市民ファンドより素敵な商売はない

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エネルギー市民ファンド本日、小田原で行われた「小田原電力」と「ほうとくソーラー市民ファンド」の説明会イベントに参加してきた。

エネルギーの地産地消(というか、「地産地所有」と飯田哲也氏は映画上映後の講演で訂正していたが)で先行するヨーロッパの最先端を描いたドキュメンタリー「パワー・トゥ・ザ・ピープル」の上映もあり、3時間と長時間の催し物ながら、かなり多数の参加者が来場していた。

さて、そのソーラー市民ファンド、結論から言うと野立てか屋根上かを問わず「自分でソーラーを所有・運用する方が得」ということに尽きる。

筆者は実はこの市民ファンドへの出資を検討するというよりも、そのファンドの組成や運営がどのような仕組みなのかを知りたくて、わざわざ往復2時間と2000円以上の交通費を費やして出かけてきたのである。

何て言うか、映画で描かれていた欧州の市民による電力組合と、いま日本で組成されている太陽光発電などの「市民ファンド」は、率直に言って似て非なるモノでは無いかと感じた。

例えば、リターンだけ考えてみても、映画の中では電力協同組合の出資に対するリターンは7%はあると言う話をデンマークの事業者はしていた。

これは出資する組合員へのリターンだと理解するが、日本の現在の再生エネルギー固定価格買取制度でも、このレベルの収益率はもちろん十分に可能である。

我々のようなプチソーラーでも、よほど高い土地を買ったり、ソーラーパネルや架台の調達でコストを掛け過ぎたりしない限り、8~9%、上手くやれば10%以上の利回りを得る事は可能である。

それに対して、市民ファンドのリターンは年利で2%。

銀行の定期預金の金利よりはマシだが、我々が自身で発電所を所有し、売電して得る収入に較べるとあまり魅力は感じられないレベルである。

デメリットは他にもあった。

やはりおカネを出す話には、有名人が来ようが、会社組織だろうが、みな慎重になるのだろう。

質疑応答では参加者の方々から、それなりに真剣な質問がいろいろと出てきていた。
例えば、元本が保証されるのか、どうか。答は「元本の保証は無い」である。

太陽光発電という事業の性格からは、比較的低リスクだと思うが、出資する市民の立場では当然ながら自分の出資金の元本保証は欲しいところだろう。

また別の質問では、市民ファンドの出資金合計の1億円と金融機関からの借入金2.7億円で、その金融機関からの借り入れ金利はどれ位かというのがあった。

回答は、「金融機関との取り決めにより非開示」とのことだった。
恐らく2%より低い金利なのだろうと思う。

筆者のプチソーラーですら2%より有利な利率で調達できるのだ。

メガソーラーで、市などのバックアップもあるようなので、恐らく1%前後のかなり優遇された金利になるのではないか。しかも担保は売掛債権だけ、つまりいわゆるアセットベースドレンディング(ABL)のスキームである。

さらに、筆者も聞こうかと思いつつ、彼らの邪魔になったら悪いなと思って遠慮していたことを聞いた人がいた:

「8年間の分配期間が終わった後は、どうなるのですか?」

固定価格買取制度では、電力事業者は20年間の売電が可能である。
しかし、今回のソーラー市民ファンドでは、まず2年間の据え置き期間があり、その後の8年間で2%の利率を複利で元本と一緒に支払うという計画になっている。

つまり、最初の2年間はお金を預けるだけ、その後の8年で回収、それ以降は何も無しだ。普通に考えれば、残りの10年間の売電は事業者側の収益ということになるのだろう。

ということで、やはり「市民ファンド」では出資者よりもファンド運用会社の方が「素敵な商売」だなと感じた次第。

筆者も市民ファンドのような仕組みも行ってみたいと思うが、もう少し出資者側に還元してあげたい。または協同組合として、出資者は皆同じ率のリターンを享受できるような、そんな仕組みが望ましいと思う。

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