富士電機製のオールSiCモジュール適用パワコン、少々ネタとしては古くなってしまったが、水が上流から下流に流れるかの如く…ということで本ブログにてお伝えしてみる。
まずはニュースソースを引用しておく:
新製品 - 業界初「オールSiCモジュール」を適用した大容量メガソーラー用パワーコンディショナの発売について | 富士電機
このオールSiCパワコン、50kW未満のプチソーラーでの採用はまだもっと先になると思うが、億単位の投資事業となるメガソーラーでは今後導入が活発化しそうである。
ちなみに、SiCというのはご存じない方のために解説すると炭化珪素(シリコンカーバイド)というシリコンの炭化化合物で、それをシリコンの代わりに材料として使ったパワーモジュール(高出力のダイオードやトランジスタ)が、SiCモジュールということ。
何が良いのかというと、従来のシリコンだけのパワーモジュールで作ったパワコンに較べると、まず電力の変換効率が高いことである。
現在、普通に市販されているシリコン製パワー半導体を採用したパワコンでは95%前後のパワコンが一般的だ。それに対して、SiCパワー半導体を用いると、今回の富士電機のように98~99%といった非常に変換効率の高いパワコンを作ることができるのだ。
わずか3%程度の違いだが、塵も積もれば山となる。平たく言えば、年間に100万円の売電収入を生み出す太陽光発電所であれば、このパワコンをすべて採用することで103万円の売電収入になるということだ。10年、20年間の積み重ねとなると、もちろん全然バカにならない金額になることは容易に分かるだろう。
当然、年間3万円の収入アップに対して、パワコンの価格がそれ以上上がっていては意味がない訳で、だから50kW級未満のプチソーラーでは多分SiCモジュールの導入は早くても5年先くらい、普及期に入るのは10年ほど先になるかもしれない(量産の実現や競争激化でコストダウンがもっと早く進めば、それほど掛からないかもしれない)と見ている訳だ。
あと、このニュースリリースにもあるように、パワコン自体の小型化・省スペース化が容易になる点も利点だ。
これはスペース的な制約があまり大きくない野立ての太陽光発電ではあまりメリットにはならないかもしれないが、一般家庭や住宅用の太陽光発電システム向けパワコンでは日本の住宅事情を考えるとかなり大きなメリットと言えるだろう。
富士電機のリリース文では恐らく当たり前すぎという事で書いてないのではと思うのだが、信頼性や耐久性も向上するはずだ。なぜなら、SiC製のパワー素子はシリコンのパワー素子と比べてより高耐圧、高温の環境下での動作が可能となるからである。
したがって、例えばこれまでは冷却ファンが必ず必要であったところファンレス(冷却ファン無し)の設計とすることが出来れば、可動部が無くなり故障の確率が下がる。元々ファンレス設計の製品でも温度面でのマージンが広がるので、その分故障に対するマージンはやはり広がると考えられる。
そんなワケで、メガソーラーだけでなく我々個人や中小企業レベルの太陽光発電オーナーにとってもSiCパワコンの普及が待ち遠しい訳である。早ければ、筆者がパワコンを交換する時にSiC採用パワコンも選択肢になっている可能性があるのだ。
プチソーラー発電所オーナーとしては、目先の利益に結びつかない製品や技術に対しては鈍感になりがちだが、こういった新技術に対して常にアンテナを張っておくことも重要と筆者は考えている。
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