京セラ製の太陽光パネルは経年劣化に対する耐久性や信頼性が極めて高いということが、客観的な第三者調査機関が実施した一連の試験によって示された。
この第三者調査機関というのは、今回の試験を行った企業であるノルウェーのDNV GL、ドイツのフラウンホーファー(Fraunhofer)研究所やテュフ・ラインランド(TÜV Rheinland)などで、この種の調査を事業として行っている。
民間企業だったり行政関連の機関だったりということもあるが、いずれにしろ公正で公平な試験をメーカーとは利害関係の無い第三者として実施し、その結果を報告書にまとめて依頼者に提出したり、一般向けに公開したりといったことを行う。
今回の試験は、DNV GLが自主的に行ったもののようで、対象となる太陽光パネルのメーカーが試験ごとに必ずしも全部同じではないこと、主要な太陽光パネルのメーカーが全部含まれている訳ではないこと、など結果の解釈には注意が必要だ。
だが、それでもメーカーが一方的に宣伝や広告で謳う信頼性や耐久性と異なって第三者による客観的な検査結果ということで、制限付きではあることを承知のうえでも一定の有用性があるので、以下掻い摘んで要点を述べておくことにする。
なお、英語の技術文書の読解が得意な方には、原典の調査報告書「PVモジュール信頼性スコアカード・2016年版(PV Module Reliability Scorecard Report 2016)」をダウンロードし、ご一読されることをお奨めしておきたい。
(DNV GLのサイトで登録が必要だが、全21ページの本レポートは無料で入手可能。)
京セラ製の太陽光パネルは確かに良いが、価格も高い…
さて、このレポートの試験の要領や詳細は原典を、結果のまとめについては、日経BP社テクノロジーonline/メガソーラーの記事をご覧頂ければと思うので、本ブログではそれらを踏まえたうえで、少し異なった提言や解釈を試みたい。
まず、上述の通り、今回DNV GLが試験を行った太陽光パネルでは、京セラ製の耐久性や信頼性が断トツで高いことが各種の試験で実証された格好である。本ブログでも、以前から京セラ製のソーラーパネルを採用してみたいという意向はお伝えしていたが、この試験の結果を見て、その気持ちがさらに高まったことは確かだ。
では何が京セラ製太陽光パネル採用のボトルネックになるかといえば、やはり価格だろう。
現状、京セラ製パネルの最安価格なり相場なりがどの程度かという情報を筆者は持ち合せてはいないのだが、国内で産業用では一般的に使われている中国メーカーのパネル、あるいは筆者の現在の一押しであるSolarWorldといったドイツ・ブランドと比較すると、恐らく最も高い価格帯にあると推察する。
翻って、多結晶シリコンの中華パネルは販社や状況にもよるが、現在W単価で50円台(kW単価なら5万円台)から入手できるようだ。
少し前なら、この価格水準はマジで激安の中華パネルで採用には勇気が必要だったものだが、太陽光パネルメーカーのコストダウンや熾烈な競争によって中華パネル全体の相場がこの周辺の水準まで下落してきたということである。
残念ながら、国内の太陽光パネル・メーカーでこの価格水準で出せる会社はほとんどない。もちろん、ドイツ製でもこの水準ではさすがに無理で、何割か増しということになるが、それでも日本製と比べればかなり値頃感があると思う。
産業用に較べればまだ高値での売買となる住宅用太陽光では単価がもっと跳ね上がるので、国内の太陽光パネル・メーカーは住宅用ばかりで売りたがる。だが、今や中国のメーカーをはじめ産業用で多くの太陽光パネルを出荷してきた世界ランキング上位のメーカーが、こぞって住宅用に力を入れている現状がある。
したがって、住宅用でも価格や相場の下押し圧力は相当にかかっているはずで、自宅などで太陽光パネルを設置しようという方でも、中国製と比較して値引き交渉をすれば、ある程度の値引きは恐らく可能となっていると想像する。
京セラにつぐ信頼性、中国Phono Solarの太陽光パネル
さて、京セラ製太陽光パネルが断トツの高信頼性を持つことは再認識できた。
でも、やはり高いから、「もう少し安くて、そこそこの信頼性がある太陽光パネルはないの?」という向きにも、ここで触れたDNV GLの試験結果が役に立つのである。
筆者もDNV GLの調査を見るまで知らなかったのだが、中国にPhono Solarという太陽光パネルのメーカーがある。実は、知る人ぞ知るこのメーカーの太陽光パネルの信頼性が、かなり高いということが判明したのだ。
もちろん、断トツの信頼性を誇る京セラ製パネルに較べればやや落ちるが、それでもDNV GLの報告書で京セラに準ずるトップ・パフォーマーとして認められた。本命が京セラとすれば、いささか失礼な表現ながらPhono Solar社は「大穴」とでも言おうか。
Phono Solar社の太陽光パネルは、DNV GLの試験では結露凍結および高温高湿の二つの試験ではトップ・パフォーマーとはなっていないが、それ以外の三つ、つまり温度サイクル、動的機械荷重、PIDの試験では京セラに準じる信頼性・耐久性という結果になっている。
価格的には、中国の著名なトップブランドであるトリナ・ソーラーやJAソーラー、Jinkoソーラー、カナディアン・ソーラーなどと比べればマイナーな分だけ安いはず。
なので、現在ならまとまった数量であればもしかするとW単価で50円を切った水準で入手できるかもしれない。
京セラ製にかなり近い信頼性の太陽光パネルが、価格は半額とかそれに近いレベルで入手できるとしたら、産業用ならやはり価格を優先しそうなところである。
屋根上に乗せるため交換などが面倒な住宅用だと、やはり安さより信頼性を優先するかもしれないが、土地が余っている田舎なら住宅用でも野立てで、という手もあるので、その場合はやはり価格重視で壊れたら外すか取り換える、という選択肢も十分にあるだろう。
今や、住宅用だからと高価格な太陽光パネルで我慢しなければならないという時代ではもう無いのである。
コメント
うちの業者は稲盛教の信者でパネルはみんな京セラ。こんな高いのやめてけれ~、ファンファにしてとたのみましたがファンファは入荷1年待ちとのことでしぶじふお高い京セラとなった経緯もございます。
ituncleさま、
コメントありがとうございます。 ファンファとは、ハンファQセルズでしょうか?
入荷1年待ちとは、凄い…。
ここも値段の割に比較的信頼性が高いというコストパフォーマンスが評価されているためかもしれませんね。
京セラのパネルは、確かに価格が高いのですが、耐久性・信頼性の点では間違いありませんので、高くても信頼性・耐久性を優先する向きにはベストチョイスかと思います。
ご無沙汰しております。現在の中華パネルの価格は50円台までさがっているとは大変驚きました。その価格であれば、24円でもまだまた戦えますね。Phono Solar さっそくサイト確認してみます。国産パネルも頑張ってほしいですか、ここまで値段が下がってしまうと、あえてパネル製造に固執する必要が無いように思います。私は、当初から、トリナ、ウインアイコ、インリーなど、海外製のパネルしか使用していませんが、現在のところ、問題がありませんが、今後が心配です。
smile さま、
コメントありがとうございます。
中華パネルの価格相場ですが、ここ一応、表現には気を付けたつもりです(笑)。
補足しますと、業者や状況によってはこの水準で買える中華パネルもあるということです。
もちろん、中国製でも世界ランキングで上位のバンカビリティが高いメーカーでは、それなりに高めの価格を出している所もあるでしょうから、一概には言えないと思いますし、卸業者の交渉力や販売力が強ければ、メーカーが譲歩して安く卸している場合もあるでしょう。
あと、在庫処分みたいなケースもありますので、それを含んでの50円台/Wとご理解下さい。
もう一つ Phono Solar ならまとまった量のオーダーで50円/Wを切るかも、と憶測を書きましたが、これは少し勇み足だったかもしれません(汗)。お確かめ頂ければ幸いです。
さて「今後が心配」とのことですが、今回ご紹介したDNV GLの信頼性調査は、正に長期の信頼性・耐久性を検証しようとしている訳です。
太陽光発電は、住宅用の余剰売電でも10年、産業用の全量売電では20年と長きに渡ってしっかり発電することが求められるので、発電性能や効率もさることながら、やはり長期の耐久性・信頼性を私は重視しています。
その意味で、DNV GLやフラウンホーファーなどの第三者機関の客観的な試験は貴重な情報を提供してくれるということです。なお、本文中にも書いた通り現在太陽光パネルを製造・販売している全メーカーが網羅されている訳ではありませんので、smileさまご採用のパネルがダメという訳でも必ずしもありません。
この辺り、また情報があれば本ブログにてご提供させて頂ければと思いますので、今後ともよろしくお願い致します。