大阪では今週「PV EXPO関西」が開催されていたのだが、遠方ということもあり今回は参加を見送った。
一方、筆者の地元である神奈川県で「川崎環境技術展」が行われているということで、こちらのイベントに足を運んでみた。
川崎環境技術展には何年か前にも一度訪れたことがあるのだが、筆者の記憶が確かならばその時とは開催場所が変わっており、今回は「川崎市スポーツ・文化総合センター」(「カルッツかわさき」)という施設での開催となっていた。
また、会場で配布された資料や公式ツイッターを見ると、新型コロナの感染拡大のため今回は3年ぶりの開催ということである:
第15回川崎国際環境技術展を
カルッツかわさきで開催します!
環境関連の企業や団体が多数出展し、
多彩な講演を実施します。
皆様、ぜひご来場ください!— 【第15回】川崎国際環境技術展 (@ecotechfair) October 16, 2022
(【第15回】川崎国際環境技術展・公式ツイッター)
政令指定都市とはいえ一地方自治体の主催による環境技術イベントということで、失礼ながらそれほど期待して訪れた訳ではなかった。
しかし、イベントとしての内容には興味深いものもあり、出展社の数や内容という点でも相応に見応えのある展示会だった。以下、かいつまんでご紹介しよう。
モーリー・ロバートソン、SDGsを説く
まず、今回のイベントの目玉と言えるのが、DJやコメンテーター等マルチタレントとしても著名な国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソン氏による講演である。
同氏は「海外のSDGsへの取組と、いま日本に必要な考え方」と題して45分に渡って興味深いお話を聞かせてくれた。
彼の主張を一言で表すと、「SDGsは個人や各企業がコツコツと地道に取り組むしかない」と極めて常識的なものだった。
ただ、その結論を支える材料としての各国の状況や歴史的な経緯などについての見識は、さすが東京大学やハーバード大学で学び、日米両国を熟知したロバートソン氏だけのことはあると感服した。
ちなみに同氏は広島で育った時期がかなり長かったと知り、広島県で3基の発電所を運用している筆者として身近に思ったりもしたのである。
小粒ながらも多種多様な環境技術がブース出展
次に展示会場の方だが、環境技術ということで資源リサイクルや省エネルギー等に加えて太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギー関連の出展社ももちろんいた。
さすがに東京ビッグサイトで開催されるようなイベントの規模には及ばないものの、中小企業から著名な大企業まで、また各地の地方自治体や政府系の外郭団体、JICAや海外関連の出典など多種多様な出展者がブース出展していた。
太陽光発電に関連した展示では、パネル掃除用の洗浄剤やリチウムイオン二次電池などが目を引いた。
パネル掃除については筆者としてそれほど注力しておらず、ほぼ雨まかせということもあり、説明だけは一応聞いたが、「検討させて下さい…」とお茶を濁してその場を後にした。
その他、目についたところでは、石油元売り大手の立ち位置から水素社会での主要プレーヤーへの転換を目指しているエネオスが大き目のブースを入口近くにデーンと構えていた。
また、神奈川トヨタ自動車は屋外に燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を展示し、車載の燃料電池スタックから家電機器へ給電が可能なこと(いわゆるV2H)をデモンストレーションしていた。
水素ステーションは一ヵ所あたり5億円かかるともいわれているため、燃料電池車や水素充填インフラが現在の自動車やガソリンスタンドと同じように全国の津々浦々まで普及するとは個人的に考えていない。
だが、エネオスとしては当然ながら化石燃料の次の手を考えておかなければ潰れてしまうため、先手先手でこういうビジョンを打ち出しているのは理解できる。また、トヨタもハイブリッド車の次にEVとFCVのどちらが来ても良いように、ということだろう。
(トヨタはどちらかと言えば、EVよりFCVを普及させたいはずだが、上述の理由からバスやトラックといった業務用車両以外の分野ではFCVの将来にはあまり期待していない。)
COP27やG20と同時期の開催に感じた「シンクロニシティ」
環境技術全般ということで、PV EXPOのような太陽光発電に特化したイベントではないため、ある意味で総花的になってしまうのは仕方ないところではある。
とはいえ、2050年までのカーボンニュートラル化実現を国が目標として掲げていることもあり、そういった方向性を講演や展示からもしっかりと確認できたような感じとでも言えるだろうか。
おりしも、エジプトのシャルムシェイクでは「COP27」(国連気候変動枠組み条約 第27回締約国会議)が今日まで開催されていた(注:交渉が難航しており、19日まで会期が延長されているらしい)。
また、インドネシアのバリ島で16日まで開催されていた20カ国・地域首脳会議(G20)では、石炭火力発電の段階的な縮小を加速することで地球温暖化を1.5℃以内に抑える取り組みを追求することで一致、閉幕した。
川崎市が地元で執り行う展示会の開催時期をこれらの国際会議イベントと同期して開催したという訳ではなく単に偶然の一致だとは思うが、「シンクロニシティ(共時性)」とでも言おうか、そのような不思議さをなんとなく感じた訳である。
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