名古屋への緊急着陸を決断したか。

その理由は、ソーラーインパルスのプロジェクト公式サイト上に掲載された公式発表によると以下の通りである:

Unfortunately the current weather window to reach Hawaii has closed. The cold front is too dangerous to cross, so we have decided to land in Nagoya Airfield, also known as Komaki Airport, and wait for better weather conditions in order to continue.

(残念ながら現在の天候状況では、ハワイまで到達することはできなくなった。寒冷前線を横切るのは危険すぎるので、我々は名古屋飛行場(小牧空港)に着陸し、プロジェクトを継続するために、天候がより良い状況になるまで待機することを決定した。)

つまり、寒冷前線を突っ切るのが危険すぎるので、太平洋横断をいったん諦めて名古屋に着陸し、天候が太平洋横断に十分に安全なレベルと判断されるまで待つことにしたと言っている。

この時期でも高度5000mとか8000mの上空の寒気団はやはりマイナスの温度範囲だろうし、寒冷前線の中に突っ込むと雷や乱気流、突風などにより1人乗りのプロペラ機では危険性が大幅に高くなるのだろう。

こういった状況判断により、無理をせず日本に着陸した。安全第一だからである。

むろん、装備もパイロットの安全を十分に考えていて、資料を読むとソーラーインパルス2のコックピットは旅客機の「ビジネスクラス並みの快適性」で、万が一の非常時にはパラシュートで脱出でき、海などに着水する場合にはゴムボートも使えるという。

二名のパイロットはベテランなので、それだけの装備があれば万が一の事態にも対応して命の危険だけは回避できるように配慮されているし、彼らもそう信じているはず。命懸けの危険を冒してまではこのような冒険をせず、リスクもすべて計算済みで対策はほぼ万全なのだと思う。

考えようによっては、パラシュートなど無くパイロットに命を託すしかない旅客機と、パラシュートも装備されていてパイロットがすべてのリスクを完全に管理し対応することができるソーラーインパルスでは、後者の方がリスクが低いとも言えるのではないだろうか。

もっとも、太陽王子や筆者のような素人にすれば、十分にリスクの高い冒険になる。

見学会の当日、「ソーラーインパルスに何日も乗るなんて私には絶対にできません!(笑)」と彼は話していた。

高所恐怖症や閉所恐怖症の人だと、確かにまず無理だろう。

一人ぼっちで高度5000メートルを何日もSi2に乗るのは、筆者もさすがに無理と思う。
だが、数時間くらいなら乗ってみたい気がしないでもない、といったところだろうか。

(続く)

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