パナソニックの太陽光発電モジュール「HIT」の新製品、課題はコスパか

パナソニック「HIT」の最新版、何が変わったか

パナソニックが住宅用太陽光発電モジュール「HIT」シリーズの新製品を発表した。

パナソニック 太陽光発電モジュールの新製品  P250アルファ、他

(出典 パナソニック プレスリリース)

新しい太陽光発電モジュールの詳しい内容などについてはプレスリリースや各種ニュースサイトの記事等をご覧頂くとして、本ブログでは筆者なりの所見や分析を中心に記しておきたい。

まず、新しい太陽光発電モジュールの特徴は、次の三点である:

  1. 保証期間トップクラスの太陽電池モジュール 25年無償長期保証を実現
  2. 最上位機種(P250αPlus/P120αPlus)は当社独自の新工法「PS(プッシュ & スライド)工法」により、意匠性・施工性が大幅に向上
  3. 発電量トップクラスの基本性能をさらに向上し、従来品に比べて245Wに出力アップ(245αPlus)

1.の保証期間の延長は、同社も説明しているように製造工程の改善などで耐久性や信頼性を高めることができたために実現したのであり、それ自体はもちろん評価して良いだろう。

パナソニックP250アルファの保証期間

(出典 パナソニック プレスリリース)

ただ、日経BPテクノロジーonlineの記事などで指摘されているように、海外では25年の保証期間が既に標準的であり、グローバルな観点から評価する限りこの数字自体に目新しい点はあまりない。厳しい言い方をするなら、やっと国際標準に追いついたのか、ということになり、あまり威張るほどのことでもないとも言える。

2.の最上位機種における施工性の大幅な向上も、それ自体は評価されるべきものと言える。

現に、太陽光発電モジュールの設置や施工の効率改善に関しては、パナソニックだけでなく他のモジュールメーカーも最近活発に取り組んでいて、各社ともいかに施工時間の短縮が出来るかをウリ(=差異化ポイント)にしている。人件費の高さが工事費用を含む太陽光発電システム価格に跳ね返っている事実があるからだ。

今回のパナソニックの新製品では、12枚の太陽光モジュール(250Wなら3kW分)を屋根上に設置する場合に、5時間弱の施工時間を2時間50分弱へと40%以上短縮したという。単純計算なら、施工の工数原価が40%削減できるので、これがそのまま顧客に還元されれば施工費用も40%下がるというのは、朗報になるだろう(もっとも、そのまま還元することが可能なのか、筆者には良く分からないのだが…)。

意匠性とは要するに見た目のことで、住宅用の太陽光では確かに産業用より見た目が重要な要素なのだろうと思うが、率直に言えばそこまで顧客が皆気にしているのだろうかとも感じる。

パナソニック「HIT」P250αPlusは美観もさらに向上

(出典 パナソニック プレスリリース)

3.の発電量の改善も、もちろん悪い話ではない。ただ、従来品の出力は244Wだったということなので、ここで改善された差分はわずか1W。特徴の一つとして宣伝したい気持ちは理解できるが、やや大袈裟では…という気はする。

コスト・パフォーマンスに残る懸念

いろいろと細かい改善が行われ、発電性能や施工性、見た目の改善、保証期間延長が実現したというのは大変結構だが、やはり最も気になるのはコストパフォーマンス(費用対効果)だ。

ニュースリリースのデータを基に、W単価を算出した結果を次の表に示す:

品名P250α+P120α+245α+120α+285A240A
公称最大出力 [W]250120245120285240
変換効率 [%]19.518.119.118.118.518.7
希望小売価格 [円]173,00071,000145,00071,000154,000133,000
W単価 [円/W]692.0591.7591.8591.7540.4554.2

住宅用太陽光発電システムの購入を考えている方がこのW単価を見てどう思われるか、いまいち分からないのだが、産業用太陽光の感覚に慣れた筆者から見るとこの数字は論外である。

参考までに右側の2列(285A/240A)にパナソニックが公式ホームページに掲載している産業用太陽光の情報も追加してみた。W単価が住宅用よりはやや安いものの依然として高い結果となっている。単純な比較では、激安の産業用中華パネルなら10倍、品質が高いドイツ製ブランドや国産の他メーカーと比較しても恐らく4~5倍高い単価だ。

(つまり、パナのHITを1枚買う予算で激安の中国製パネルなら10枚買えるという計算ww)

もちろん、モジュールの価格は従来レベルの「希望小売価格」なので、実際には客が値切れば多少の値引きはあるのだろうと想像する。ただ、スタートラインがこの数字では、値切ったとしても相当に高いレベルに留まるだろう。工事業者から見積りを実際に取る時にも、ソーラーパネルの卸売単価が相当に高いところからの話となることは確かだ。

「HIT」による高い発電性能や25年の保証に裏付けられた高い耐久性などを考慮すれば、それに見合った対価を支払うべきという考え方はあるかもしれない。筆者もどこかでのプロジェクトで出来ればHITを使ってみたい気はする。

ただ、固定価格買取制度のお陰もあって、太陽光発電システムや太陽電池のコストは急激に下落している。産業用ではパワコンや架台を含む太陽光発電システム全体でkW単価が20万円とか15万円といった相場になっているのに、メーカー側の希望小売価格とはいえW単価で500円、つまりkW単価で50万円を超えた(それもパワコンや架台を一切含まない太陽光モジュールのみの)価格を恥かしげもなく表記しているというのは、どう考えれば良いのだろうか。

パナも国内の住宅用太陽光以外の市場で勝負する気ナシ?

最近、シャープの太陽光発電パネル事業に関して私見を述べさせて頂いた:

巨額赤字のシャープ:太陽光発電事業の行方は
巨額の赤字にあえぐシャープ、危機を脱するのはいつか? シャープの2015年第2四半期(4~6月期)の営業赤字が300億円台になると...

それに対して読者の方から頂いたコメントで以下のような行(くだり)があった:

シャープは、正直家庭用、屋根用に拘りすぎた部分が多々みうけられます。
<中略>
三角パネルやハーフパネルなど見栄えはいいのですが、少量多種生産は現在の価格競争に飲み込まれた感があります。パナソニックも産業用は、多結晶パネルを用意していたのですが、本年よりALLHITになるようです。

パナソニックもコストを意識した結果、産業用で工程が異なる多結晶シリコンを製造してコストアップになることを避け、HITに統一するという経営判断を行ったようだ。だが、国際的にも激甚を極める太陽光パネル・メーカー間の競争を鑑みると、製品のラインナップの点だけでも合理化やコスト削減の余地がまだ多分にあるように感じられてならない。

現状の高コスト体質では、国内の住宅用ならまだ通用するかもしれないが、海外、特に産業用ではコスト競争力の点で中国のトリナ・ソーラーやカナディアン・ソーラー、米国のFirst SolarやSun Powerにほとんど太刀打ちできないのではないか。(元々、海外や産業用で勝負するつもりがほとんど無いのかもしれないが。)

この辺、実際にモノも見たり、パナソニックの方に話を聞いたりしてみたいので、PV Japan 2015に取材に行けた場合、同社のブースにも是非立ち寄ってみたいと考えている。

国際的にも通用する太陽光モジュールの低コスト化という点では京セラもかなり厳しい感じで、外資系だがソーラーフロンティアだけが日系メーカーとして唯一グローバルの市場でも戦えるのかな、と個人的には感じている。

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コメント

  1. 匿名希望 より:

    パナもシステムでの値引きを使えば、国内標準パネルによる野建の1.2倍程度の値段で
    野建も作成できますよ。
    ただ業者も大して儲かりませんし、中華パネル使ったほうが儲かるんで、例はすくないですが。

    弊社ではかなりの例、つかってますよ~。土地が狭い、影の影響が多々ある。国内メーカーが良い。
    こういう事例にはHIT一択ですし、結果もでてますよ~。
    KWあたり1400~1450KWh程度。
    ただ、他メーカーの高効率パネルでも1200KWh~1400Kwhでる地域ですが。

    • ビッグふぃ~るど より:

      匿名希望さま、

      いつもコメント、および有用な情報をありがとうございます。
      パナソニックの産業用でも20%増程度で済むんですね。ということは、パネル単価の表記が最大の問題ということですか…
      (確か、他のメーカーでもパネル価格の表記のある所は、似たような価格だった気がしましたが)

      ご指摘のように、施工業者さんの立場としては格安の中華パネルを使う方が利幅が大きく取れそうですね。
      ただ、長期の信頼性を考えると、やはりあまり安すぎる中華パネルは怖いので、いかに信頼性が高く、かつ価格もリーズナブルなソーラーパネルをどう入手し、どれだけ施工費用を抑えることができるか、が32円や27円時代でも産業用太陽光発電を魅力的な投資事業とできるかのカギだと考えています。

      HITの産業用、確かにほとんど見たことがないので、可能であれば一度見学・取材したいですね。