(そういえば3本バスバー電極ってどうなったの?」の続き)
太陽光発電モジュールで3本バスバー電極からの脱却というトレンドがあったように、パワコン(PCS)にも今回明らかな技術トレンドが見て取れた。それは次世代パワー半導体素子の採用である。
ここで言う次世代パワー半導体素子とは、材料としてシリコン(Si)より高効率または高速に動作が可能な炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等の化合物半導体を用いたものだ。技術的な詳細はここでは割愛させて頂くが、例えばSiCで製造したパワートランジスタやパワーダイオードはSiのそれと比較して損失が大幅に少なく、かつ高温の環境下での動作が可能となる。
このため、太陽光発電のパワコンにSiCで作ったパワー素子を採用することで、変換効率を高くすることが可能(=売電収益が増加)になり、また冷却ファンが不要となり小型化・軽量化も可能となるなど、様々なメリットが享受できる訳だ。
ちなみに、SiCパワー半導体は、ハイブリッド車や電気自動車などのインバータでも同様に採用が期待されており、燃費の向上や車体軽量化に貢献することになる(なので、トヨタ自動車や本田技術研究所もSiCパワー半導体の研究開発に力を入れている。)
オムロンはオールSiC素子の次世代パワコンを参考出品
まずは、筆者のプチソーラーでもお世話になっているオムロンの展示ブース。
太陽光発電ムラ仲間の皆さんにもお馴染みの「KP55M」はブースの内側につつましく展示してあり、今回のオムロンさんの目玉の一つはSiC素子フル搭載の次世代パワコン:
出力が5.5kWという以外の詳細スペックを聞きそびれたのだが、「参考出品」ということであまり詳しい情報開示はなさそうである。(日経BPの「メガソーラービジネス」でもスペック詳細が無かったので、詳細は非公開であることは確からしい。)
安川電機はGaNパワー素子採用のパワコンを出展
ついで、我々プチソーラー事業者間ではまだそれほど親しみ深くない感じなのだが、安川電機も負けずに次世代パワコンを出展していた:
こちらは、SiCではなくGaNをパワー素子に採用ということで、SiCでないのは珍しいなと感じたのだが、GaNの方が高速スイッチング可能な特性を重視した結果だそうである。
スペックは出力4.5kW、200V単相。最大効率98%で設置面積が従来モデル比で1/2。
外寸:幅380mm×高さ225mm×奥行140mm、重量:11kg。GaNパワー素子は米Transphorm社製を採用したもの。
(ちなみに、三菱電機もフルSiCパワコンを展示していたようだが、筆者は変換効率が100%でもこの会社のパワコンを採用するつもりが全然ないので、ここでは割愛させて頂く。理由は本ブログの読者の方なら多分お分かりだと思うので、それも省略。)
いずれも変換効率が98%前後とかなり高い。しかも、今回のPV Japan 2014で参考出品ながらも低圧連係向けのフルSiC/GaN採用パワコンが出てきた。
ということは、もう5年も掛からず2015年以降には市場投入や採用も始まると見られる(以前に本ブログでSiCパワコンに関して触れた際に低圧連系で普及し始めるのは5年後くらいかと勝手に予測していたのだが)。
いずれにしても、この技術トレンドは嬉しい誤算であり、フルSiC/GaN搭載のパワコンが家庭やプチソーラーでも使える日が待ち遠しい今日この頃である。
(続く)
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