(「田中優さんの「こだわり」&新築オフグリッド・エコハウスに感服」の続き)
本ブログは太陽光発電を主なテーマとしているので、まず田中優氏邸の太陽光発電システムをご紹介しよう。
メインとサブ、オフグリッド太陽光発電システム2系統を地上に設置
このオフグリッドミニマムハウスの電気を創り出しているのが、野立てというか地面に設置した二つのソーラーパネル・アレイである。一つがメインでもう一つがバックアップまたはサブという位置付けになっているそうだ。
田中邸の前で向かって右側がメインの12枚のソーラーパネル・アレイ、左側がサブの4枚のソーラーパネル・アレイである。
ところで、産業用ではなく住宅用の太陽光発電システムなのに、なぜ地上に設置しているのか不思議に思う方もいらっしゃるかもしれない。田中優さんの答は次のように単純明快である:
屋根上に設置すると、保守や管理などが大変だから。田舎で土地が余っているから、屋根上に置く必要は必ずしも無いでしょ?
メインの太陽光発電は2.88kW、Qセルズの240W多結晶パネルを単管パイプの架台に設置
まず、そのメインのソーラーパネル・アレイは、Qセルズ製の多結晶シリコン太陽光パネル「Q.Pro-G2 240」(出力240W)12枚で構成。240×12=2880=2.88kW≒3kW弱となる。
架台は単管パイプで組んである。パネルを縦に12枚並べ、それを単管パイプにU字ボルトで固定してある。この辺り、確か田中優さんによれば、「オフグリッドの仲間が寄ってたかって組んでしまった」とどこかの動画か何かで話していたのを聞いた記憶がある。
定置型蓄電池として「パーソナルエナジー」を採用
メインの太陽光パネル・アレイは、このオフグリッドエコハウスのエネルギー管理を行う上で最重要なキモとなる8kWhの定置型蓄電池システム「パーソナルエナジー」に接続されている。
2.88kWの太陽光発電システムを8kWhのリチウムイオン蓄電池と併用することによって、夜間や雨天など天候の良くない日でも電気に不自由せずに暮らすことが可能となっている訳だ。
ちなみに、パーソナルエナジーの価格は、約800万円だそうである。太陽光発電によるオフグリッド生活を志向するうえで蓄電池は欠かせない訳だが、最初からこのような構成にするのは一般人には導入コストの面で敷居が高過ぎるように思う。
現時点でローコストなオフグリッド用蓄電池としては、クルマやフォークリフトなどの鉛蓄電池を流用して複数個使うというものが多い(後述のサブ用のものもそれ)。「自エネ組」というオフグリッド推進団体がキットの形で扱っているそうで、安いものでは100万円を切るセットもあるようだ。
経済合理性を優先するなら、電気の契約を新電力に切り替えて余剰売電という手も
かなり抑え込まれたとはいえ、住宅用太陽光でも固定価格買取制度を利用して余剰電力を売電することで収益を得て住宅ローンの支払い負担を軽減するという手法がまだ使える。
なので、ほとんどの人はオフグリッドにはせず蓄電池を付けないか、付けても少しだけに留めて10kWクラスの太陽光発電パネルを設置するパターンの方が多いだろう。
筆者でも、現在ならソーラーパネルの価格下落に対してリチウムイオン電池の価格下落がまだ追いついていないので、蓄電池に投資するよりは太陽光パネルに投資する方が費用対効果や経済合理性の上では理に適うと考える。
またグリッド(電力網)には繋がっていても、この4月からは従来の大手電力から新電力の電気に切り替えることもできるため、そうすれば経済合理性やデメリットを無視して遮二無二オフグリッドにする必要はない。
もっとも、脱原発、脱○電(○=東、九、中、関、…)を最優先するのであれば、田中優さんや横浜の佐藤さんのように是非とも大容量の定置型蓄電池を迷うことなく設置してオフグリッドの道を極めて頂きたい。
ちなみに、まだ国内では販売されていないが、米テスラエナジー(テスラモーターズの定置型蓄電池事業)の「パワーウォール」またはそれを複数個使った「パワーパック」が米国や豪州では市場投入され始めた。これが日本にも入ってくれば、オフグリッド化の敷居もグッと下がる事は間違いないだろう。
サブの太陽光発電は長洲産業製233W多結晶パネル4枚の1kWを鉛蓄電池と組み合わせて運用
さて、メインの太陽光をバックアップする、サブのシステムが田中邸にはある。
そちらは、パーソナルエナジーが導入される前にはメインだった模様だが、メインが上述の物となった時点でサブ、バックアップとなったそうである。
サブのソーラーパネル・アレイでは、長洲産業(CIC)の「CS-N233SJ01」(出力233W)を4枚使用している。すなわち、233×4=932W≒約1kW弱で、これをメインと同様に単管パイプの架台に固定している。
サブの太陽光発電システムの方では、鉛蓄電池によるバッテリー(合計8kWh)を使っている。
エネルギー密度やサイクル耐性などコスト以外の性能はすべてリチウムイオン二次電池が優るが、コスト的にまだまだ鉛も捨て難い。テスラのパワーウォールが本格的に市場に出回るまでの当分の間、鉛のバッテリーも定置型蓄電池としての役割を果たし続けるだろう。
(続く)
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