バンク逆潮流と対策としての送電容量増強工事

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PV Japan 2014
(「力率調整は一律90%へ」の続き)

太陽光発電の急増で頻発するバンク逆潮流とは

系統連系関連サブトピックの二つ目はバンク逆潮流。バンク逆潮流も固定価格買取制度が施行されて各地でメガソーラーが雨後の竹の子のように増えてから耳にすることが多くなった。太陽光発電が激増するまでは、この現象はほとんど発生していなかったので問題にもなっていなかった。

このバンク逆潮流、念のために説明しておくと、簡単に言えば、変電所を超えて逆潮流、つまり系統網を太陽光などで出来た電気が変電所を超えて下流から上流(本来と逆方向)に流れると言う現象。

電気事業法(だったかな?)などの規制によって、このバンク逆潮流と言う現象は発生することが制度的に認められていなかったのだが、太陽光発電の激増によって不可避となったため、系統網の増強を行うことを前提条件に、2013年5月にこの規制が緩和されたのである。

したがって、現在では太陽光発電所の増加によってバンク逆潮流が起こる地域でも変電所の改修工事によって系統網の容量を増強すれば、バンク逆潮流自体は問題ではなくなった。

新たな問題は、その変電所改修工事の待ち時間である。
あちこちでバンク逆潮流が発生しているため、改修工事待ちが慢性化している状態だ。
その結果、待ち時間が12ヶ月とか15ヶ月なんていう事態がザラに起こるようになってしまっているというのだ。

電圧フリッカーにも注意

そして最後の問題が、電圧フリッカー

このフリッカー(flicker)という言葉の意味は「ちらつき」である。
イメージとしては、古くなった蛍光灯を思い浮かべて頂ければ良い。

電力の系統網でいうフリッカーは電圧のちらつき(ノイズ)であり、これは微小な無効電力の変動がその要因となっている可能性があるとのことだ。これが発生すると、住宅や事業所で照明や電動機などの電気機器が影響を受けたりするということなのだろう。

フリッカーに関しては、太陽光発電所側のパワコンの設定などでもある程度回避が出来るらしい。また、接続協議でも最近はフリッカー対策の有無に電力会社側が言及することも増えたそうである。

バンク逆潮流対策として系統網・送電線の容量増強が急務に

以上、三つの問題が太陽光発電の急激な増加によって発生しているため、その対策を取ることが必要になっている。ちなみに、このセミナーでも九州電力の送電容量が厳しい状況になっていることに言及していた。

バンク逆潮流対策として系統網・送電線の容量増強が必要となる訳だが、それには当然おカネが掛かる。電力会社側は、再生可能エネルギーの増加によって必要となる設備や工事の費用を容赦なく発電事業者側に転嫁してくる(制度的に認められているからだが)。

従来の制度では、正に「早い者勝ち」と言う感じで、送電容量に余裕があるうちに先に系統連系してしまっていれば、力率調整だとか、出力抑制、バンク逆潮流など、心配は無用、後から連系する事業者がその心配をするという構図だった。

運悪く、バンク逆潮流対策の工事費用を負担、正確に言えば3年間分を他の事業者の分まで先に立替払いする事業者の費用負担が相当に高額になってしまい、それによってその地域の太陽光発電の設置が滞るという事態が起こるに至っている。

例えば、200,000kWの容量増加に20億円の改修工事が必要になったとする。

この場合、20億円÷200,000kW、つまりkW当たり1万円の費用をその20万kWの容量を使う発電事業者がそれぞれの発電出力に応じて按分して負担するのである。

3年間のうちに、立て替え払いを行った事業者にも払い戻しされるそうなのだが、やはり初期投資で何億円、何千万円もの送電容量増強工事費なんかを一時的なものとは言え一括して全額負担させられるのは痛い。

工事負担金の公平な分担のために入札制度も

そこで、この送電容量の増強費用を入札にかけるということを東京電力が試験的に行ったのである:

東京電力、送電線増強の負担金を巡り、全国初の入札制度を実施、群馬県北部が対象 – ニュース – メガソーラービジネス : 日経BP社

この入札が首尾よく成功裏に終わるようであれば、全国的にこのような仕組みで容量増強の費用按分が進む可能性もある。ただ、太陽光の買取価格が32円/kWhまで下落してしまったので、昨年度または一昨年度の買取価格(36円または40円/kWh)の残存案件などでなければ難しいかもしれない。

以上、最終日午後のメインステージでのセミナー「太陽光発電事業の適切な導入に向けて」で学んだ系統連系に関する留意点について記した。

これ以降、PV Japan 2014の展示フロアで見聞きしたことについて、「メガソーラービジネス」や「環境ビジネス」などマスコミでも既報の通りではあるのだが、筆者の感想や見解なども含めてお伝えしたい。
(続く)

コメント

  1. トリプルG より:

    いつも楽しく拝見させていただいております。
    ハンドルネーム トリプルGと申します。

     今回の記事の、一律90%力率制限いついてなのですが、下記(東電 お願文書ママ引用)を見る限り、力率制限の対象は、平成26年6月2日以降に、高圧太陽光発電による系統連系の申し込み(接続検討)をされる事業者が対象に読めるのですが、これが貴殿参加のセミナー講師いわく、既存の既に運用開始されているものについても同様に強制適用される内容に変化したという新たな情報なのでしょうか?
     
     URLのお願文からは、「お願い」との言葉通り、当該力率制限に対する対応は、事業者のPCSにて、設定を求める内容のようですので、一律かつ既に稼働中の設備まで、求められる対応ではないのではないでしょうか?
    (URL内のPDFにあるように、今までの対応として、既に高額な費用を払って逆潮流対策を自前で行った事業主(オーナー)などについては、その費用が無駄なってしまうというのも公平ではナイ気がします)

    引用元URLhttp://www.tepco.co.jp/e-rates/corporate/shin-ene/attention-j.html

    「上記URL内容一部抜粋」
    平成24年7月の「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」の施行から、特に高圧電線路への太陽光発電システム(以下、「高圧太陽光発電」といいます。)による系統連系が増加しており、高圧太陽光発電からの逆潮流によって系統電圧が法定電圧を逸脱し、対策が必要となる事例が散見されております。現在は、複数の連系によって法定電圧を逸脱する場合、一部の事業者さまに対策を実施していただいておりますが、更なる高圧太陽光発電の連系拡大を目指す中で、電圧対策に対する公平性へのニーズが高まっております。また、高圧太陽光発電による事業を、長年にわたり安定して営むためにも、周辺地域に与える電力品質上の影響を極力軽減いただくことが求められております。

    これらを踏まえ、平成26年6月2日以降に、高圧太陽光発電による系統連系の申し込み(接続検討)をされるお客さまにおかれましては、電圧対策に対する公平性の確保ならびに長年にわたる発電事業継続のための地域共生を目的として、パワーコンディショナー(PCS)の制御方式に力率一定制御(力率値90%※)を採用していただきますよう、お願いいたします。

  2. 蛇野 より:

    サニックスが業績見通しのリリースを出しています。
    売り上げ、利益とも下方修正です。
    理由は、連係工事の遅れによるとしています。
    今ある受注を消化した後は、新規が厳しいと思いますので、長期的には疑問があります。
    大きい会社ほど固定費等が掛かりますので、出口戦略をうまくやらないとドボンになります。

  3. bigfield より:

    トリプルG様、

    コメントおよびご愛読どうもありがとうございます。
    (お返事が遅れ失礼いたしました。ご容赦下さい)
     
    ご指摘の件、どうも当方の誤解か認識不足であり、貴殿のおっしゃるような適用が正しいようです。

    最近、太陽光発電ムラのメンバーの方が東電管内で系統連係を行ってもらったそうですが、力率90%といった制限は特に無かったとのことでした。

    “あやぱぱ”さんのブログ:
    http://ameblo.jp/minorisolar/entry-11905958818.html

    本文も適宜修正しておきたいと思います。
    大変失礼しましたが、これに懲りず今後ともよろしくお願いいたします。

  4. bigfield より:

    蛇野様、

    いつもコメントありがとうございます。
    サニックス社の件、初耳でしたが確認しておきたいと思います。

    確かに、EPCにとっては今の時期に張りすぎると、固定費掛かりすぎて後で潰れそうですね。
    欧米と違って日本では、少なくとも建前上は簡単に従業員を解雇できませんので。。