シャープの経営再建をめぐる状況は、刻一刻と新たな動きがあるようだ。
昨晩遅く、毎日新聞が報じたニュース本文の最後の方に一行、目を引くくだりを見つけた:
シャープは鴻海が事業の切り売りをせずに一体で再建する方針を示したことを重視しており、郭会長は報道陣に「太陽電池事業を除き、事業の切り売りはしない」と明言したが…
なんと、シャープの太陽電池事業について、ホンハイは「要らない」と言っているのである。欲しいのは液晶技術だけで、太陽電池は要らないと。
ホンハイによる経営支援(=事実上の買収)で太陽電池が「事業の切り売りはしない」という方針の例外というのは、恐らく昨晩初めて出て来たニュースである。
今後、今月末までに結論が出るシャープの経営再建で太陽電池事業の行方がどうなるか、本体と合わせてまだ流動的だが、考えられるシナリオを整理してみよう:
- ホンハイとの交渉が決裂、「安全牌」の産業革新機構が結局シャープ再建の面倒をみる
- ホンハイ側が譲歩し、太陽電池事業も切り売りせずに引き取る
- ホンハイの主張通り、太陽電池以外のシャープの主力事業でホンハイが経営権を掌握し経営再建を進める
1.の場合、産業革新機構が模索していたように、シャープの太陽電池事業はソーラーフロンティアとの経営統合というシナリオが再び現実味を帯びてくると想定される。ただし、本ブログでも指摘していたように、技術的にソーラーフロンティアにとってのメリットがあまりないので、この話がスンナリまとまるかも怪しい。
産業革新機構はシャープを支援する銀行への債権放棄を求めているため、銀行側としてはこのシナリオを避けたいはずだ。現経営陣もクビになるのが嫌なはずなので、このシナリオの可能性はあまりないかもしれない。
2.の場合、ホンハイ側の負担は増すが、これについても本ブログで可能性を記したようにホンハイがシャープの太陽電池をまったく使えない訳ではない。ただし、高コストな太陽電池はホンハイにとっては、やはりお荷物になるため、このシナリオもあまり無さそうに思う。
最後に、3.の太陽電池事業を切り離したうえで、液晶を始めとしたそれ以外の事業の経営を掌握というのはホンハイの思惑通りのシナリオだ。だが、この場合、切り離された太陽電池事業をどうするかという課題が残る。もっとも、ここでソーラーフロンティアとの経営統合という可能性が浮上するかもしれない。
こうして見ると、やはり現経営陣や支援する銀行としてはホンハイの要求を呑む以外に、得策があまり無いように思われる。仕方が無いので、太陽電池事業だけ切り離して、産業革新機構にソーラーフロンティアとの統合を依頼する、といった折衷案が出てくるかもしれない。
(写真 By Nadkachna (Own work) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC BY 3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/3.0)], via Wikimedia Commons)
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