「ディーゼルゲート」は収拾がつかない状況に
独フォルクスワーゲン(VW)の不正問題、いわゆる「ディーゼルゲート事件」が留まる所を知らない情勢になってきた。
当初VWは経営幹部の関与を一切否定していたが、つい最近では幹部30人が関与していたと独メディアのシュピーゲルが報じるなど事態は悪化する一方だ。VWは「トカゲの尻尾切り」で済まそうとしていたのかもしれないのだが、そうは問屋が卸さないというワケ。
VWのクリーンディーゼル車が販売されていなかった日本では、その影響は限定的ながら、VWというブランドのイメージダウンは避けられない。クリーンディーゼルエンジンではなくても、「そのエコカーの燃費は、本当なの?」と思ってしまうのが人情だからだ。
また、真偽のほどは定かではないのだが、VWがスズキのネガティブな情報をどこぞ家のジャーナリストに高額な報酬で依頼した、といった「逆ステマ」疑惑まで噴出する有り様:
筆者は現在クルマを保有していないし当分その予定も無いのだが、将来西日本のどこかに移住すれば再びクルマ無しでは生活できないような場所に暮らす可能性も無いとはいえない。その場合はプラグインハイブリッド車(PHEV)が良いと思っていた所、VWが発売した「ゴルフGTE」は結構そそるモノがあっただけに、今回のような事件は本当に残念である。
内燃機関の環境対応が困難化、車両の電動化が加速
ただ、筆者のような環境オタク、クリーンテック・マニアからすると、クルマの技術動向が非常に興味深い展開になっていることに対して感慨深く感じずにはいられない。
つまり、VWの不正問題をきっかけとして排ガス規制への対応が困難なことからクリーンディーゼル技術の将来が厳しくなるのとは裏腹に、車両の電動化が一段と加速する流れとなったからだ。
フォルクスワーゲン自体、クリーンディーゼルを環境対応の柱とする戦略から電気自動車(EV)やPHEVなど電動車両の重視へと方針を大きく転換せざるを得なくなった。
こうなると、まだしばらくはダウンサイジング過給やマツダの「SKYACTIV-D」(スカイアクティブ-D)のように独創的な技術で頑張っているメーカーのクリーンディーゼルは残るものの、多かれ少なかれどんなメーカーでも環境対応が電動化なしでは済まなくなる。
なにしろ、今や自動車レースの最高峰である「F1」ですらハイブリッド車(HV)の技術を導入しているように、クルマの電動化は既定の路線だ。さらに、HVのフォーミュラ1に加えて、ピュアEVのレースである「Formula-E」までグローバルに開催されているのである。
EVやPHEVと相性が良い太陽光発電
多くのクルマがEVやPHEVのように電気で動くようになると、色々な所にクルマの充電スポットができていく。
同時に「どうせなら充電する電気は、クリーンで地産地消の方が良いよね」という事になるケースが増え、「じゃあ屋根に太陽光発電も設置しよう」ということで、住宅やカーポート、充電スポット、エネルギースタンド、商業施設などで太陽光発電の設置が増えるとみている。
ガソリンスタンドは、ガソリンや軽油以外に電気や水素なども供給するエネルギースタンドになるか、コンビニエンスストアやレンタカー、カーシェアリングのステーションとの併設になるといったサービスの多角化などをしない限り生き残れなくなる。
(ただでさえ、需要の頭打ちやクルマ離れ、クルマの燃費性能向上などでガソリンスタンドは年々減少の一途だ。地方在住の方は、「給油難民」になりつつあると感じている方も少なくないかもしれない。EVなら自宅で充電すれば、ガソリンスタンドや給油は不要になる。)
日本国内だけで考えると、「悪代官と越後屋」のために固定価格買取制度や再エネの地産地消をやろうと全国で勃興した新電力が潰されるような情勢が確かにある。だが、グローバルにはモビリティの内燃機関が駆逐されて電気に変わることで、太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーによる分散電源が確実に増加するはずだ。
あと5年先か10年先か、あるいは20年先か、明確にいつだとは言えないのだが、とにかく将来どこかの時点で太陽光などの再エネとクルマの電動化の関係を俯瞰したときに、VWの不正によるクリーンディーゼル技術の衰退がクルマの電動化を加速するうえで一つの契機となった、という流れに気が付くのではないかと個人的には思っている。
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