「エネルギー基本計画」に失望

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昨日、安倍政権が閣議決定した「エネルギー基本計画」。

原発推進が基本的な方針であるこの政権の素性からして、このような決定になることは何ら驚くべきことではないが、失望の一言に尽きる。

3年前の東京電力の原発事故に対する反省もほとんどなく、なし崩し的に原発推進政策へと回帰することを謳っているにすぎず、強い憤りを禁じえない。

閣議決定を受けて経済産業省・資源エネルギー庁が公開したエネルギー基本計画にざっと目を通した。計算高い官僚が作成したものだろうが、もっともらしく原発をベースロードとして位置づけ、再稼働の既定路線を正当化したものとなっている。

ここで出てくる原発再稼働が必然とする論理は、化石燃料の輸入増加による貿易赤字増大や経済の悪化だが、燃料の輸入で貿易赤字が拡大した大きな要因の一つである為替レートの円安誘導については何も触れられていない。

自民党が昨年の2回の総選挙で衆参両院を制圧し、「アベノミクス」によって大幅な金融緩和を行ったが、その結果として為替はそれまでの1ドル80円前後の円高から現在の1ドル100円を超える円安まで、実に約25%もの通貨安に振れている。

当然、輸入品の円での価格は25%値上がりする訳で、国内のガソリンや天然ガスのコストが大幅に上がった大きな理由は、この大幅な円安誘導によるところが大きい。

また、電力業界の悪しき構造である「総括原価方式」もそのままで、地域独占の電力会社が購入する化石燃料を少しでも安く仕入れようというインセンティブが働かないのも相変わらずだ。

原発がすべて止まって2年程の間にも我が国は化石燃料を輸入していたが、その間には化石燃料のコスト増加に対してそれほど言及されていなかったのではないだろうか。

それが、この1年程の間にアベノミクスによって大幅な円安となり、燃料の国内のコストが大幅に増加したのに、エネルギー基本計画ではそういった要因にはほとんど何も触れずに、単に化石燃料の輸入が増加→貿易赤字や国内の富の流出、と恣意的な論理づけを行っている。

これは原発再稼働という結論ありきの姑息なエネルギー政策である。

再生可能エネルギーでも不安定な太陽光や風力は推進するフリをするが、ベースロードとして原発に取って代わることが可能な小水力や地熱、バイオマスは本格的に普及させようという意思があまり感じられない。

同様の事が、スマートグリッドやコージェネレーション(熱電併給)、蓄電池に関しても言える。日本政府は原発の再稼働をしたくてしょうがないので、原発を代替しうる技術の普及を本当に真剣にやろうとはしないのである。

筆者の太陽光発電所は来週初めに売電を開始する予定である。

これだけでは、蟷螂の斧、焼け石に水だが、今後もこの国の持続可能なエネルギー自給のために筆者として出来ることを続けて行きたいとの思いを新たにした。

コメント

  1. 蛇野 より:

    エネ計画ですが、再エネ分はいずれは20%にするという計画となっています。
    現状は、10%ですが、水力分を除くと1.5%なので、風力に力を入れるとしても現状の7倍にするということになります。
    これは計画ですからどうなるかは分かりません。何らかのインセンティブがないことには、やろうという人もいないと思います。
    FITは補助金無しでこれだけのにぎわいを見せていますので、政府がやることでうまくいった例が少ない中、大成功だと思います。