テスラモーターズがPV Japanに出展する狙いとは
太陽光発電業界の主要イベントの一つ「PV Japan」が今年も今月末に開催される。
ということで、太陽光発電協会(JPEA)の「PV Japan 2015」公式サイトでボチボチ取材のための予習をしているところなのだが、注目の企業が一社出展予定であることを本日知った:
そう、高級スポーツセダン型の電気自動車(EV)「テスラ モデルS(Tesla Model S)」が好調なテスラモーターズだ。
といっても、PV Japanは太陽光発電のイベント、テスラが出展するのも、EVの展示が目的では当然ない(来場者の目を引くために、モデルSも展示する可能性は当然あるが)。
本ブログの常連読者の方なら言わずもがなだろうが、テスラがPV Japanに出展する目的はただ一つ、恐らく定置型蓄電池「テスラ パワーウォール(Tesla Powerwall)」を日本でお披露目するため、そして日本での発売に先立って見込み顧客を獲得するためだろう。
(よって、本記事のタイトルにはパワーウォール発表時に同時に発表となっていた「テスラエナジー」という名前を使っている。今後、テスラエナジーが本体のテスラモーターズから分社したりするのかどうかは不明。)
定置型蓄電池の価格破壊、「テスラ パワーウォール」
テスラ・パワーウォールについては、産業用太陽光発電事業を行っている方であれば、説明の必要もあまり無いと思われるが、米国での販売価格が3000ドル(7kWh)または3500ドル(10kWh)と、これまでのリチウムイオン電池による定置型蓄電池製品に比べると激安と言ってもよい価格破壊をもたらす製品である(価格は蓄電池パックのみで、インバーターや設置工事費は別途必要)。
kWhあたり4万円前後と定置型蓄電池としてはあまりに衝撃的な低価格(現在の相場の半額~1/4程度)から、販売予定が発表済みの米国では購入希望者が殺到、予約受付を開始してからわずか1週間で来(2016)年の中頃までに製造・出荷可能な数量のパワーウォールが売り切れてしまったという。
同社が製品を販売する際には、最初に市販したスポーツカー型EVの「テスラ ロードスター」の時も、そして現在の主力製品であるモデルSのときもだが、こういった熱狂的な顧客によって予約が殺到したり、何か月も先まで受注が入っていて納品まで待たされたり…といった話が付いてまわる。
今回のパワーウォールについても同様な展開となっている。なにしろ、これまでの常識を覆す価格設定だったこともあり無理もないとはいえ、こういった話題性から、テスラモーターズの会長兼最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏に対しては、「教祖(cult leader)」などといった形容までされる有り様w。
とは言え、戦略的な製品の市場投入もさることながら、恐らく確信犯的にこういった話題作りも狙って仕掛けているのだろう。そうすれば、広告宣伝費を一切使わなくてもニュースとしてメディアが勝手に報じるし、顧客によるクチコミやネット上でのSNSなどでバイラル・マーケティングが成り立つからだ。
イーロン・マスクCEOのサプライズ記者発表も?
現時点では、PV Japan 2015の出展社情報を見ても社名(テスラモーターズジャパン)とブースの場所(小間番号:P2-318)だけしか掲載されておらず、それ以外の情報が一切ない。このため、この記事に書いたことがほぼ全部外れる可能性すらあるのだが、これまでのテスラ社による事業展開の経緯からは、当たらずとも遠からずではないかと考えている。
現時点ではあくまでも憶測の域を出ないことだが、わざわざ今回のPV Japanに出展しパワーウォールのお披露目をする目的として、日本国内での出荷計画などをサプライズとして発表する可能性もある。もしかしたら、マスクCEOご自身が久々に来日して記者発表まで行うかもしれない。
テスラ社として、EVの販売だけにとどまらずエネルギー関連事業に打って出る、それも米国だけでなく日本にも進出するということは、当然我が国の電力業界の構造や課題、現在制度設計中の電力自由化のことまで調べ尽くしていると思われる。
そのうえで、2016年に「完全に電力自由化w」された我が国の市場にマイクログリッド、さらにはオフグリッド用途のための定置型蓄電池を戦略的な価格設定で出せば絶対に売れると計算ずくで打って出てくるのではないだろうか。
トヨタ自動車の豊田章男社長に「マスクちゃん」という愛称で呼ばれる、イーロン・マスクという類い稀な起業家は「大博打」が得意だが、その裏では念入りに精緻な計算をし、したたかな事業戦略を練っているはずだ。
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