(「「電力システム改革」という共同幻想」の続き)
資源エネルギー庁の「エネルギーミックス」案
先のセミナーの内容に沿って、日本の再生可能エネルギーについて復習しておきたいが、その前にまず最近、資源エネルギー庁が公表したエネルギーミックスとその中での再生可能エネルギーの位置づけをご紹介しよう。
これについては、既に様々な所から反響もあり、ご存知の方も多いかと思う。
まずは、以下の図をご覧頂きたい:
出典:資源エネルギー庁「長期エネルギー需給見通し 関連資料 p.67」(平成27年6月)
電力の需給と電源構成を示したのが上図だが、このエネルギーミックス案にはいろいろと矛盾や突っ込み所が満載なのだ。
まず、電力需要について、2013年度から2030年度まで経済成長率が年に平均1.3%で推移という前提。GDPの年率が2%弱というのは、まぁまぁの前提だが、戦後の高度成長でもあるまいに、十数年もずっとこの安定した経済成長が続くというのは、少々無理があるように思う。
現時点でも、格差拡大やデフレ、増税(所得税や消費税のような直接の税金だけでなく、健康保険や年金といった税金に準ずる社会保障費も相当にアップしていることも含まれる)、雇用の先行き不安などのさまざまな要因から、日本経済はほとんど成長していない。
つい最近も5月の消費支出が前年比+4.8%で14ヶ月ぶり増加に転じたと報じられていたが、この消費支出には消費税が含まれている。つまり、実質的には、増税分(8%-5%=3%)を引くと、正味の消費支出増加はわずか+1.8%である。
また、そもそも昨年5月は消費税が8%に増税された後まだ消費が落ち込んでいた時期であり、その頃と現在とを比較すれば、2%前後の消費支出の増加は誤差の範囲内と考えられなくもない。つまり、この消費支出の報道は、あたかも景気が回復していると見せかけたいための「大本営発表」にすぎないのでは、というのが筆者の個人的な見方だ。
原発再稼働と石炭火力ありきの電源構成
前置きが長くなった。ともかく、国民や産業界の「徹底した省エネ」によって(苦笑ww)、電力の需要サイドは2013年度と同じレベルに維持できるという点には納得できる。
次に、供給サイドの電源構成。問題が多いのはもちろんこちら側だ。
需要側の省エネ17%を前提として、「再エネ24%」は実質的には20%である。現在でも大型水力が10%ほどあるので、それを除くと再エネの2030年度までの伸びは実質的に10%も無いことになる。
しかも、内訳をみると、太陽光の7%とバイオマスの4%程度はまぁ良いとして、欧米などでは低コストで普及が加速している風力が1.7%、それに我が国が世界で第3位のポテンシャルを有する地熱も1.0~1.1%とごくわずかしか算入されていない。
「資エネ庁、本当に再エネやる気あるのか?(# ゚Д゚)ゴルァ!!」という感じなのだ。
ご存じの通り、このエネルギーミックスでは、2015年6月現在の時点で一基も稼働していない原発を20~22%再稼働させるという前提がある。つまり、「原発再稼働ありき」で、再エネは二の次という話になっていることが明らかなのだ。
また、火力をみても天然ガスの22%または27%に加えて、化石燃料では温暖化ガス排出量が最も多い石炭が依然として22%または26%も残るのである。
東日本大震災が勃発した直後は、「電気が足りない!」と石炭火力の比率が上がったのはやむを得ない面もあったが、あれから既に4年以上も経つ。
そろそろ、より環境負荷の低い電源への転換が図られなければならないのだが、環境先進国の自負がある我が国で、発展途上国や新興国での採用が多い(しかも、欧米では地球温暖化や大気汚染の元凶、と言われ評判がメチャ悪い)石炭火力がまだ十何年も後にこんなにたくさん温存されるのは、一体なぜなのだろうか。
資エネ庁や事業者側の言い分としては、石炭火力といっても最新技術を活用した高効率の次世代石炭火力で云々…といった声が聞こえてきそうだ。筆者もIGCCやIGFCといった新しい、より環境負荷の低い石炭火力発電技術があることくらいは知っている。
だが、天然ガス火力や太陽光発電と比べてコスト競争力があるのか、かなり疑問なのである。
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(続く)
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