田淵電機が蓄電池を出展【CEATEC JAPAN 2014】
CEATECの田淵電機ブースの展示内容について、もう一点追加しておきたい。
SiCパワコン以外に田淵電機の今回の出展で目を引いたものが、もう一つあった。
それは、リチウムイオン電池を採用した「ポータブル蓄電システム」である。
SiCパワコンの方は、とっくの昔に発表されていたものに今頃になって気が付いたというちょっと間抜けな報告となってしまったのだが、この蓄電池の方は少なくともCEATECでの展示は今年が初めてのはずだ。
ブースで頂いたパンフレットにも「近日発売」と書いてあり、まだ新製品の発表をしてそれほど経っていなかったと思う。
今思えば、このポータブル蓄電池システムについても、もっと色々なことを聞いておけば良かったと少し後悔する所もある。だが、今回の取材はそもそも勤務先の仕事での調査のついでということもあり、太陽光発電関連は言わば「オマケ」なので、あまり贅沢は言えないのだった。
パワコンの田淵電機が蓄電池を作って売る意味とは
前置きはともかく、筆者としてはパワコンやトランスを作っている会社が定置型蓄電池を作って売る時代が来たのだなということで、やはりこの辺にも太陽光発電産業の潮目の変化みたいなものを感じる。田淵電機としても、こういった状況を織り込んでいたのだろうなと思う訳だ。
「九電ショック」が起こったのは、ある意味「青天の霹靂」という色合いが濃かったが、遅かれ早かれ来年3月の時点では固定価格による全量買取制度の優遇期間も終焉を迎えることは最初から分かっていたのである。だから業界各社も少なくともその時点までに何らかの対策を打っておかなければ、慌てふためくことになっていただろうからだ。
ともかく、同社がパワコンと組み合わせて太陽光発電システムと併用する、あるいは太陽光発電なしでも、企業や事業所、家庭などが停電や災害時の備えとして、または日頃の電力のピークカットなどに役立てるために使える商品をラインナップに追加した訳で、今後の展開が楽しみである。
定置型蓄電池と言えば、まだコスト(≒価格)が高いのが一般的な課題として認識されている訳だが、田淵電機のこの蓄電池はどうか。
ブースで単刀直入に尋ねたところ、出展していた二種類のいずれも100万円を切る価格だと教えてくれた。その二種類というのは、以下の通り:
- 容量5kWh;リチウムイオン電池(500W出力で約10時間連続使用が可能)
- 容量2.5kWh;リチウムイオン電池+UPS(500W出力で約5時間連続使用が可能)
ということで、UPS付きの方はともかく、5kWhのリチウムイオン蓄電池システムでkWh単価が20万円/kWhである。
この価格は決して安いレベルではないが、競合他社が増えれば価格もいずれはこなれてきて10万円/kWh、5万円/kWhと下落して行くと思われる。時間の問題だろう。
また、5kWh、2.5kWh(UPS付き)に加えて、10kWhのシステムも参考出品されていた。
このように田淵電機のブースでいくつかの定置型蓄電池を見て、筆者としては太陽光発電と組み合わせた独立電源システム(オフグリッド)の構成などにも自然と思いが至った訳だ。
蓄電池の課題はコスト:本格普及はいつ?
環境活動家の田中優さんが岡山のオフグリッド古民家で導入した「パーソナルエナジー」という蓄電池システムは、容量が10kWh超で価格も500万を超える高価な代物だった。(その後、鉛蓄電池で同様の機能ながらもっと安くしたシステムを100万円位で斡旋しているようだ。)
今回の田淵電機のリチウムイオン蓄電池システムを使えば、田中優さんの所のシステムに準じたものが半額程度(5kWh×2)で出来るのではないかと思う。
まぁ、もう少し待てば前述の通り他社からももっと色々な定置型蓄電池が出てきて、本格的な価格競争が始まれば、現行価格の1/10位に下落するのに何年も掛からないかもしれない。
九電ショックによって、太陽光発電で系統連系だけしか考えないのはリスクが大きいことが露呈してしまった。(日本みたいなOECD加盟の先進国で、どこかの発展途上国のような政治リスクが顕在化するのは、国としての信頼を損ねるばかりで本当に残念だが。)
その意味で、太陽光のオフグリッドでの展開を考える上で、定置型蓄電池は無くてはならない存在になったはずである。
先の記事で田淵電機の株価が急落し、固定価格買取制度の行方によっては株価が下値を探るかもしれないと書いたが、もしオフグリッドなどの需要で同社の定置型蓄電池の売上が増加すれば、意外に早く株価が上昇基調に戻す、なんて展開ももしかしたらあるかもしれない。
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