融雪マットに両面発電ソーラーパネルを組み合わせ除雪費用を低減

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「北海道の太陽光発電では、オフグリッドのビジネスモデルも既に動き出している。」

CEATEC JAPAN 2014のあるブースで、筆者が得た感触がこれだ。

九州電力ショック」に端を発した「再エネ買取中止ドミノ」。

現時点では沖縄、四国、東北、そして北海道と5つの電力大手の管内に広がっているが、こういった状況を既に織り込んだ事業展開を図るしたたかで逞しい事業者もいることを知り、頼もしく感じた。

PVGソリューションズ(本社:神奈川県横浜市)がそういった企業の一社である。
では、具体的にどんなビジネスモデルなのか。

まず商品名から紹介すると、「両面受光型太陽電池『EarthON』+『CNTEC』融雪マットによる融雪機能付き吹払型防雪柵」がそれだ(ちと長いw…)

両面受光型太陽電池モジュール@CEATEC JAPAN 2014

両面受光型太陽電池モジュール@CEATEC JAPAN 2014

この名前を読めば、どのような商品かはある程度お分かりと思うが、それがなぜどのようにオフグリッドで収益化が可能なのか。

防雪柵に太陽光パネルを組み合わせ、除雪費用を削減

そのカギは、北海道などの北国にこれが設置されるというところにある。北海道に限らず東北や北陸などの雪国では、冬季の積雪が多く家屋の雪かきや路上の除雪などが大変であり、国や自治体が除雪を行う場合の費用もバカにならない。

一般的な吹払型防雪柵では、その構造上、下部の隙間が雪で塞がってしまうと、吹き払い機能が失われてしまい、雪が積もってしまう。こうなると、路上に積雪で道路の交通安全が確保できないといった問題があるという。

そこで、この防雪柵に太陽電池を設置することにより、融雪マットの電源不要で自立型の融雪システムを実現するというのが、このビジネスモデルのキモだ。

両面受光型太陽光発電モジュールの説明パネル

両面受光型太陽光発電モジュールの説明パネル

両面受光ソーラーパネルで発電量が10~30%アップ

太陽光発電モジュールは両面受光型だが、これは積雪後に雪面からの照り返しが多い雪国では特に有効と思われる。PVGソリューションズ社の資料では、片面受光に比べて発電量が10~30%増加するという。

両面受光型太陽電池セルのデモ (CEATEC JAPAN 2014)

両面受光型太陽電池セルのデモ (CEATEC JAPAN 2014)

発電した電気を使って融雪マット(ファブリックヒーター)「CNTEC」により吹払型防雪柵の下部間隙を融雪することで、防雪柵の吹き払い性能を維持できるとする。

この製品、太陽電池など付加的な部材があるため、当然ながら従来型の吹払型防雪柵に比べればコストが高くなる。しかし、

「一度設置すれば除雪費用が削減できるため、何年かで差額の元が取れそれ以降も除雪予算があまり要らなくなる」
(PV Solutions北海道支店・取締役 経営企画室長兼北海道支店長 垰本氏)

ということである。

家庭用の融雪マットにも応用可能なら雪かきの労力削減に

なおCEATEC会場では、両面受光型の太陽光パネルが展示されており防雪柵のパンフレットは頂いたが、この防雪柵そのものは展示されていなかった(ブース出展の都合かと思われる)。また、この融雪機能付き吹払型防雪柵は、PVG Solutions、クラレリビング、理研興業の共同開発製品であり、特許も出願中という。

今回展示していた融雪マットと両面受光ソーラーパネルによる仕組みは、道路や駐車場といった産業用ないし公共施設等の市場向けだが、家庭用の融雪マットにも同じ仕組みを応用することは恐らく可能と思われる。

これにより、電気代がかさむことなく、融雪・除雪が可能となれば、雪かきの労力が削減できて良いだろう。

北海道では、九電ショック以前にも既に一部で連係制約があったという話はチラホラと聞いていた。だからこそ、今回の再エネ買取中止ドミノのような事態に至っても慌てず騒がずに、オフグリッドでのビジネスモデルの仕込みも行っていたという訳だ。

今後、北国・雪国だけでなく九州や中国・四国でも、こういった知恵を絞ったアイデアによってオフグリッドでも収益化が可能な太陽光発電を模索する動きが続くことに期待したい。

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