昨日、参議院本会議で改正電気事業法が可決され、成立した。
俗に言う、電力自由化である。
これによって、これまでは大企業など大口の電力需要家にしか認められていなかった電力の選択肢が、2016年つまり再来年から、家庭や中小企業にも与えられることになる。
簡単に言えば、これまで首都圏では東京電力からしか買うことが出来なかった電気を、他の企業、たとえばオリックスやソフトバンク、あるいはトヨタ自動車から買うことが法律的に可能になるということである。
太陽王子も既にブログに書いていた通り、脱原発や太陽光などの再生可能エネルギーの拡大を実現すると言う意味で太陽光発電ムラ諸氏にとっては朗報かと思う。
どう考えても社会悪でモラルハザードの極致となってしまった東京電力との契約を解除し、それ以外のもっとまともな企業から電気を買うことが出来れば、筆者としても願ったり叶ったりだ。(願わくば、2016年よりもっと前に西日本への移住を実現しておきたいが)
また、買う方だけでなく、我々のように太陽光発電を事業として手掛ける者にとって、発送電事業者を選べるようになる可能性も高くなった。
つまり、筆者の場合なら、中国電力ではない他の電気事業者(それがどの会社になるのかはまだ分からないが)にBFエナジー(筆者の商号)が太陽光や風力などで発電したクリーンな電気を売り、それが消費者に届けられるようになるということ。
現時点では、まだ原子力政策における「国策民営」という体制が残っているため、中国電力が原発を止める兆しはみられない。となれば、そのような”汚い”電気を売る会社ではなく、クリーンな電気を売る良心的な会社に筆者が作る電気を売りたい訳である。
ただ、法制度面の整備が整うとはいっても、本格的に電力自由化の恩恵によって電気事業者を自由に選べるようになり、現在の電話やケータイのような市場になるためには、まだ足りないように思う。
つまり、技術的にも「スマートグリッド」のような系統網や電力計の仕組みが整備されないと電気事業者を柔軟に選択するとか、電気の売買を自由に行う、といったことが現実的には困難だと思われるからだ。
現状、国内電力業界のスマート化はガス業界と比べても最低5年から最大10年は遅れている。
ガス業界では、東京ガスなどが最近、計量法に定められた枠組みではあるものの古いアナログのメーターからデジタルで通信機能を持ったスマートメーターへの更新を進行中だ。(筆者の住まいでも、ガスは最近スマートメーター化された。)
欧米先進国の電力産業ではスマートメーターの設置がどんどん進んでいるのに、我が国ではまだほとんどスマートメーターすら設置されていない。なので、現実的に電力自由化の恩恵をフルに享受できるようになるのは、2020年頃からではないかと見る。
あと、経産省の資料を見ていて少し懸念を持ったのは、「電力先物取引を可能にするため、先物取引の対象に「電力」を追加する。【商品先物取引法第2条】」というくだり。
自由化された電力市場で電気代の高騰などのリスクをヘッジするための措置としてこういう改正が行われるのであれば問題は無いのだが、「商品先物取引」という言葉からは投機の匂いがするからだ。
筆者の単なる杞憂であれば良いのだが。
参考資料(いずれも経済産業省より):
- 「電気事業法等の一部を改正する法律案」の概要
- 電力システム改革が創り出す新しい生活とビジネスのかたち
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