オフグリッドと市民発電にみる電力自由化の希望と失望

本日はNPO法人「みたか市民共同発電」さん主催のセミナーに参加してきたので、それについて取り急ぎレポートしたい。

このセミナー・イベント、タイトルは、「講演会 “あの”佐藤千佳さんに聞く『電力完全自給生活』&市民発電説明会」となっており、内容的には週刊誌「女性自身」でも紹介され、いまやオフグリッドの太陽光発電では非常に著名になられた佐藤さんの講演、それにNPOみたか市民共同発電さんによる市民発電やPV-Netさんによる地球温暖化の講演とほぼ三本立ての構成。
講演会 “あの”佐藤千佳さんに聞く『電力完全自給生活』&市民発電説明会

オフグリッドでおカネより命を選択

まず佐藤千佳さんのオフグリッドの講演。

佐藤千佳さん

オフグリッド太陽光発電を実践されている佐藤千佳さん

筆者は少し遅刻してしまったので前半の部分をかなり聞き逃してしまったのだが、佐藤さん宅のオフグリッド太陽光発電とその暮らしぶりについては、ご自身のブログと共に既にネットメディアや上述のような紙メディアも含めかなりの情報が出ていることもあり、改めて整理したいと思う。

後半はどちらかと言えばオフグリッド太陽光発電から、電気以外のオフグリッド、ソーラークッカーや自給自足の価値観といった部分の話が中心だったのだが、それだけでも拝聴する価値はあったと感じた。

例えば、佐藤さん宅では太陽光による電気の自給自足だけでなく家庭菜園で野菜も自給自足されているそうで、一代限りで終わるF1種ではなく、種子がきちんと出来る固定種の種を入手されて、野菜を栽培されているそうだ。

すると、佐藤さんご夫妻だけでは食べきれないほど野菜が取れるとのことで、自分で育てて安心して食べられる野菜を近所の方にもおすそ分けしたりなどされるという。

3.11を契機に暮らしやライフスタイルを見直し、オフグリッドに舵を切っておカネよりも命を選択した佐藤さんご夫妻のような決断は、確かに誰にでも簡単に真似できるものではないと思う。しかし、集合住宅でもベランダにソーラーパネルをおけば、部分的にオフグリッドになるし、出来ることから始めれば良いのではというご提案には筆者も賛成である。

電力の自給自足から食料の自給自足にまで暮らしぶりが代わり、オフグリッドをきっかけにこれまでの「奪い合う社会」から「分け合う(分かち合う)社会」に変えられるという佐藤さんのお話には大いに共感するものがあった。

オフグリッド太陽光発電に関しても、いろいろと知見があったのだが、この辺はやはりできれば実際に現地を取材させて頂いてから、改めて筆者なりの考えも加えてご紹介したいと考えている。

トリナソーラー28.56kWで市民発電事業を立ち上げ

ついで、NPOみたか市民共同発電・代表理事の大泉麻耶さんから同NPOによる市民発電事業のご紹介があった。

市民発電に関しては、筆者として以前、小田原の市民ファンドによる太陽光発電事業の説明を聞いたことがあるが、それと比較すると今回の方がより草の根的で、市民参加による手作りのエネルギー地産地消というように感じた。

まず、太陽光発電の規模である。小田原では小田原市が保有していたかなり広い遊休地を利用してメガソーラーを建築と言う話だったが、みたか市民共同発電さんでは、28.56kWの低圧連系プチソーラーを屋根借りの形で設置する計画である。

太陽光発電モジュールとしては、トリナソーラーの255Wを112枚使用(255×112=28560)する予定で、これは太陽光発電の施工・設置を依頼されるEPC業者さんの評判なども参考に決めたという。トリナソーラーであれば、価格的にも低コストで抑えられるだろうし、中国製の太陽光パネルメーカーながら品質面では比較的安心できそうだ。

ちなみに、今回の市民発電事業では、三鷹と武蔵野の二つのNPOが共同で行う事業として合同会社「むさしのみたか市民エネルギー合同会社」を設立されたそうである。

太陽光発電をやりたいが集合住宅に住んでいるので…という人にとっては、筆者らのように野立てで全部やるという選択肢の他に、もちろん出資者として部分的に太陽光発電事業に参加する市民発電と言うやり方がもっと普及してよい。

武蔵野・三鷹やその周辺にお住まいで興味のある方は、出資を是非ご検討されればと思う。

PV-Net田中氏(左)とみたか市民共同発電の大泉さん

PV-Net田中氏(左)とみたか市民共同発電の大泉氏

地球温暖化対策としての市民発電

本セミナーの最後に、PV-Netの田中氏から、地球温暖化についての講演があった。
田中氏はご自宅に太陽光発電システムと太陽熱温水器も導入されており、ゼロエネルギーどころか、プラスエネルギー住宅での暮らしを実践中ながら、それでは足りないとのことでPV-Netで精力的に活動されているという。

順番的には、地球温暖化の話が一番最初では…という気もしたが、われわれがなぜ今、太陽光発電を始めとした再生可能エネルギーに取り組むかという点では、地球温暖化やそれに伴う気候変動の知識は常識として不可欠ではあろう。

田中氏のプレゼンでは、2050年、2100年にもし現在と同レベルの温暖化ガス排出が続けばどのような影響があるかということを復習するうえで役に立った。

2100年に4.5℃気温が上昇すると、70m海面が上昇し(南極の氷が全部溶けた場合。グリーンランドだけなら+7m)、首都圏でも多くの場所が水没してしまう可能性があるというシミュレーションはショッキングすぎてあまり現実味が感じられないかもしれないが、そうならないという保証はないのである。

本当の所、筆者として地球温暖化は詐欺だとか、陰謀だとか、そういった話があることも知っており、田中氏の講演を聞きながらも、地球温暖化詐欺説や陰謀論も脳裏でチラチラとしていた。しかし、仮にそうだったとしても、地球上の人類が欧米や日本のように資源を多消費するライフスタイルが今後100年、200年ずっと持続可能かと聞かれたら、筆者は自身を持って「イエス」とは答えられない。

クルマも火力発電所も人間が地球上で進化する過程で生み出さなければ、存在しなかったものなのである。そういった人為的なものを造り続け、使い続ける結末に何が待っているのか、実際にその結末を見てから対応するのでは恐らく遅すぎる、だから今のうちに可能な対策を講じておくべき、というのが筆者の考えだ。

ニセの電力自由化後、あきらめずに続けられるか

最後に質疑応答が行われたのだが、その中で印象的なやり取りがあった。ある比較的年齢層が高い女性から、次のような質問が出たのである:

市民発電に関心はあるが、(既存の)電力会社には電気を売りたくないんです。どうにか出来ないんですか?

この質問が、佐藤さんのオフグリッド、そして今回の市民発電などのモチベーションのトレンドを集約しているのではないかと思う。筆者もこの質問者の女性の方と同様に考えているが、どうにもならずその憤懣やるかたなさから、電気代をコンビニ払いに変えたり、脱原発デモに参加したり(最近は抗議デモへの活動はほとんどなし)、太陽光発電事業を始めたり、といった経緯があるからだ。

ここではどの電力会社か明記しないが、首都圏を管轄とする地域独占の電力会社と言えばお分かりだろう。この会社は、オフグリッドや市民電力に関心のある方にとっては、今や目の敵だ。まぁ原発事故の責任もロクに取らない究極のモラルハザード企業が電気作って売ってるんだから、仕方ないだろう。

質問に対しては、PV-Netの田中氏が来年の電力自由化以降は、好きな電力会社と売買できるようになるとの旨のご説明をされていた。これは半分正解だが、本ブログで指摘しているように「悪代官」と「越後屋」による電力自由化骨抜き工作が行われた結果、我が国で真の電力自由化と言える状態は恐らく今後5年間は無さそうである。

電力業界の「悪代官」と「越後屋」による"新電力潰し"と"再エネ潰し"とは
電力システム改革の課題と可能性・・・? (「太陽光発電パネルは経年劣化する」の続き)CELCの発電データ報告会のあと行われたセミナ...

竹村英明氏のブログタイトルのように「あきらめない」ことが今後最も大切かもしれない。

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コメント

  1. PV-Net 田中 より:

    PV-Netの田中です。
    本日はみたか発電の講演会にご参加頂きましてありがとうございました。
    アンケートに書いて頂いていたURLからこちらを拝見いたしました。
    早速、報告記事を掲載いただき、ありがとうございます。

    記事中、1点だけ、修正をお願いしたい点がございます。
    海面上昇は、グリーンランドの氷が全部溶けたら+7m、南極も全部とけたら+70mですが、講演では、「グリーンランドの氷が全部溶けるまでには1000年以上かかると言われている(が、あと数十年で完全溶融を止められなくなる可能性がある)」のようにお話しさせて頂いたと思います。
    配布資料をごく一部しかお渡しできませんでしたので、正しくお伝えできなかったものと思われます。ご容赦願います。
    ちなみに2100年の海面上昇は、ご存じかと思いますが、IPCC報告では1m未満、最新の悲観的研究でも2~3m、といったところです。
    それでもバングラディシュ等では生活の根本基盤を失う人が相当出ると思われますが。

    今後も、各地の市民発電を応援頂ければと思います。

    • Bigfield より:

      田中様、

      コメント下さり、どうもありがとうございます。
      海面上昇に関する不正確な部分の方、大変失礼致しました。
      本文の方を修正致しました。結構、アバウトな性格なもので、すみません。

      こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。