九電の原発再稼働にみる、ガラパゴス化エネルギー政策

本稿では、まず筆者が好きなSF映画「マトリックス(Matrix)」の一場面からご覧頂こう:

無数のコピーを作ったエージェント・スミスが格闘後にわずか一人のネオを抑え込み、その一人がネオの耳元に “It is inevitable.”(「避けられないことだ。」)と話す。ネオは渾身の力を振り絞って、百人スミスを全部弾き飛ばし、一瞬の間隙を突いて舞空術で脱出する…

九州電力、無責任な川内原発のなし崩し再稼働に猪突猛進

なぜこのシーンをご覧頂いたかは、改めて後ほど詳しくご説明するとして、最新のエネルギー関連の話題を一つ。ニュース報道によると、明日8月11日(水)に九州電力の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働する予定という。

東京電力の福島第一原発の過酷事故後に、川内原発の事故の対策や避難計画などが万全に行われたかというと、決してそうではない。(もちろん、東電が賠償責任をまっとうした訳もなく、いまだに福島県民の11万人が避難を続けている。)

九電はカネのため(稼働していない原発は維持費に多額のカネが掛かる一方、火力発電でLNGや石炭を燃やし燃料代が嵩むため)に、万一の際の賠償責任や安全性や事故の起こった際の対策などをおざなりにしたまま、とにかく再稼働してしまえ、という姿勢だ。

川内原発の半径数十km以内には、活火山桜島阿蘇山などがあり、これらの活火山や活断層の活動の状態などを考慮すると、この地域での原発再稼働は西日本にとって自殺行為に等しいと考えている。九州には筆者の郷里もあり、強い憤りを覚える。

おカネがもらえるため再稼働に賛成の薩摩川内市の地域住民以外で周辺に住んでいる人々にとっては安心して暮らせなくなるため、いまだに再稼働に反対の声も根強いが、自社のカネ儲けが最優先の九電にとっては「どこ吹く風」だ。

運が良ければ川内原発の再稼働中に火山や活断層による天災は何も起きずに済むかもしれない。一方でもし有事の際には、西日本も放射能汚染され、我が国では国土の全地域で放射性物質に汚染されていない水、空気、食料を自給することが非常に困難になるだろう。

つまり、安全性を重視するのであれば、原発を再稼働する必然性はゼロ。

もし電力大手が、原発が起きた場合の賠償責任をすべて負うという取り決めになっていれば、どの電力会社も多少火力発電の燃料が高くついたとしても、原発の再稼働で無理をせず、再稼働にはもう少し慎重になるだろう。

だが、原発で「シャブ漬け」になっているような我が国の電力会社には、日本が放射能汚染まみれになっても国が責任を問わないし、原発を稼働する方が重要なのだろう。はっきり言って救いようがない。(もし、九電は原発事故を起こさないと天真爛漫に原発安全神話を信奉しているのであれば、誠にお目出度い会社だと言うほかない。)

太陽光の普及や節電で猛暑でも電力は足りているが…

火力発電の燃料が嵩むため、電力会社が再稼働を焦る気持ちはわからないではない(本来は、国が電力会社の会計制度を改訂するなりして、脱原発の方向を打ち出すべき)。その一方で、読者諸兄もご存じの通り九電は太陽光発電の系統連系を制限し、原発再稼働を優先するという姿勢を昨年の時点で鮮明にしていた。

つい最近も今夏の電力需給見通しについて報道があったが、連日の猛暑にもかかわらず、一般電気事業者(電力大手の10社)の供給には比較的余裕があり、どの電力会社も需給がひっ迫するという懸念はほとんどない。

無制限・無補償の出力抑制が東電、関電、中部電以外では発電業者側が受け入れなくてはならない義務となって「再エネバブル」が終焉、国内の太陽光市場は急速に冷え込んでいる。

ここでも、高給取りがたくさんいる大手電力会社は、現在リストラで大変な太陽光発電関連企業のことなど「我関せず」で地域独占の恩恵をフルに享受している。(そして、そういった特権的なポジションは、来年の「電力完全自由化」後も電力業界に多少のさざ波が立つことはあっても、残念ながら当分の間ほぼ安泰だろう。)

海外は再エネ推進アクセル全開、日本はガラパゴス化?

一方、海外にも目を向けてみると太陽光や風力はいよいよ本格普及の時代が訪れている感がある。

テスラの「パワーウォール」がそういった再エネと相補的に使える蓄電池を激安で提供しようとしており、再エネはいまや天然ガス火力は言うに及ばず、最も安価とされる石炭火力に対してもコスト競争力を持ちつつある。

例えば、最近であれば以下のような再エネ関連ニュースが話題となっていた:

(オバマ大統領が7/7に発表した、全米国民のための太陽光発電普及推進の政策)

(ドイツで、太陽光と風力の電力が過去最多を記録、太陽光は原発と同程度を発電)

こんな感じで、再生可能エネルギーは主要先進国で刻一刻と導入が進んでおり、関連したニュースも枚挙にいとまがないのが現状である。いわば、太陽光や風力など再エネの普及は国際的に見て既定路線、日本の原子力ムラがどうあがこうと、「不可避の道筋」なのである。

まとめ:再エネは不可避 ∴少しでも早く多くすべき

このような状況は、冒頭にご紹介した「マトリックス」に似ているように筆者には思える。

つまり、マトリックスの映画では、人間の反乱軍が機械や暴走したエージェント・スミスに敗北するのは不可避(”it is inevitable.”)だとスミスが主張していた反面、最終的に不可避だったのは「ネオ」との闘いに敗れたスミス自らの破壊と消滅という結末だった。

再エネと原発や火力との関係は、筆者にマトリックスの不可避な結末を髣髴とさせるのだ。(もちろん、エージェント・スミスが原子力ムラw、ネオやトリニティ、モーフィアスなど人類の反乱軍は再エネ推進派。)

既得権益を持つ一部の大企業のために、日本だけがエネルギー産業で原発と石炭火力の温存という持続不可能なガラパゴス化エネルギー政策を取り続けることが可能な訳がない。国際社会も、日本が放射能汚染や温暖化排出ガスを垂れ流しにすれば、黙ってはいないだろう。

いつか、どこかで必ず、再エネ推進に本格的に舵を切らなければならなくなる、というのが筆者の見方だ。どうせやるなら、少しでも早く多く始める方が良いはずである。

筆者自身もそんな思いで、太陽光発電を含む様々な活動に取り組んでいるつもりだ。

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コメント

  1. 匿名希望 より:

    川内原発が動き出したら手のひらを変えて太陽光受け入れ始めますよ?

    よく太陽光には火力のバックアップが必要(原発でも変動用に必要でしょ?あと、バックアップなんだから全力必要ないでしょ?その分燃料は少ないでしょ?効率は悪くても)
    一定時間しか発電しない不安定電源(日本の電力のピークは夏の暑い昼間。効率が落ちても太陽光はガンガン発電してる。ピークカットに最適な電源)

    とか言われます。
    ただ、電力会社もわかっていて、311前は、「原子力+太陽光発電+EV+エコキュート」が彼らのお勧めだったのです。インフラ全部電力へ!!

    原子力はピーク変動が難しいので太陽光とは相性が良かったので悲願の電力平準化が可能だったんですから。
    ただ311では「原子力のかわりに」と再エネが押されたせいで太陽光は電力会社の敵になりましたが。
    原発さえ動き出せば、太陽光発電という他人のお金の投資で電力需要平準化ができるんですから。

    • ビッグふぃーるど より:

      匿名希望さま、

      なるほど、おっしゃる通りかもしれませんね。
      太陽光が夏季のピーク需要平準化に役立ち火力の焚き増しを減らせれば、原発と合わせて財務やオペレーションの面で大きなメリットがありそうです。

      ただ、九電などは、電力大手で先陣を切って受け入れ制限に動いたという経緯がありましたので、あまり露骨にやるかは微妙と思います。

      表向きは系統容量の上限云々という主張に変化は見せないようにしつつ、コッソリと受け入れを増やすとか…?

  2. 蛇野 より:

    原発が動き出せば、電力料金は下がるかもしれませんが、
    電気は余るのではないかと思っています。
    となると、再エネの受け入れ枠が減るので、逆風だと思います。
    一番タイトな九州電力がトップを切るというのが政治的な匂いを感じないこともないです。
    福岡を本拠地にしているサニックスなどは、そういったことに敏感なのか、
    活動拠点をシフトしています。

  3. 匿名希望 より:

    >電気は余るのではないかと思っています。
    >となると、再エネの受け入れ枠が減るので、逆風だと思います。

    いやこれが逆なんです。再エネの受入したら確実にお金がもらえますので。電力会社は。
    それも自前の発電所投資がいらないんですよ。
    自前の火力発電所の発電を減らして、太陽光発電からの電力を調達(実は10~12円で電力会社は買えることになってます)。
    それで、ベースの原子力+ピーク時の太陽光発電、調整役の火力が減らせて、燃料が節約できるんですから笑いが止まりませんよ。最大出力ではなくて、火力の効率が悪くてコストが増えても、全部料金に反映できますし。
    しかも効率が悪くてのコスト増なんて、短期コストなんで、発電所を作るという長期のリスクがないですしね。