「電力システム改革」という共同幻想

(「電力業界の「悪代官」と「越後屋」による”新電力潰し”と”再エネ潰し”とは」の続き)

電力自由化と電力システム改革に関するセミナー

まず、「電力システム改革」について、セミナーでもふれられたようにおさらいしておこう。

このブログの読者の皆さんは、太陽光発電を既に手掛けられている方も多いと思うので、該当する方はご存じの箇所をサラッと流し読みして頂ければ幸いである。

電力システム改革とは、既存の大手電力会社10社による地域独占の体制を見直し、自由な競争や電力事業者の選択の自由を導入することである。ポイントは次の3つ:

  1. 電力自由化
  2. 発送電分離
  3. 大規模集中型→小規模分散型

1. 電力自由化

誰でも自由に電気の小売りを行うことを認める。2015年6月の現時点では、まだ電力の小売りを自由に行うことはできない。例えば、筆者が誰かに電力を10kWh売るという行為は違法(電気事業法に違反)となる。これが、2016年4月以降は、合法になる訳だ。

なお、一般家庭ではなく、50kW以上の高圧でいわゆる卸電力取引の分野は既に自由化されており、PPS(特定規模電気事業者、または新電力会社)として経済産業省に届け出ていれば、電力の売買を行うことが可能である。

高圧の分野で最近は珍しくなくなっているのが、マンションなどでの一括受電の動き。

これは、従来だとマンションなどの集合住宅で各戸がバラバラに電力会社と契約していたものを、管理組合がとりまとめて卸電力業者がマンションに高圧で一括して受電、それを各戸にばら売り、配電するという形態。

こうすると、高圧受電自体は当然高いのだが、個別に契約したものを戸数分集めるよりは一括で高圧で受電し、それをばら売りする方が、個別の電力料金は安くなるのである。
このため、中央電力のような会社がそれに目を付けて、マンションなどの一括受電をビジネスとして手掛け、急成長したと言う例が良く知られている。

話が少し逸れたが、ともかく来年4月以降になれば、今は違法な50kW未満の低圧の電力の小売りや取引が自由になることが電気事業法の改正によって既に決まっている。

2. 発送電分離

発送電分離とは、発電、送電、配電を地域独占の電力会社から分離独立させることである。
念のために送電と配電の違いは、送電は文字通り電線を介して電気を送ること。配電は電柱から引込線を伸ばして需要家(顧客、消費者)に電気を配ること。

小売りの電力自由化とともにこれも極めて重要なのだが、実はこれが今回の電力システム改革では不十分なままとなることが既に分かっている。

どういう事かと言えば、発電そして、配電の先の小売りは確かに分離されるのだが、送電と配電は現在の一般電気事業者が所有するままなのだ。一方で、日本全国の送電網を一括して管理運営する中立公正な組織として、「電力広域的運営推進機関」(簡単に、広域機関)がこの4月から発足している。

本来なら、この広域機関が大手十社から送電網の所有権を譲り受けるべきなのだが、そうならならないまま「電力システム改革」を進めることが規定路線となっている。

発電の部分が分離されるだけでも確かに前進ではあるのだが、後に述べる託送料金などの話もあり、やはり送電と配電は分離すべきだった。ここを中途半端に非分離のままとしてしまうと、広域機関の監督権限が中途半端になってしまう懸念が大いにある。

3. 大規模集中型→小規模分散型

従来はどのような発電方式であれ遠くに巨大な発電所を作り、そこから高圧の送電線を経由して街や人のいる場所に電気を送るというやり方で来ている。

この電力網の仕組みは、1880年代後半にニコラ・テスラ(今をときめくテスラモーターズの社名の元となった技術者)やジョージ・ウェスティングハウスが考案した交流送電の方式と基本的には同じ。

しかし、太陽光発電システムや燃料電池などが進歩して電力を使うすぐ近くで発電を行うことが可能となりつつあり、従来型のやり方よりも小規模な分散電源をあちこちに数多く持たせる方が損失が減らせ、災害など有事の場合にも有利という利点があることなどから、現在では小規模分散型へと移行する流れが顕在化しつつあると言える。

ただ問題は、従来型のシステムが崩れると、それによって成り立っていた既存の電力業者は事業が成立しなくなってしまう。何しろ、莫大な資本を投下して建築した原子力発電所や水力発電所、火力発電所、何十キロにもおよび送電網、あちこちに配置した変電所…そういった電力インフラの多くが無用の長物と化してしまう恐れすらある。

電気は○○電力から買わなくても自分で作ったり、他の新電力から買ったりすることが出来るようになる。だが、それは従来型の○○電力にとって「商売上がったり」を意味することになり、非常に迷惑な話なのである。

したがって、表面的には平静を装っていると思われるが、水面下ではこういった流れに激しく抵抗しているはずで、昨日の記事に書いたような密約のようなことが「悪代官」と取り交わされていたんじゃないかと思われる訳だ。

なお、3の大規模集中から小規模分散への変化は、電気通信やコンピュータで起こったこととも良く似ている。

例えば、1970~1980年位までは、コンピュータと言えば、IBMや富士通、NECといったメーカーの大型汎用機(メインフレーム)が中心で、一般の消費者には縁遠いものだった。

それが現在ではノートパソコンどころか、スマートフォンやタブレット端末といった形で個人が一人で複数の小型コンピュータを所有することが珍しくもなんともなくなった。

なので、筆者から見ると、電気通信やコンピュータで起こった変化と同じような変化がエネルギーの分野でも起きると考えている。その理由は、上述したように、小規模分散型の方が便利で効率が良く(損失が少ない)、災害などにも強いからである。

唯一のハードルは導入時のコストだが、太陽電池は日進月歩で低コスト化が進んでいる。蓄電池の方もテスラモーターズが仕掛けた蓄電池を筆頭に、低コスト化が急速に進む動きとなってきているのだ。

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タイトル作成:Thanks to Hotentry Maker.
(続く)

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