住宅用太陽光発電システムを個人で設置されている方々の集まりである「クリーンエネルギーライフクラブ(CELC)」さんの会合に参加し、色々と興味深い情報を入手したので、本ブログでご紹介したい。
今回のCELC会合も通常通りに会員向けの総会のあと、CELC発電データ報告会、セミナーと3部構成となっていた。筆者は会員ではないので、プログラム二つ目の発電データ報告会からの参加である。
この発電データ報告会、CELC会員約100名の方々が設置している太陽光発電システムの発電データを集計し、まとめたもの。
筆者が頂いたご案内メールでは、以下のようにご説明を頂いていた:
1998年に132軒が一緒に設置してのモニター事業から、ずっと取り続けている発電データ、社会的にも評価され、NEFの新エネ大賞もいただいたこの活動は、その後も継続して、すでに18年目となっています。
設置からの経年が長くなるにつれて、これまでにどんな成果が得られたのか、どんな問題が起こっているのか、住環境計画研究所に委託しているデータ分析の結果報告も楽しみです。
会員の所在地は、東京と神奈川でほぼ半々だが、東京都内は世田谷や杉並から西の都下の方で下町の区はほとんどない。神奈川県の会員は、西側が少ないが県央を中心に分布しているようだ。
資料を一部頂いたが公開可能か分からないので、以下文面でだけ要点をお伝えする。
- 太陽光発電パネルは経年劣化
- メーカーごとに異なる劣化率
- 定期的な発電量チェックの必要性
1. 太陽光発電パネルは経年劣化
CELCの発電データとしては、時系列のもの(月別発電実績)や対前年比での発電量、メーカーごとの発電量比較、などがある。
まず、月別の発電量は、5月の発電量が最大となり、冬場11~12月頃に最小となる。発電量は日射量にほぼ比例して変動する。
(発電量の月別の推移については、筆者の発電所でも確認済み。)
全体的な傾向としては、太陽光発電パネルは必ず経年劣化が起きるということ。前年比で1~2%程度の劣化率となるため、それだけ発電量が減少する。逆に0~2%増えたというサンプルもあるが、ごくわずかである。
太陽光パネルの劣化の原因は、通常ではシリコンの経年劣化による発電効率低下だと思われるが、劣化が激しい場合はパネル裏側のEVA樹脂の経年劣化などによってパネル内部に水分が入り込み電極や配線などが腐食している可能性なども考えられる。
住宅用だと自家消費が大半で、余剰買電はお楽しみ程度の感覚だと思うが、産業用だと売電収益で融資の支払いを行うことも多い。このため、経年劣化を考慮して発電量をシミュレーションし、それに基づいて資金計画を立てて融資の返済を行わないと、資金繰りに破綻をきたす恐れがあるので注意が必要だろう。
2. メーカー毎に異なる劣化率
太陽光発電を行うときに、最も気を付けるべきはメーカー毎の劣化度合い(劣化率)だろう。
CELCのデータでは、家庭用ということで出力は3kW~4kW程度のシステムが大半、メーカーは日本国内が中心で、LIXIL、三洋電機(現在はパナソニック)、シャープ、三菱電機、昭和シェル(現在のソーラーフロンティア)、松下電器(現パナソニック)のサンプルがあった。(京セラのソーラーパネルを採用している人はCELCでは存在しない模様)
そして国内メーカー同士でも劣化度合いが異なるのだが、昨年と同様に今年のデータでもS社のソーラーパネル(N=12)で年に5~10%も発電量が落ちているサンプルもかなりあったようだ。他の国内メーカーでは、せいぜい年に1~2%程度の劣化で、過去14年間で5~6%以下の劣化に留まるサンプルが大半。
ちなみに上述した発電量の増加サンプルは、ソーラーフロンティア(旧昭和シェル)かもしれない。ソーラーフロンティアは、単結晶か多結晶のシリコンを採用する他のメーカーと異なり唯一化合物系(CIS)で、ソーラーパネルの特性が大きく異なるからだ。
設置後、2~3年の間は光照射量によってCISでは発電量の増加が起きる現象があることは、ソーラーフロンティア自身も公言(というか営業トーク?)している。
なお、産業用では一般的な中国のブランドはほとんど無いが、現在では国内メーカーのソーラーパネルでもOEM調達で実際に製造しているのは中国やアジアの工場ということも珍しくないので、この辺は注意が必要である。S社で劣化の度合いが激しいサンプルは、もしかしたら中国製のOEM品だったりするのかもしれない。
3. 定期的な発電量チェックの必要性
このような感じで、太陽光発電システムではソーラーパネルの経年劣化が必ず生じるため、常日頃から発電量のチェックを行うことが必要である。これは、家庭用(住宅用)か産業用かを問わず、必須と言える。
そのためには、野立てで常日頃から電力計を直接確認出来るような場合を除いて、何らかの発電量モニタリング・システム、産業用で遠くに太陽光発電所がある筆者のような場合であれば、何らかの遠隔監視はやはり不可欠である。
最近であれば、太陽光発電システムの遠隔監視は格安SIMを使う事でかなり経済的に行うことが可能であり、それによってソーラーパネルの劣化度合いが分かれば、保証によってパネル交換といったこともスムーズに行えるはずである。
CELCでもシャープのパネルの劣化が起きた例では、シャープに問い合わせて劣化が実際に確認されれば交換に応じてもらえるとの話である。以前は、全量(家庭用なのでせいぜい12枚とかその程度だと可能だったのだろうか)の交換もあったという。現在では、パワコン毎、ストリング毎に不具合の起きているパネルを探して、発電量が悪い故障したパネルのみを交換してくれるそうだ。
それにしても、S社の太陽光パネルで劣化の度合いが激しいのは、同社の経営危機の状況を見ると、その因果関係は何とも言いかねるが、日本メーカーとしては厳しいものを感じる。
既にS社は太陽光から撤退する意向を表明していたと思うが、こういったソーラーパネルの比較評価でもそういう結末が示唆されていたかもしれない。S社のソーラーパネルを使用している人は今後のソーラー事業、特にサポート体制など、確認しておく必要もありそうだ。
(続く)
コメント
レポートありがとうございます。パネルの経年劣化についてですが、前年からの劣化率1〜2%と言うデータも、私の知ってるデータからするとやや大きい気がします。なんせお天気相手ですから、この手の評価は年ごとの日射量の非常に大きなバラツキをどうやってネグれるかがポイントになると思うのですが、この辺の評価方法についてはどの様にされてるようでしたか?
あ~、老婆心ながら実名企業をはっきり名指しにすると、訴訟起こされる可能性が大なので、伏字にすると良いですよ・・・。
いくら、団体でのデータでも、サンプルデータ数の公開してないんですから。。。
ただ、S社は、国からの設置の補助金が一時中断した時期のパネルについては、要注意というのが定説です。その間は実はパネルの品質条件が緩んでいた時期でもあるんです。有名なのが、沖縄でPIDを発生しまくって、定格の10%しか発電できなかった例。TVなどではメーカー名が公開されていないんですが専門誌などではきちんと名指しされてます。
自社の試験用として設置しましたが、代理店契約でうるさいので弊社では取り扱っていない京セラについては弊社で平成10年度の設置サンプルがあります。
パネルの外観は変色がありますが、発電量は1000KWh/KWを下回ってはいないですね。
あと劣化については、実は厳密なものではない可能性が大です。
角度11度以下の設置は雨洗効果がなく、劣化(というより汚染)が早くなります。平屋根ですと10度~5度程度のところも多いので。家庭用で定期的な洗浄を行う家も少ないですから。
また、周辺事情もあります。家の周りに高層住宅ができたり、隣地の立替で影がかかったり、光通信のせいでNTT柱も増えまくってます。また携帯電話の電波塔もこの10年増えてます。
それゆえ、言い方は悪いのですが、素人様の集まりのデータは正直、鵜呑みにはできません。またパワコンの劣化もメーカーごとに違うみたいですね。現在の主要メーカーなら10年問題ないのですが、一時期OEMされてほかが作成したものがあるみたいですから。
あやぱぱ殿、
コメントどうもありがとうございます。ご指摘通り、ソーラーパネルの劣化率が0~2%(本文中では1~2%と書きましたが、報告会では0~2%でしたので、一応ここではそう記します)は私も大きいと思いました。
日照量については、
という記述があり、あとは各地点(東京、練馬、府中、八王子、横浜、海老名、三浦、辻堂、小田原)の年度ごとの日射量の推移の折れ線グラフのスライドがありました。
よって、直接日射量が減少したので発電量がそれに応じて減少したとも言えませんし、では純粋にソーラーパネルの劣化による発電量の減少したのかとも言い難いですね。
今資料を見返して思うのは、サンプルが集計されてしまった後は、個別の現象として確認が出来ないこと、発電量の平均値を取ってしまうと個別に乖離の合った場所や異常なども含まれてしまい、結果の評価が難しくなるなぁということです。
歯切れが悪い回答で申し訳ないです。
匿名希望さま、
コメントありがとうございます。ご指摘通り、社名の名指し箇所については修正いたしました。もっとも記事を全部読めばどの会社か、概ね分かってしまうと思いますがww・・・
フラウンホーファーのPID試験では、劣化が起きなかった4社の一つだったはずなのに、CELCのデータでは非常に劣化が激しいというシステムが何カ所もあるようなので、結構これは驚きでしたが、ご教示のような事情があったということでなるほどと思いました。
データの信頼性についても、確かにご教示のような状況は否定できないように思います。
とはいえ、データの集計や解析では環境技術系の調査会社に委託しているようですし(会員にこの調査会社の人がいるのか、業務としての委託なのかは要確認)、市民団体としては、かなりしっかりしたデータだとは思いますので、S社の劣化事例を含めて参考にはなる点もそれなりにあるのではと考えています。
すみません、私の発電所が頭文字S社ですが
S○○○Xでしょうか??
あと思い浮かぶのはS○○○○○○○○○○R位ですが、前者だとしたらガックリです。
DaichMakino様、
本文を良くお読みになって頂ければ、いずれでも無いことがお分かり頂けるかと思います。
念のため、社名を英語で書いたとき、文字の数はS○○○Xと同じですが、最後の文字は「ピー」です。