単相パワコンで49.9kWとする組合せを比較検討してみた

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太陽光7号基(@広島県呉市)について、連系申請を行ったことは既報の通り。この7号基では、認定と連系申請でパワコン(AC)出力を49.9kWと低圧で最大の売電量を目指している。

49.9kWと低圧(<50kW)の産業用太陽光発電で最大の出力にこだわる方がどの程度の割合いるかは分からないのだが、筆者が存じ上げている中では友人のANZK氏が確か49.9kWをどこかで作っていたと記憶している。

で、筆者が先週明けに中国電力に連系申請を提出した段階では、とりあえず安川電機の単相パワコンを選択しておいた。安川電機のパワコンを選んだ理由は、49.9kWの数合わせと塩害に比較的強いという辺りである。

ときに49.9kWを組める単相パワコンの組合せを他のパワコン・メーカーでも調べてみると、力技というか無理くり感はややあるものの、数合わせという意味では一応可能そうな組合せがあることが分かったので、安川電機のものと合わせ以下ご紹介しよう。

安川電機「Enewell-SOL P2」で49.9kWとする場合

  • CEPT-P2AAB010B (10kW)×4基
  • CEPT-P2AAB9P9B(9.9kW)×1基

合計=5基、49.9kW

定格電圧=400V
変換効率=94.0% (直流入力(断路端子台)使用時、DC400V入力時)、または94.5%(一括入力使用時,DC400V入力時)

冷却方式=強制空冷(冷却ファン)
保護等級=IP55相当
夜間消費電力=約15W

備考: 安川電機のパワコンは信頼性が高そうで、ファンの交換も容易らしい。だが、ファンは音が五月蠅いし、故障しやすいので出来れば使いたくない…

独SMA「SUNNY BOY」で49.9kWとする場合

独SMAのパワコン「SUNNY BOY」

独SMAのパワコン「SUNNY BOY」

  • SUNNY BOY 3500TL-JP(3.5kW)×5基
  • SUNNY BOY 4500TL-JP(4.5kW)×6基
  • SUNNY BOY 5400TL-JP(5.4kW)×1基

合計=12基、49.9kW

定格電圧=330V
変換効率=96.0% (4500TL-JP)/96.5%(3500TL-JP)、最大96.7%

冷却方式=受動式空冷(ファンレス)
保護等級=IP65相当(EN60529準拠、ESS装着時)
夜間消費電力=N/A (数W台?安川電機のよりは低消費電力と推測)

備考: SMAの低圧パワコンは住宅用を想定しているが、屋外・野立てでも使用可能と想定。5.4kWの5400TL-JPは、2016年夏に販売開始予定。9.9kW/10kWで三相の「SUNNY TRIPOWER」の単相バージョンを出してくれるとパワコン台数も5台でありがたいのだが、それは多分ないかな…

台湾デルタ電子「RPI H」で49.9kWとする場合

デルタ電子「RPI Hシリーズ」パワコン

デルタ電子「RPI Hシリーズ」パワコン

  • RPI H4.5J_P(4.5kW)×2基
  • RPI H5.5J_P(5.5kW)×1基
  • RPI H6J_P(5.9kW)×6基

合計=9基、49.9kW

定格電圧=280V
変換効率=96.5%~最大97%(H4J/H4.5J)、96.0%~最大96.6%(H5.5J/H6J)

冷却方式=受動式空冷(ファンレス)
保護等級=IP65相当
夜間消費電力=1.5W未満

備考: 台湾デルタ電子のパワコンは、変換効率が独SMAにひけをとらず、場合によっては凌駕する。夜間(待機時)の消費電力も1.5W未満と低消費電力。安川の15Wって…

まとめ:効率や個数のバランスでデルタ電子がベストか

連系申請を提出する際、時間が無かったためとにかく無難な安川電機で提出してしまった。だが、じっくりと検討してみると、SMAやデルタ電子などのパワコンも捨て難いことが分かる。

まず、SMAにしろデルタにしろ、変換効率が高い。国産だと安川や田淵の変換効率が93~94%程度、オムロンのKP55Mでも95%しかないが、海外のメーカーだと最低でも96%の変換効率で、条件が良ければ97%と相当に高性能である。

また、保護等級つまり防塵・防水性能も国産より優れている。IP65がデフォルトとなっていて、IP55がデフォルト(それもオプション?)の国産に勝る。

いずれも一台当たりの出力がやや小さめであるため、9~12基とパワコン設置個数が少し増えてしまうのだが、20年間の売電収益を考えると、ここは設置の手間よりも変換効率と耐久性を重視したいところである。

変換効率の高さ、耐久性、パワコン個数などから、49.9kWを実現するうえでは台湾デルタ電子が最適かもしれない。(他にもっと良い組合せで単相49.9kWを実現できるパワコン・メーカーをご存じの方は、是非コメントを下されば幸いである。)

安川電機でメリットになるのはパワコン台数の少なさと、国産ゆえの馴染み深さ程度なので、あとは価格も確認したうえで費用対効果を検討してから、実際にどのメーカーのパワコンを採用するか最終的に決めたい。

8号基は海岸からの距離が500m程度と塩害の懸念が少々あるので、やはり保護等級も高い機種を採用したいし、変換効率も高いに越したことはない。

追記:
それにしても、独SMAが5.4kWをラインアップに追加してやっと低圧49.5kW/49.9kWを組み易くなるのと比べると、台湾デルタ電子の低圧単相バリエーションは不思議と49.5/49.9のいずれも9台で納まる。これは日本の低圧連系のスペックを考えて製品を企画しているのか、それともただの偶然なのか…

デルタ電子の5.5kW×8基+5.9kW×1基の構成に決着

呉の7号基では、結果的に上述のいずれでもなく、デルタ電子の単相パワコンにより次の構成で49.9kWとした:

  • RPI H5.5J_P(5.5kW)× 8基
  • RPI H6J_P(5.9kW)× 1基

合計=9基、49.9kW

太陽光発電所・7号基が呉で売電を開始
この5月中旬、当方がこれまで計画していたプロジェクトとしては最後となる7基目の太陽光発電所(設備容量:55kW、連系出力:49.9kW)が広島県呉市で連系を完了、売電を開始した。 広島県呉市で5月中旬に稼働を開始した当方の太陽光発電所7号基...

パワコンはデルタ電子で上述の構成と一部同じだが、上述のようにしなかった理由は、なるべく同機種を採用することで故障が発生した際の交換などメンテナンスがし易くなるためである。

この構成であれば 5.5kWと5.9kWの2機種であり、3機種を使用する構成に比べてシンプルであり、もし4.5kWや5.9kWの機種が廃止された場合でも、最悪5.5kWの機種のみでも(連系出力は49.5kWと少々減るが)運転の継続が可能となる。
(追記 2022/12/14)

コメント

  1. smile より:

    現在私もパワコンについてはいろいろ検討しています。その中でデルタの単相9.9kWパワコンが発売すると聞きました。パワコン台数が増えれば工事代、材料代もUPするので、できればこのパワコンが最有力候補です。しかし現在、田淵動力で申請をあげてあるので電力申請の変更の必要が無い動力のパワコンで外部ファンが無いパワコンであればとも考えています。先日、デルタ動力16.5kW動力パワコンが低圧用に使用変更して発売すると聞いたのですが、どうなのでしょうか。デルタ16.5×3台であれば導入コストも安くなり、また入力電圧も高いのでSFパネルでも愛称がいいのではないかと考えています。トランス内臓になるかの懸念もありますがそうであれば現状電力申請で変更の必要もなく当方でも採用したいと考えています。

    • 美具琲瑠弩 より:

      smileどの、

      コメントありがとうございます。
      ご指摘の通り、パワコンの台数は私もなるべく減らしたい所です。
      ただ、この記事に書いたように、PCS台数と効率&耐久性を天秤にかけるなら、やはり効率と耐久性を優先すると思います(できれば、ある程度正確な収支シミュレーションも行ったうえで)。

      デルタの単相9.9kW、確か先のPV Expoで私も見たような、見なかったような…
      これに安川やSMAと同様に10kWのバージョンもあれば、49.9kWも出来て完璧なんですが、ご存知ですか?

      あとデルタの16.5kWもその噂の通りです。で、3台で49.5kWを構成できるということで。

      ただ、今回のこの案件では三相でなく単相、しかも49.9kWとする構成を選んだので、デルタの16.5kWは採用対象から外れます。その代り、納期などが間に合えば当方でも三相の3~7号基で田淵を置き換えてこの機種を採用するかもしれません。

  2. 匿名希望=通りすがり(鬼) より:

    デルタの動力16.5KWは、基本高圧向け設計みたいのため、トランスは外付ですが
    絶縁トランス付でもかなりのお得な値段です。
    ただ、トランスの場所と保守用のケースなどを考えなければなりませんが。

    • ビッグふぃ~るど より:

      通りすがり(鬼)様、

      コメントどうもありがとうございます。

      デルタの16.5kW、SMAの採用実績が既にある東電管内なら絶縁トランス無しでもいけるかなと思います。中国電力など他のエリアでは、絶縁トランスが必要となり、メリットが半減するかなと思います。

      必要が無ければ、あまり余計な機械装置は入れたくないですね…

  3. パワコンマニア より:

    安川は…今は改善されていると思いますが一昔前は塩害に弱かったイメージがあります。海岸500m程度とは正に重塩害地域! ぶっちゃけ太陽光の一番の敵が塩害と言っても過言ではないのでIP65はマストだと思います。今回の土地条件だと変換効率よりまず第一に塩害対策に留意すべきです。自宅から近いならともかく、非塩害対応パワコンで塩害地域だと下手すれば1年持たずにパワコン壊れるのでしょっちゅう現場に行く羽目になります。正直モジュールやケーブルも完全な塩害仕様をお勧めしますがそれは財布と相談かもですね…

    SMA、デルタ電子ともにファンレスでありスペックは素晴らしいですね。SMAは待機電力がやや高いという噂を聞いたことはありますが実際どうなのか未確認です。ここまで来ると後はサポート体制や国内の営業所展開がカギになりますね。万が一壊れた時でもちゃんとメーカー対応してくれるのか、窓口が少なく修理等に時間がかかるのか。とは言えSMA、デルタ電子ともに導入数が少ないせいか壊れた事例を聞かないので比較出来る検証材料が無いのが残念です。

    • 美具琲瑠弩 より:

      パワコンマニアさま、

      コメントおよびアドバイス、どうもありがとうございます。

      おっしゃる通り、塩害対策を最重要視して選択すべきですよね。
      パワコンがすぐに壊れてはいくら効率が良かろうと、意味ありませんし。
      幸い、SMAやΔはIP65準拠で効率も高いので、やはりこれらの内から選びたいと思います。

      出力の違うパワコン三つも組み合わせると、ストリング構成の設計もまるでパズルみたいになってきますが(苦笑)、これも楽しみつつやりたいと思います。

      どうぞ今後とも引き続きいろいろとご指導下さい。

  4. 今さら太陽光 より:

    デルタの三相パワコンを検討している者なんですが・・・
    出力が400Vとなっているのは、別途絶縁トランスを設置する目的で、
    200Vに変換後、電力会社との接続を想定しているのでしょうか・・・?
    はじめから、202Vでないのは国際的なことで・・・?

    • びっぐ琲瑠弩 より:

      今さら太陽光さま、

      コメントありがとうございます。
      デルタの「RHI-M16A」の事かと思われますので、それを前提として見解を述べます:

      http://www.dej.co.jp/Products/CategoryListT1.aspx?CID=0501&PID=2498&hl=ja-JP&Name=RPI-M16A%20/%20M20A

      まず、このパワコンはもともと高圧連系用です。ただ、三相では高圧だけでなく50kW未満の低圧連系の需要も多いため、デルタ社もこのパワコンの低圧連系用を上記の機種に多少手を入れることで出力を200V台として市場投入するということです。

      他の市場の高圧の規格は良く存じ上げませんが、400V以上が多いのかもしれません。
      一般的な商用電圧は、英国など200V圏もかなり多いと思います。

      以上、ご参考まで。

  5. ビッグふぃ~るど より:

    追記:
    5.5kW × 8 + 5.9kW × 1 = 49.9kW もあり。
    メーカーの選択肢は、デルタ電子、パナソニックなど。ただ、パナはいかにも高そうなので、やはりデルタが本命か。

    中電と連系協議を行った安川の単相 10kW/9.9kWはディスコンとなり、どちらにしろ使えなくなった(汗)。
    SMAも製品ラインが縮小されて3.5kWのPCSがディスコン。ここに記した組合せはもう構成不可。