オフグリッド・スマートハウスとSolar Impulseの共通点とは

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(「50kW太陽光発電所で世界一周」の続き)

ソーラーインパルス2(Solar Impulse 2: Si2)の技術的なハイライトのもう一つ、蓄電池について触れておきたい。
ソーラーインパルス(@名古屋飛行場)

系統網に連系する一般の太陽光発電では、太陽光の出力変動を需要家側の変動とともに系統側の需給調整によって吸収している(同時同量の原則)。

したがって、現状の発電事業者は晴れたり曇ったり、あるいは雨が降ったりしても、特に何かする必要はない。(ある意味、出力の調整を一般電気事業者側に丸投げしていると言ってもよい。蓄電池や出力抑制など、この辺の議論は、また改めて取り扱いたい。)

しかし、化石燃料の一滴も蓄電池も使わずソーラーパネルだけで飛行機を飛ばそうとしたら、どうなるか。

これは想像しただけでも、ちょっと恐ろしい。もちろん、いったん雲の上にさえ出てしまえば、常に太陽光で発電は可能となる訳だが、上空に出るまでの間の天候次第というのは不安定すぎて危険性が高そうだ。

またソーラーインパルス・プロジェクトのように世界一周を行うとなると、太平洋や大西洋といった大洋を超えるためには、何日間も昼夜を通して飛行を続けなければならないので、夜間にも飛び続けるためには、蓄電池は絶対に必要となる訳だ。

Si2の場合、韓国Kokam製のリチウムポリマー電池(リチウムイオン電池の一種)を採用している。スペックが断片的なのだが、Solar Impulseプロジェクトの資料やWikipediaによると、エネルギー密度が260Wh/kg、電池の総重量が633kgということなので、電池の容量は、260Wh/kg×633kg=164,580Wh≒164.6kWh。

日産自動車の電気自動車「リーフ」のリチウムイオン電池が24kWhなので、Si2の電池の容量は164.6kWh÷24kWh≒6.86、つまりリーフ7台分弱ということになる。

先の記事で書いたように太陽電池の総出力は66kW。この太陽光パネルの出力に対する蓄電池の電力量165kWhは、一晩中4基のプロペラ(最高出力13kW×4=52kW)で巡航を続けても蓄電池の残量がゼロにならず、少なくとも10~20%程度は余るように設計されていると思われる。

ソーラーインパルス2のプロペラ(出力13kW)

クルマが最もガソリンを消費するのは発進時であるのと同様に、飛行機も恐らく離陸時にエネルギーを最も消費するはずだ。いったん一定の速度による巡航モードになればプロペラの推進力もピークの52kWは不要、恐らく半分以下の出力でプロペラを回して飛び続けるのだろう。

ちなみに、ソーラーインパルスはいったん離陸したあと、同じ高度で飛び続ける訳ではなく、8500m~12000mの間を状況に応じて上昇したり下降したりするそうだ。特に、太陽が出ている日中は高度を上げ、日没後は電力消費を抑えるために高度を下げるという(下図)。

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(出典:Solar Impulse)

発電できない夜間にも節電しつつ蓄電池の電気で飛行を続け、日がまた昇れば太陽電池が発電を開始する。太陽が出ている間は発電したフレッシュな電気でプロペラを駆動しつつ、余った電力(66kW-52kW=14kW)を蓄電池に貯めてまた夜間の飛行に備えるという訳だ。

こういった電気の使い方は、ある意味でソーラーパネルと蓄電池を装備したオフグリッドのスマートハウスと似ている。

もちろん、地上のオフグリッド・スマートハウスの場合、太陽光パネルはさすがに低圧連系の発電所ほど必要ない。最低なら3kW、多くても10kWもあれば一般的には十分である。

また家で夜間に使う電気は寝るまでの間となるため比較的少量だろうし、もし電気が足りなくなっても家電が使えなくなるだけで命に別状はないので、蓄電池ももっと少ない容量、恐らく12~24kWh(つまりi-MiEVやリーフ1台分)もあれば足りるだろう。

ソーラーインパルス(Si2)の場合、一般的な飛行機に比べれば軽いとはいえ機体の総重量は2.3トン、一般的な自動車の2台分はある。この重さでも主翼で揚力を発生させるだけのパワー、そして夜間でも巡航が可能なだけのエネルギーを維持するために、66kWの太陽電池と165kWhのバッテリーが必要なのである。

ソーラーインパルス2(Si2)
(出典:Solar Impulse)

(続く)

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