今夏の節電や電力自由化に関して楽天リサーチが実施した興味深い調査を、たまたま目にした2、3日前の日経産業新聞の記事で知った。
『「電力自由化」の関心はシニア層に集中、節電意識は高レベルを持続』
夏の節電に関する調査(楽天リサーチ)
この楽天リサーチの調査の真の意図はやや胡散臭い気がしないでもないのだが、まぁそれは置いておこう。
上から順に要所で突っ込みを入れてみる。
原発を再稼働しなくても電気は足りていたはず
調査結果概要で「今夏は2011年の原発事故発生以来「初」の原発ゼロの夏…」とあるが、2012年の夏も本来ならば火力発電をフル稼働させ、ピークシフトを強力に実施していれば、大飯原発を再稼働しなくても電気は足りていたはずだ。
原発ゼロを既成事実として認めたくないために、当時の野田政権が無理矢理に大飯原発の再稼働に突っ走った(そして、その後、関電はコッソリと一部の火力発電所の運転を止めていた)ことを筆者は忘れていない。
また、前にも本ブログで指摘したことがあったと思うが、「節電」と言う言葉はかなり問題のある用語である。なぜなら、この言葉には電力需要の時間帯をずらすという概念が希薄で、時間帯によらず単に電気を節約すれば良いという誤ったニュアンスがあるからだ。
ともかく次に行こう。
電力小売り全面自由化で、消費者の関心は嫌でも高まる
電力の自由化に関して若者の関心が低いというのは仕方がないことのように思う。
現状、小売り電力では地域独占に変化は無く、一般の消費者が東電なり関電なり、中電なりといった電力会社から電気を買う以外の選択肢に何も変わりはないからだ。
2016年に全面自由化となって、一般家庭でも電力小売り業者を選べるとなれば、新電力の広告も目にすることになり、嫌でも関心は高まるだろう。
さて、調査結果でいくつかある設問とその結果のグラフが出てくるのだが、それは概要でも突っ込みを入れた通りなのですっ飛ばし「原発保有の電力会社について」の設問を見てみよう。
ここで、まず調査の問を引用する:
2016年以降の電力自由化で電力会社を選ぶ際に、毎月の電気代が増減する場合、現状の電気代に比べ最大どれくらいの電気代なら許容できるか聞いた。
この結果は、ちょっと解釈が分かり辛い点があるので調査・アンケートの設計にもやや問題があると感じるのだが、とにかく回答をグラフで示すと以下のようになる:
原発を保有しない電力会社に多少の値上げでも乗り換える
この結果、まず「原発を保有する従来の電力会社」に対して回答の選択肢で最も多かったのは「現状と同等価格なら許容できる」とした回答者で36.5%。次が「電気代に関わらず選択したくない」で29.2%だ。
日経産業の記事でもこのように記述し、したがって「現状と同等価格なら許容できる」とした回答者が「電気代に関わらず選択したくない」を上回り最も多いと結論づけていた。
しかし、この結論は実はミスリーディングで、結果を正しく解釈しているとは言えない。
それがなぜかは、この回答結果のパイチャートを良くみれば分かる。
つまり、価格が現状と同等なら許容可の36.5%に価格が100円、500円、1000円アップでも許容可という回答者のパーセンテージを加えると41.7%となる。言い方を変えると、東電や関電が値上げしても許すという信じ難い回答者の数%に同じ価格でも良いという回答者を咥えると約4割しかいないということ。
逆に、電気代に関係なく選択したくない約30%の回答者と値下げ(100円、500円、または1000円)すれば許容すると言う回答者を咥えた割合が約6割なのである。
2~4の新電力で同じ設問に対する回答も見ると、この傾向は明らかである。
つまり、この設問の回答から読み取れる大方の消費者からのメッセージは「従来の電力会社は電気代がいくらでも、または値下げしないと選択しない。新電力(≒原発を保有しない電力会社)なら多少値上げしても許容して乗り換える。」ということになるのだ。
節電に関する調査結果も良く吟味して確認すると、新聞の報道とは全く異なった解釈になってしまう。
なぜ日経産業新聞がこのような偏向まがい報道を行っているか、それは日経という新聞社がどういったセグメントに肩入れし、原発をどうしたいかを見れば明らかではある。
【参考】
ITメディアの「スマートジャパン」もこの調査結果を報道していたが、筆者とほぼ同じ結論を導き出していた。この調査をフツーに解釈したら、普通はこうなるよねぇw…
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